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サツキとダンの新しい世界  作者: 手絞り薬味
続・サツキとダンの新しい世界
84/101

続ー17ダン編      巻貝に魅せられて

 邪獣を倒し、歩く。そしてまた邪獣を倒し、寝る。


 ユイセル達は、無事トーラに着いただろうか?


 星を見つめながら考えていると、邪獣が現れ、倒す。

 正直チャマがいないのは辛い。だがそれはいたしかない。元々一人旅の予定だったのだ、むしろ途中まででもチャマと一緒に行動できて良かったと考えなければなるまい。

 ネルビンの襲撃を回避する為に、今斬った邪獣の肉を待って急いで移動し、溜息を吐く。

「……寒いな」

 思わず口から漏れてしまうほど、寒さが身に染みる。邪獣の肉を置いて掌を上に向け、俺は魔力を練った。

「全知全能なる神々よ、我が思いに応えよ。天より炎舞い降り凍える大地に温もりをもたらせ――」


 ドガーン! ビュンビュン! ドガーン!


 巨大な火球が降ってきた。小さなものが一つあれば良かったのだが、巨大火球は辺り一面に降り注いでいる。

 うーむ、まだまだ制御が難しいな。

 荷物を抱えて火球を避けていると、暫くして漸く落ち着いた。うむ、辺り一面燃えたおかげで暖かくはなった。

 それにしても、もう少しマシな魔法が欲しいな。魔法師団長は光る花の出し方とか、そういうどうでもよさそうな魔法はよく教えてくれたが、強力な魔法は「まだ早い」と言うばかりでろくに教えてくれなかった。俺が使っているのは、他の魔法師が『お前は力があるから特別に』とこっそり教えてくれたものばかりなのだ。

 はぁ、まあいい。邪獣を食べよう。

 邪獣の肉を火であぶり、食べる。……美味しくないな。それでも良く噛んで食べ、食べたら横になり、体を休める。そして翌朝、浅い眠りから目覚めた俺は、まだ燃える火球を置いて歩き始めた。


 戦い、歩く、戦い、歩く、寝る、歩く……。


 何日歩いたのか分からなくなった頃、水と食料が底をつき始めた。

 参ったな、中心まではあとどれくらいなのか……。方位磁針を取り出して位置を確認しようとした時――、またもや邪獣が現れた。

 見た目は黒っぽい巨大な巻き貝で、その貝の中からハサミ状の手を持った邪獣が出てきた。貝は邪獣の尻に引っ付いて左右に揺れている。


 美味そうだ……!


 たまに食卓に出てくる貝に似ている。今まで食べてきた邪獣は本当に食えるのか怪しいものばかりだったが、これは確実に食べられるだろう。

 持っていた荷物を投げ捨てて剣を抜き、邪獣に向かって振り下ろす。巻貝邪獣はハサミで剣を受け止めた。

 なかなか強いようだな、だがしかし、俺は魔力を込めて強引に邪獣を殻ごと砕く。そして貝部分が無くなり慌てふためいている中身を、剣で突き刺した。

 よし、少し移動して焼くか。

 荷物を拾い……ん?

 そこで俺の動きは止まった。……何ということだ。目の前の事実が信じられない、いや、信じたくない。


 方位磁針が壊れている。


 ただのゴミの塊になった物を、俺は拾い上げた。

 先程投げた時か? うーむ、どうしよう。何とか直らないものかとあれこれ試してはみたが、一度ぐしゃぐしゃになったものがそう簡単に直るわけがない。

「…………」

 助けを求めるように果てしなく続くひび割れた大地を見渡すが、当然そこに人影はない。

 どうするか。勘で行けば大丈夫か? もうすっかり北も南も分からない状態だが……。

 あぁ、巻き貝邪獣に夢中になったばかりに、とんでもないことになった。


「サツキ……」


 ギラギラと輝く太陽を見つめ、俺は途方にくれた。


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