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第1章 : クロエの365の魔法の使い方。

001

「さて、まずはじめに。人類の歴史というものは、

黒魔術という存在を深く信じてきたということを忘

れないように。……いいか、これから話すのはあくま

で『学問』としての講義だ。家に信心深い狂信者が

いる者は、今のうちに退出したまえ」


わたしたちは、いつものようにこれから教授

が語るであろう言葉を書き留める準備をした。

ハイ……わたしたちの名はクロエ。クロエ・ア

ンダーソン。


自分自身のことを説明するならば、この地で名の知

れた家系に、たまたま生まれてきたごく普通の人

間……といったところかしら。


ええ……「たまたま」というのは嘘ではないわ。兄

さまたちが言っていたけれど、父さまと母さまは子

供は二人きり、それも男子二人だけにするつもりだ

ったのですって。なのに、結局うっかり末っ子の私

を産んでしまったというわけ。


ふふっ、おかしいでしょう?


見た目については、その辺にいる村娘とさほど変わ


らないわ。皆が想像するような美しさなんて持ち合

わせていないもの。せいぜい、この癖毛のブロンドが、わずかばかりの容姿をマシに見せてくれているくらいかしら。


1876年当時の社会基準で言うならば、**わたし**の評価は10点満点中、5点といったところね。

性格はといえば、どの教授からも認められるほどの「いい子」の部類に入るわ。けれど……。


「ちょっと……そこの地味女。さっきから熱心に書き 取っちゃってさ。マリアの講義なんて、そんなに真面目に受ける必要ないっていうのに。そこまで必死 になれるなんて、本当に反吐が出るわ」


別の少女がわたしを嘲るように言い放ち、背後に控える友人たちへと同意を求めるように振り向いた。彼女たちはそれに応じて、大きな声で楽しげに笑い合っている。


「たとえ風変わりなお方であろうとも、先生はわたしたちに知識をお授けくださっているのです。それに今は授業中です。わたしたち、そこまで暇ではありません」


わたしはそう相手をたしなめるように言ったものの、振り返って三人を見ることはしなかった。ほどなくして、わたしたちの話し声を耳にした教師が再び注意をなさったため、三人は不満げながらも口をつぐんだ。


まあ、この年頃におけるいじめなど、珍しいことではないのだろう。


わたしが身を置く上流社会とて例外ではない。ましてや、わたしのように気弱な性分の女では、このような運命から逃れることなどできはしないのだろう。


「!!」


背後の三人が、何か――おそらくは紙切れだろう――をわたしに向けて投げつけた。無論、わたしは気づかぬふりをした。けれども彼女たちはやめることなく、いっそう愉快そうに笑い声を立てる。


本当は言い返してやりたい。けれど、それはできない。あちらは数においても、家柄の力においても、わたしを上回っているのだから。


……情けないことだ。わたしは、なんと不甲斐ない人間なのだろう。


授業が終わるや否や、わたしは急ぎ足で教室を後にした。書物を取りに、ロッカーへ向かわなければならない。


今のわたしの青春は、正直に言って退屈極まりないものだ。わたし自身、それなりに才はあると自負している。それでも、生死を共にできる友はただの一人も見つからない。


学院の者たちも、わたしにはあまり近寄ろうとはしない。それはきっと、わたし自身の性格ゆえでもあるのだろう。


この学院は、わたしたち高位の貴族にとって、ひどく神聖なる学び舎と称えられている場所だ。


けれども、その実、上流階級の多くは野蛮な者たちとさほど変わりはしない。


皆、二つの顔を持っている。外面は由緒正しき善人を装いながら、その内側は歩く災厄とでも言うべき有様だ。


もしこの世に魔術や呪法といったものが存在するのなら、わたしはとっくに、もっと安穏とした日々を手にしていたことだろう。


けれど、それはただの空想だ。現実になるはずもない。


東方の国の書物で読んだことがある。言葉には力が宿る、という伝承があるのだと。


……せめてそれが、本当であればいいのに。


わたしはただ、そう願わずにはいられないのだ。


ねえ、丸顔。」


前の方から声が聞こえてくる。

さきほどわたくしを嘲笑っていた貴族たちだ。いつものように待ち伏せしている。

だが今回は違う。わたくしがあの者たちの面目を潰してしまったのだから。


これもまた、わたくしの日常の一つに過ぎない。


「っあああああああああっ!!」


先ほどのろくでもない連中に足を引っかけられ、わたくしは前のめりに倒れ込んだ。

頭を強く床に打ちつけた感覚がある。


「…………」


どうやら鼻から少し血も出ているらしい。


あちらは愉快そうにわたくしを嘲笑う。

それを聞いたわたくしは拳を強く握りしめ、すぐに立ち上がり、あの者たちの顔を思いきり殴ろうとした。


けれど、前にも言った通り、向こうは数が多い。

わたくしは即座に頬を打ち返された。


「自分が何様のつもりだ! よくもわたしに恥をかかせたな!」


さらに二人に腕を掴まれ、逃げられないよう押さえつけられる。


パシンッ!

乾いた平手打ちの音が廊下に響き渡った。

周囲にいた者たちは、ただ立ち尽くして見ているだけで、わたくしを助けようとはしない。


当然だ。相手は高位の貴族。

関われば、ただでは済まないだろう。


けれど、あの者たちの振る舞いは、まるで盗賊と何ら変わらない。


「またそんな顔をしているのか。こっちへ来い!!」


わたくしに面目を潰された恨みは、まだ消えていないのだろう。

髪を乱暴に掴まれ、そのまま人目につかない場所へ引きずられる。


「っああっ!」


壁へ投げつけられる。

右手で髪を掴まれたままだったせいで、体は不格好に壁へ叩きつけられた。


「ご……ご……ごめんなさい……申し訳、ございません……」


今のわたくしは無力だ。

何一つできない。


哀れな謝罪を聞いた三人は、顔を見合わせて笑い出す。


「何だって? もう一度はっきり言ってみろ。」


わたくしの体は震えている。


怖い。


「ご……ご……」


「遅い!!!!」


謝罪の言葉を言い切る前に――

視界が途切れた。


それがどんな感覚かと問われれば、

寝る前に本を読んでいて、突然ランプの火が消える――そんな感じだ。


なぜ視界が途切れたのか。

記憶に残っている限りでは、顔を強く蹴られたのだと思う。たぶん。


今のわたくしは、ただ漂っている。

まるで、自分が望んだ場所へ飛んでいくかのように。


誰にも虐げられず、傷つけられず、蔑まれない場所へ。


そこは魔法のある世界だろうか。


どこかの王子様がわたくしを見つけて、恋に落ちてくださる――

そんなことも、あるのかもしれない。


どんな世界なのだろう。


わたくしは、胸いっぱいに期待しているのだ。


002


わたくしは、見知らぬ場所で目を覚ました。


そこは、生け垣の壁に囲まれた空間だった。


足元には奇妙な模様の大理石の通路が続いている。


見慣れないが、どこか美しさも感じられる。


雰囲気は不気味で、ぞっとするほどだ。


生まれつき備わっている本能が警鐘を鳴らしている。


今のわたくしの身体は、絶えず「危険だ」と訴え続けていた。


けれど、立ち止まっていても何も変わらない。

わたくしは通路をゆっくりと歩き始める。


ここは開けた場所らしく、蒼い月明かりが視界を助けてくれている。


……それでも、怖いものは怖い。


「…………」


令嬢とはいえ、わたくしはそれなりに用心深い。

いいえ、これはきっと女としての防衛本能なのでしょう。


――何かが、わたくしを見ている。

「…………」


鳥肌と、言いようのない嫌悪感が同時に込み上げてくる。


気づいていないふりをする。


相手に悟られぬよう、ゆっくりと歩きながら隠れられる場所を探す。


だが、どこにも隠れる場所などない。


周囲は生け垣の壁ばかりだ。


選択肢はなかった。


わたくしはその場からできるだけ早く離れようとする。


「――っ!!」


元の場所に戻っている。


……どういうこと?


『それ』が、またこちらを見ている。


別の道を進んでも、『それ』は同じようについてくる。


涙があふれ出した。


嫌悪よりも、恐怖が勝る。


どこへ走っても同じ場所へ戻る。


どうしても、『それ』はついてくる。


いや……もう嫌だ。


絶望がじわじわと押し寄せ、恐怖が顔に張りつく。


わたくしは立ち止まる。


逃げるのを諦めたのではない。


脚が、もう動かないのだ。


『それ』は背後からゆっくりと近づいてくる。

どんな姿なのか確かめたい気持ちはある。

けれど――


正直に言えば、振り向く勇気すらない。


『それ』は、じりじりと距離を詰める。

涙は止まらない。


どうして、わたくしばかりがこんな目に遭うのだろう。


毎日のように暴力を受け、家でも蔑まれ、

そして今度は……殺されるの?

冗談ではない。


膝が崩れ、わたくしはその場に倒れ込んだ。


「…………」


『それ』が、かすかに笑う。


先ほどの出来事が脳裏をよぎる。


頭を強く打ったせいだろうか。


わたくしは反射的に、謝罪の言葉を口にしていた。


……せめて最期くらい、振り向いてみよう。


そう思った、その時。


どうやら――


運命は、まだわたくしを見放してはいなかったらしい。


「おい!!!! なんだその気味の悪い顔は!!」

背後から、誰かの怒号が響いた。


その声と同時に、恐怖が一瞬でかき消える。


わたくしは振り返り、『それ』を見た。


人の形をしている。


だが、歪んでいる。人体の構造から完全に逸脱した姿。


顔の笑みは裂けるように広がり、目に焼きつくほど異様だった。


けれど、つい先ほどまでわたくしを恐怖させていた『それ』は、


今やただの操り人形のように吹き飛ばされていた。

怒鳴り声の主――一人の紳士が、

手にしていた棒のようなもので全力でその顔面を殴りつけたのだ


『それ』の首はあり得ない方向へねじれ、

さらに蹴り飛ばされ、生け垣の壁へ叩きつけられる。


その紳士は、すぐさまわたくしの元へ駆け寄ってきた。


「大丈夫か?」


彼の顔はひどく心配そうだった。


「だ……大丈夫でございます……わたしたち……あっ!!」


くそっ、こんな時に足が痛むなんて。それに膝にも傷ができている。


「どうしてもっと早く言わなかったんだ」


彼は急いで、自分の長袖の襟元に結んでいたラ・クラヴァットを外し、それをわたしたちの膝に巻きつけた。さらに服の裾を少し引き裂き、傷口を覆ってくれた。

※ラ・クラヴァットとは、17世紀に用いられたネクタイの呼び名である。


「歩けるか?」


口調はどこか貴族のようだったが、なぜか今のわたしたちは心の底から彼を信じられる気がした。


わたしたちは首を横に振り、歩けないと伝える。


「そうか。じゃあ、腕を俺の首に回してくれ」


その瞬間、わたしたちは生まれて初めて目にする出来事に、心底驚かされた。


その紳士はわたしたちの腕を自分の首に回させると、そのまま――いわゆる“お姫様抱っこ”の形で抱き上げた。


「きゃあっ!!」


正直に言えば、こんなに間近で男性に触れられたのは生まれて初めてだった。家には父上や兄上もいるが、ほとんど言葉を交わすこともなかった。見知らぬ男性に抱き上げられ、わたしたちはどうしていいか分からなくなる。


頬が不思議なほど熱い。なぜか、ずっと彼の顔を見つめてしまう。


彼はわたしたちを抱えたまま走り出した。


もちろん、“あれ”がただの木の棒で簡単に退けられるはずもない。


それは人間離れした速さでこちらへ駆けてくる。まるで深い怨念を抱いているかのような、耳を裂くような叫び声をあげながら。


気づけば、走ってきた道はもう元の場所ではなかった。


「まだ追ってくるのかよ! どこまで執念深いんだ!」


彼のその言葉で、わたしたちはさきほどの混乱から我に返る。


考えもせず、口にしてしまった。


「どうして……わたしたちを置いて一人で逃げないのですか? そのほうが簡単では……?」


彼はきっぱりと言い返した。


「馬鹿か!? 置いていけるわけないだろ! もし君が俺のせいで死んだら、俺は一生罪悪感を背負って――」


言い終える前に、声が途切れた。


「ぐあっ!!」


彼はその場に倒れ、わたしたちも前につんのめって少し転がる。


「くそ……腹を……」


「紳士様!!」


わたしたちは急いで彼のもとへ向かうが、足が痛み、這うように進むしかなかった。


「や……やめろ……来るな……早く逃げろ……」


「わたしたちは、あなたに命を落としてほしくなどございません!!」


さきほどの彼の言葉を、そのまま返した。


「傷を見せてください」


「馬鹿……今はそんな――ぐっ!」


わたしたちは彼の体を仰向けにし、傷を確認する。


「これは……」


腹部に穴が開いている。血も大量に流れていた。


そして、その傷を作った“元凶”は、すぐ目の前に立っていた。


まるで針金のような人型へと変貌したそれが、瞬きもせずわたしたちを見つめている。


再び顔が青ざめかけた、そのとき――


紳士様がわたしたちの上着を強く掴み、「早く……逃げろ……」と弱々しく囁いた。


その声で、わたしたちは正気を取り戻す。


急いでハンカチを取り出し、彼の左手に押し込んだ。


「押さえてください!! 血を止めて! でなければ、本当に死んでしまいます!」


どれほど死が怖くても、彼がわたしたちを守ったせいで命を落とすなど、絶対に嫌だった。


「…………ゴワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」


それは猛然と駆けてきた。そしてその瞬間、わたしたちの膝に頭を預けていた彼の姿が消える。


次に気づいたとき、背後から苦しげなうめき声が聞こえた。


物が散乱している。


先ほど彼が武器にしていた太い木の棒が、わたしたちの足元へ転がってきた。


それは、こちらを見ようともしない。


代わりに、標的を彼へと変えていた。


わたしたちは立ち尽くす。


だが、今度は違った。


恐怖ではない。


胸を満たしていたのは――怒りだった。


憎しみ。嫌悪。消し去ってしまいたいという衝動。


かつて、あの貴族たちに虐げられたときと同じように。


わたしたちは立ち上がり、彼の太い木の棒を手に取る。


不思議なことに、足の痛みも体の痛みも感じない。だが、そんなことはどうでもよかった。


「おい!! この骨ガラ野郎」


生まれて初めての乱暴な言葉。


それ――いや、“骨ガラ野郎”が、わたしたちを振り向く。


その瞬間、黄金色の炎がわたしたちの全身を包み込んだ。何でもできるという感覚が、体中に満ちあふれる。


骨ガラ野郎が鋭い爪を振りかざし、襲いかかってくる。その爪は、おそらく紳士様を刺したものだろう。


だが、わたしたちはそれをかわし、体を横に回転させると同時に、正確にその頭部を蹴り飛ばした。


怪物は茂みの壁に叩きつけられる。


「き、君……」


わたしたちは紳士様の前に立ち、庇う。


骨ガラ野郎は再び襲いかかろうとする。


「無礼者……」


そして、ついに口にした。


「わたしたちを救おうとしてくださった紳士様を傷つけるとは」


一生忘れぬ言葉。


「だから――」


バキッ!!


手にしていた太い木の棒は、その瞬間、火縄銃へと姿を変えた。


黄金の炎をまといながら。


わたしたちは、その骨ガラ野郎へと銃口を向ける。


「――死になさいませ」


放たれた弾丸は、たった一発。


だが次の瞬間、辺り一帯を巻き込む爆発が起こった。


そして――それが、わたしがあれを目にした最後となった。


003


「さっきの……あれは、一体何だったんだ……?」


「ご無事ですか、紳士様」


「……ああ、俺は大丈夫だ」


腹から流れていた血も、どうやら止まり始めている。命に別状はなさそうだった。


けれど――今、危ういのはきっとわたしたちのほうだ。


「おい!!」


あの出来事のせいだろうか。わたしはそのまま、立ったまま崩れ落ちた。


だが紳士様が、しっかりと受け止めてくれる。


視界がぼやけていく。


「死ぬなよ」


また、あの言葉。


「ただ……少し……疲れただけ……で……死ぬ……わけ……ございません……」


彼は今にも泣き出しそうな顔をしていた。


わたしたちは彼の手からハンカチを取り、今度は彼の涙をそっと拭う。そして微笑んだ。


「紳士様……わたしたちのために……泣いてくださるなんて……本当に、お可愛らしい……ですわ……」


彼もまた、優しく微笑み返す。


「無事でよかった……本当に」


その言葉を最後に。


わたしたちは、彼の腕の中で、静かに眠りへと落ちていった。


004


「これで一件落着ね」


白髪で制服姿の少女が、金髪の少女を腕に抱きながら、目つきの鋭い少年にそう告げた。


クロエが“魔法”を使い、ノマルと呼ばれる魔獣を鎮圧した直後――力を使い果たして気を失ってから二分ほど後、白髪の少女が二人を発見し、救助したのだった。


「彼女は大丈夫なんですか?」


目つきの鋭い少年が尋ねる。


「この子、魔法を使うのは初めてなの。だからまだ制御ができないのよ」


――魔法。


本来ならあり得ない、存在するはずのないものが、まるで当然のように語られている。


「まだ“ルーン”を持っていないし、魔法も未完成。でも……合格ってところね」


「合格? 何の話ですか。ここは一体どこなんです? どうしてあの子が魔法なんて使えるんですか」


白髪の少女は少年を一瞥し、厳かな声で告げる。


「この世界は、魔法使いの国。もう一つの名を――インプリジアン。信じられないでしょうけど、さっき奇跡を目にしたはずよ?」


少年は言葉を失う。信じられなくとも、確かに自分の目で見たのだ。


少女は続ける。


「魔法が使えるかどうか……自分の背中を見てみたら?」


そう言って手鏡を差し出す。少年は受け取り、自分の背中を映す。


はっきりとは見えないが、そこには数字が浮かび上がっていた。


『426』


それが彼の数字だった。


「この子のも……よいしょ」


白髪の少女はクロエの服を少し持ち上げる。白い肌の腰のあたりにも、数字が浮かんでいた。


『365』


彼女の数字は、少年よりいくらか少ない。


「私のもあるわよ。ほら」


彼女の瞳をよく見れば、そこにも数字が宿っている。


『1010』


それが彼女の数字。


「それは何なんですか」


「あなたたちが魔法を使える回数よ。あなたたちはこの世界の人間じゃない。だから肉体の状態に応じて、使用回数が制限されているの」


「じゃあ……0になったら?」


「言わなくても分かるでしょう? だからこそ、私たちの学院で適性を試すの。元の世界へ帰すべきか、それともここに迎えるべきか」


「学院……?」


「そう。魔法訓練・教育機関――メギロディアン。この場所では、魔法使いたちを集め、魔女と戦うために育成しているの」


「は……?」


「私も、この子も、そしてあなたも。役目は一つ。この世界に残る十三人の魔女を、すべて討ち滅ぼすこと」


005


とある塔。


「ふーん……残りは五十人か」


上半身裸の白髪の青年がそう呟く。均整の取れた筋肉が、どこか妖しい色気を漂わせている。


「少なくとも、去年よりはマシですね」


青い髪に眼鏡をかけた、冷静な雰囲気の青年が答える。


「だな……去年は全滅だったもんな」


白髪の青年はくすくすと笑う。眼鏡の青年は手際よく彼に服を着せていく。


「もしかしたら、今年は魔女を全員倒せるかもしれませんよ」


「また悪い顔してるぞ、ウィリアム」


眼鏡の青年が軽くからかう。


「うるさいぞ、ラケレス」


そう言ってウィリアムは部屋を出て、メギロディアン学院の新入生たちへ挨拶するため、廊下へ向かった。


学院の生徒会長として――


魔法を無制限に使える唯一の存在。


ウィリアム・クレイ・アンダーソン。


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