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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

本の森の<文章奏者>

本の森の<文章奏者>

作者: 佐藤佑

僕は暗い森の中を迷っていた。

暗闇が恐くて、走る。

何故森に入ったかなんて忘れていた。

走る。それが僕だった。

しばらくして明かりを見つけた。

暖かい光だった。

僕はその光に吸い寄せられるように近づき、

境界を超えた。

木々の森と、

本の森との、

その境界を…



目を開けるといつもの天井、

大して柔らかくもないソファ、

そして、体中の痛み。

いつも通り、

いつも道りの朝だった。


ソファから腰を上げいつもの作業を始める。

掃除と掃除と掃除。

掃除しかない。

今日は32番の棚の掃除だ。

でもいいのだろうか、

独りで初めていて。

32番の棚の掃除は僕一人でしてはいけないと、

いつも言われていたんだけど…


いつもとは違う出来事が起こっている。

この大図書館にいつもいる少女

僕をこの図書館においてくれている、

大図書館の主…ピアノ

文章奏者ピアニスト

と名乗った白髪の彼女を僕はピアノと呼んでいる。


僕はどうやら森で迷っていたところを

ピアノに拾われたらしい。

どうやら、らしい、というのは、

僕にその記憶が一切ないからだ。

その記憶どころか、それより前の記憶もない。

その代りかどうかは知らないがこの図書館に来てからの

記憶は妙にはっきりとしている。


さて、そんなことはどうでもいい。

とにかく掃除をしないと。


まず目についた本を引き抜こうとする。

と……

「さわるな!」

と鋭い声が聞こえる。

ピアノの声だ。

考えなくてもわかった。

さっきまで考えていたピアノの声だと。

「ああ、助かった。ピアノがいなくて困ってたんだ。」

「あっれほどこの棚の本に触れるなといったのに、

 なんで覚えないんだ!」

ピアノはふくれっ面でとてもご機嫌斜めだ。

「と……とりあえずお茶にしない?」

ピアノのほうを向いて言う。

ピアノは渋い顔をしていたが、

僕が背を向け歩き出すとついてきてくれた。

廊下にかかっている鏡を見ると、

拒絶されたわけではないと知って安堵している僕がいた。



今ピアノは僕の出したクッキーと、

紅茶を一生懸命に頬張っている。

一生懸命なピアノは、

とても可愛い。

すごく可愛い。

ので僕はついピアノのほうに目が行ってしまう。

そしていつもピアノにばれる。

「ふぁふぃふぉ、ふぃふぇふぃふ。」

可愛い。何言ってるかわからないところが特に、

「言葉に表せないほど可愛いピアノを見ている。」

ごっくん。と、クッキーを飲み込む音が聞こえて……

「表せている。」

と冷たく一言。

だが、ほほが、あからさまに朱い。

こういう時に自分の器用な手先と、

失われた記憶の中にある物作りの記憶に感謝する。


いつまでもピアノをでているわけにもいかないので、

「で、32番の棚の掃除はどうするの?」

と問いかけた。

するとピアノは

「お前は休んでろ。私がやっておく。」

と答えた。

ピアノが一生懸命に背の高い本棚を掃除する……

「ちょっと待ってて。」

僕はあわてて材料を用意して部屋に戻る。


つたつたつたつたつたつたつたつたつたつたつたつたつたつた


「はぁはぁ、これを…着て…掃除を…」

僕の作った服をピアノが手に取り

自分の前で広げて持った。が……

「き…着れるわけがないだろ!?」

と、投げ捨てた。

僕はその服を拾い上げ、

「サイズは少し大きめにしてあるから着れるはずだよ。」

「計算された大きさだろう!?」

「もちろん!」

と、なんだかかみ合ってない会話をくりひろっげる内に

ついにピアノが折れて

「…………わかった。これを着て掃除をすればいいんだろ。」

と言った。

ほほを紅く染めながら。


「……お、おかしくないか?」

今僕の前に立っているのは、服に着られている感じのする

メイド服姿のピアノだ。

メイド服と言ってもミニスカなどではなく、

本場のメイドさんといった感じで、

邪魔にならないようにか結った白髪が、

服のコントラストと相まって……

とにかく、とてつもなく可愛かった。

さらにほほも紅く染まっていて、

僕は立っているのが精いっぱいだった。

「な……何か言え。じゃないと……不安で…」

ピアノのセリフが尻すぼみになる。

だんだんと元気をなくしてしまっているようだ。

これはまずい。

何か言ってあげないと

「すっごく可愛いよ。」

「ほ……本当か!?うれしいぞ!」

ピアノが笑顔になってくれた。

そして、その笑顔はとても輝いていた。

ああ、これで思い残すことはもうなにもない。

「そうか〜、可愛いか〜。」

と、何故かはしゃいでいるピアノの声を聴きながら、

僕は眠りについた。



暗い部屋にいた。

司会者と、

クイズと、

針の山と、

幼い少女がいた。

少女は助けを求めていた。

司会者は下品な笑いを浮かべクイズを出す。

僕の答えられないクイズばかり。

少女の小さな身体が針の山の上へと移動される。

「答えられないのか〜い。じゃあ残念、時間切れだ。」

司会者が手元のボタンを押す。

少女を支えていたロープが切れる。

少女が針の山へと落ちる。

少女は最期に叫んだ、

「お兄ちゃん!」

あとに残ったのは司会者の狂笑と、

妹の断末魔の叫びだった。



いやな夢を見た。

内容はわからなくても

そういった大まかなことはわかる。

「起きたか変態オタク

「その偏見はやめたほうがいいよ。」

と、ピアノといつものやり取りをかわし、

ピアノの姿をチェック!

すると!

「メイド服じゃない!」

「当たり前だ!!」

!2つで返されてしまった。

いつもの白いワンピースに戻ってしまっている。

服の白と髪の黒とのコントラストが

また可愛いんだけど……

残念じゃないと言ったらうそになる。

「大体お前はどこであんなものを覚えてくるんだ!

 もっと大事なことを覚えろ!」

えっと、メイド服は確か……

「最近増えてきている、ライトノベルによく出てくるよ。」

いつの間にか蔵書が増えるのはこの大図書館の特徴だ。

「読むな。」

「読んでない。」

「読むな!」

本当に読んでない。

………

……

完結編を明日投稿します。

どうなるか推理してみてください。

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