表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

 私は仕事を終えて、会社を出た。

 暗く、静まり返った夜道を歩いていると、車のエンジン音が聞こえてきた。振り返ると、一台のタクシーが、暗闇の中から浮かび上がってきた。私は手をあげて、そのタクシーを拾った。

 私はタクシーの運転手に行き先を告げると、座り心地の悪いシートに、もたれかかった。

「こんな遅くまで残業ですか?」

 運転手が話しかけてきた。新人だろうか。まだ顔に幼さの残る、二十ぐらいの運転手だった。

「若いうちは雑用ばかりで大変でしょう?」

 私は頷いた。

「仕事だから仕方がないですけど、大変じゃありませんか?」

 私は頷いた。

「でも、大きな仕事を任されてるんですからね。頑張って出世してくださいね」

 ――え……?

 私は運転手を見る。

 ――その話、誰から聞いたんですか?

 私の問いに、運転手はバックミラー越しにこちらを見た。

「何を言ってるんですか?」

 運転手の目元が笑う。


「全部あなたが話してくれたじゃないですか」


 その言葉を聞いた途端、私の背筋に寒気が走った。

 ――降ろせ! 降ろしてくれ!

 いつの間にか、私はそう叫んでいた。

 タクシーは音を立てずに止まった。

 私は料金も払わず、ドアを蹴破るように開け、タクシーから飛び降りた。

 私が地面に手をつくと同時に、ドアが閉まり、タクシーは走り去ってしまった。

 私は安堵の息を吐きながら、夜道を歩く。電灯の消えた店の前を通りかかったとき、暗くなったショーウィンドウが鏡のように、私を映していた。私はふと、その映る姿に目をやった。


 そこには年老いた一人の老人の姿が映っていた。


 私はもう、タクシーの運転手のことは思い出せなくなっていた。




END

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ふと思いついたことを文章にしただけですが、少しでもぞくりとしていただければと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ