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空に沈む。

作者: 白沢祐

この世界には天使がいるのさ。

ほら、知っているだろう? 白くてさ、羽が生えてるやつ。

あぁ? ファンタジックだって? ばっかじゃねぇの?

あいつらにはな、牙があるんだよ。

鋭くてさ、狼みたいなやつよ。わかるか?

わからないよな。ニホンオオカミなんて、とっくに絶滅しちまってんだから。

だけどさ、あるんだよ、あいつらには。

ぎらぎら光ってるんだ。

いまにも、お前を食ってやると言いだすんじゃないかってほどぎらぎらとさぁ。


あぁ? イッてるって、誰がだよ?

おれは正常なんだよ。天使なんてな、誰にだって見えるんだ。

ほら、お前が今見てる俺の後ろ、わかるだろ?

お前の後ろで、荒い息で呼吸を繰り返してるそいつだって、天使なんだぜ。

見えないのか? そりゃあ残念ってもんだなぁ。


あいつらの牙はな、きれいなんだよ。

ぎらぎら光っててさぁ。食われたいって思えちまう。

あぁ、ほら。いまふわふわって白い羽が。

あぁほら、いまドアをたたく音がした。

そこにいるのさ、そこに。


そういやさぁ、お前、俺の顔見ないよな?

なんでだよ、おれになんかやましいことでもあるのかよ。

言ってみろよ。

牙で食ったりなんかしないって。

おれってば、やさしい天使サマだからさぁ。


あぁ、なんだ、おまえもぎらぎらじゃねぇか。

おいしいよなぁ。

おれらはなんたって、天使なんだぜ。どうよ、最近のところは。

あぁ、そうだねぇ空なんか飛びたいねぇ、なんつって。

おっと、そんなかわいそうなものを見る目で俺を見るなよ。


一流の天使は、空なんかとばねぇもんなぁ。

さて、いっちょ空に沈むかねぇ。




『高校生とみられる男子が、今日の明け方、Y高等学校の屋上より飛び降り、意識不明の重体となっています。6月に入ってから男子高校生はうわごとのように「天使が、天使が」と呟いていたとのことです。また、屋上に何者かがいた痕跡が残っているということで、警察は、自殺と他殺の両面で捜査を進めています』


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