プロローグ
時は2024年。。。
人びとは、便利な機械から離れることが出来ない体になってしまっていた。
「おはよー!今日も天気いいねぇ〜!」
「そうだねぇ〜。また、仕事頑張ろうねぇ〜。」
ごくごく、一般に行われているメッセージのやり取りだ。
たった、これだけのやり取りも、今では、遠くだろうと近くにいようと、メールやSNSなどの文字で日々交わされている。
しかし、半世紀前までは考えもつかないことだっただろう。
「電話がなかった時代って、人々はどのようにして、連絡をとっていたのだろうか。」
今現在、必要不可欠なツールとして、それらの機器を扱っている、この時代の人たちに取って、甚だ疑問でしかない。
昔を生きた人からすると、当然、そのツールはないわけで、当時は不自由さにすら気付かず生きてきた。
今思い起こせば、ようやく、昔は不自由だったことに気付かされる。
しかし、便利なツールを得た反面、失ったものも大きい。
人は、動物と違って、長い年月をかけて、道具を発展させてきた。
この道具が、今となっては、人々になくてはならない手足となっている。
五感の全てに機械がサポートしていると言っても過言ではないのだ。
それゆえ、自動車やテレビ、パソコンから携帯電話にいたるまで、身の回りには電気製品で溢れ、いわば、電磁波で身を包まれているようなもののため、本来、人間の持つ素晴らしい能力が失われてしまった。
いや、厳密に言えば、失われたわけではなく、大きなシールドで覆われている、と言った方が適切かもしれない。
太古の昔、人類の創世記まで遡ると、今より、もっとシンプルに、人は生きてきた。
「おはよう。きょうも天気がいいな。」
「そうだな。今から狩りに出かけるよ。」
このやり取りが、一瞬で、言葉すらなく。
表現が正しいかはわからないが、いわゆる、テレパシーの様なもの。
脳の中で、互いに連絡をとりあっていた。
よくよく考えてみると、今よりも便利ではないだろうか。
自分の体の中に、電話があるようなものなのだから。
しかも、連絡手段だけではなく、いろいろな能力を携えていたとされている。
人種も二極化され、女と男の違いに加え、善の【ラスター】と悪の【シャドー】とに分かれていた。
善と悪は、今でこそ、様々な物事の中に埋もれてしまい、言葉や道具などで封印されているが、言葉のない時代では、その区別が歴然としていた。
善の【ラスター】は、積極的に脳を活性化させ、潜在能力を最大100%まで引き出す者。
テレバシーはもちろん、念動力、瞬間移動、空中浮遊など、今で言う、超能力を自在に操っていた。
それに対し、悪の【シャドー】は、理性などなく、本能でのみ行動する者。
ただ欲望のままに生きるかわりに、視力、聴力、嗅覚などの五感に併せ、チーターのような脚力や、ライオンのような腕力など、いわば、動物の能力を最大限引き出していた。
それらの能力を近代の人たちは、言語や道具に頼りすぎ、今では、ラスターとシャドーは、個人個人の内に大半を埋もれさせてしまい、現代の天才でさえ、多くとも、10%程度しか脳を活用出来ていないと言われている。
しかし、2024年、電磁波が飽和状態になり、やがて、人の脳に浸食し始める。
やがて、埋れていた、ラスターやシャドーの二極化がはっきり現れるようになる。
さらに、現代が長年に渡り、押さえ続けた反動もあり、一部のラスターやシャドーは、100%を超える能力をも引き出すほどに進化し続けており、ごく稀に【超特殊能力者】を突然変異で生み出してしまう。
その伝説が今、まさに、その扉を開けようとしている。
伝説の覚醒。
その名は【イオ】
長年の封印を経て、ついに、人類は新たな進化を遂げ、未だ見ぬ、新開地を開拓することとなる。