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第六話 恐ろしき師匠②

本日2話目の投稿です。

とてつもなく嫌そうな顔だが、断れない人間であるギャレクは家の中からしぶしぶ杖を持ってきた。


「場所を変えましょう。裏山にいい場所があります。」


我が家は都市部まで馬車で30分ほどだが、家は自然豊かな村の中にある。

裏山までは徒歩3分だ。


これから魔術戦を実演してくれる(させられる)ギャレクとサフーリン先生、戦いを見たい俺とラウルが歩いて行く。


サフーリン先生がつぶやく


「いい場所ですね。緑豊かで過ごしやすそうです。」


ギャレクが尋ねる。


「どこの出身なのですか?」


「わ、私はヤマカワの出身です。きつい山と危ない自然だらけで穏やかな草原とかは見慣れていなくて…。」


「そうですか。ぜひ家庭教師の仕事中以外は自由にしてくださいね。」


「お、お言葉に甘えさせていただきますぅ…。」


***


「着きました。ここでなら周りにもあまり被害は及ばないだろう。」


着いたのは山の中腹にある平地だった。

2人は各々準備運動を始めた。


「広範囲魔法使うかもしれないから、これ張っとけ。」


渡されたのは煙水晶のような岩石だった。


「それを叩き割ると、防御結界ができる。それがあればまず魔法がお前たちに届くことはないだろうから、近くで見ていいぞ。」


早速叩き割って見ると、少し茶色がかったアクリル板のようなものに俺とラウルの周辺は覆われた。

それを確認して、杖を双方が構えた


「先生、勝利条件は、『一発相手に自分の魔法を当てる』でいいか?」


「いいですよ。」


「よし。じゃあラウル、号令をよろしく。」


ラウルは頷いて咳払いをする。


「構えて。」


2人が臨戦体制となり、緊張感が漂う。


「始め!!」


「氷柱!」「石壁。」

ラウルが言葉を発した刹那。2人が詠唱し、地面から生えてきた巨大氷柱を分厚い石壁が弾いた。


その後もものすごいスピードでサフーリン先生の攻撃魔術とギャレクの防御魔術が展開される。


「氷槍!」「地盾。」 「風刃!」「木枯し。」 「水砲!」「火砲。」


ものすごい手数で攻めるサフーリン先生の魔術に対し、ギャレクは、冷静にレジストする。全く無駄のない動きで一定の距離を取り、隙を窺っている。


ラウルが言う。

「サフーリン先生の神助である『船神』は、海に関する神だから、風、空、水系統が得意。一方父様の神助は『火神』だから、地、火属性が得意。父様はそれを理解して、防御にまわっているみたい。あと、これまで使っている魔術は2人とも中級魔術以下のみ。長期戦もできるように計算してる。」


そうなのか。それを一瞬で見破ったラウルの方がすごいと思うけど、やはり戦ってる2人はすごいのだろう。


ラウルが解説をしている間にも攻防は続いている。


初めてギャレクが、能動的に技を打つ。


「石鎚。」


巨大なハンマーが地面からではなく、空気中から現れた。

俺はとてもびっくりしたが、サフーリン先生は特段驚いたそぶりもなく氷の盾で受ける。


ラウルに聞く。

「兄様兄様、なんで空気中から突然出たきたんですか!?」


「魔術が壊れると空気中にその壊れた魔術分だけ霧散するんだ。それを使って作ったんだろうね。」


「そんなことできるんですか?」


「魔法を魔法でレジストした時、同じ魔力分は消滅するんだ。その特性を利用して父様は、相殺していると見せかけて少し多めの魔力を込めて先生の魔術を壊していたんだろう。壊れた時に残った分の魔力をかき集めて撃ったんだと思う。」


ラウルは本当に戦闘未経験なのだろうか。なぜすぐにわかるんだろうか。


先生が詠唱を続ける。

「竜巻!」


ゴウっという音がして、風の渦ができる。


「初めての上級魔術だ。」


先生が竜巻を放つ。そしてそれと一緒に走り出す。


ギャレクはーー「竜巻。」と唱えて撃った。こちら側にも竜巻ができる。向こう側よりかなり大きい。


2つの竜巻がぶつかり、先生のものが消え、なんと、ギャレクのものが大きくなった。

同じ魔術同士だと小さい方を大きいものが取り込むのだろう。


竜巻が竜巻を飲み込んだ瞬間、先生がギャレクの背後にいた。


「「あ。」」


俺たち2人で呟く。


「地槍!」

先生が詠唱し、地面から生えてきた槍がギャレクの体をつらぬーーかなかった。


槍の穂先より高く跳んで避けていた。空中で詠唱をする。


「竜巻拡張、火災旋風。」


先程の竜巻が朱に染まり、ギャレクの杖の先ーー先生に向かう。


先生は、杖を蒼穹にむけ、詠唱した。


「これで決めます。『海鯨(かいげい)』!」


唱えた刹那。

空からバケツをひっくり返したような水が降ってきた。


バッシャーン!!と草地を濡らし、火災旋風を鎮めた。

結界の中は何事もなかった。この水晶結界すげえな。


水たまりができ、消火の跡がある戦場にはーー




2人共が息を切らして座り込んでいた。

俺は2人に問いかける。


「どちらが勝ったのですか!?」


ギャレクが答えてくれる。


「俺に先生の魔法が当たったから、先生の勝ちだ。」

と着ている服を指す。それは水で濡れていた。


確か、勝利条件が『相手に自分の魔法を当てる』だったっけな…。


こうして俺が初めて見た魔術師同士の戦いはなんとも締まらない終結を迎えたのだった。

お読みくださりありがとうございます。

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