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サツキとダンの新しい世界  作者: 手絞り薬味
続・サツキとダンの新しい世界
71/101

続ー10サツキ編     歓楽街

「はあ、疲れた」


 チゲ鍋パワーで元気になった私は、頑張って文字の勉強をしていた……けどもう無理。

 ほんっとうにトーラの文字って難しいなぁ。ちょっと休憩。

 ベッドに寝転んで、目を閉じる。

 ダン、元気かな? ちゃんとご飯、食べてるかな? でっかい剣を持っていったけど、危ない仕事じゃないといいな。

 でもまあ、ダンは強いし逞しいし、大丈夫だよね、きっと。


「……はぁ」


 ああ、やっぱりちょっと寂しくなってきちゃった。あの逞しい腕に抱かれてかっこいい顔を思う存分愛でたい……。

 素敵な彼氏がいるのに会えないって辛いなあ。ダンも手紙くらい書いてくれればいいのに。忙しくてそれどころじゃないのかな?

 うーん、でも一言くらい書けるよね。そうだよ、手紙くらい書けるのに何で一通も届かないの? 私がいなくて、寝る時とか寂しい筈だよね。それとも……。


「…………」


 あ、いけない。なんだか変な想像しちゃった。ありえない、ありえない。でも……。いやいや、ダンに限って……。

 うん、そうだよ。彼女が傍にいないからって、そんなこと――浮気なんてするような人じゃないよ、ダンは。私ってば何を考えてんだろ。

 でも……、もし凄い美女に誘われたりしたら?


「…………」


 一緒に出張中の同僚とかに、ちょっと遊びに行こうぜとか言われて歓楽街へ。

 そこで出会った巨乳美女に誘われ……。


「あぁあー!!」


 そんな! いや、でもあり得る! 出張中ぐらいは羽目を外してやろうとか、そういうのあり得るよね!

 ダンはいい男だから、その気になれば浮気し放題だよ! でもってダンの魅力に女たちはメロメロに……。

 いや、やっぱ駄目。信じてあげなきゃ! ――そうだ!

 私は飛び起きて、お父様の元へ行った。


「お父様―!」


 突然ドアを蹴って現れた私に、ソファーに座ってお茶を飲んでいたお父様が驚く。

「どうした、サツキ」

「訊きたいことがあるの!」

「うん? 何かな?」

 そこで私は、お父様の前に座っていたお母様の方を見た。お母様の前で訊くのはまずいよね。

「ちょっと来て」

 私はお父様を引っ張って廊下に行く。

「あらあら、内緒のお話かしら?」

 お母様の笑い声が後ろから聞こえる。うう、ごめんなさいお母様。私はお父様の秘密を暴いてしまうかもしれません。

 心の中で謝罪してドアを閉め、私はお父様を真剣に見つめた。

「お父様」

「なんだい、サツキ」

「お母様以外の女の人と仲良くしたことある?」

 お父様が首を傾げる。えーと、なんて言えばいいのかな?

「お母様に内緒で女の人が沢山いる場所に行って、お母様以外の女の人を見てドキドキしたり、胸を見ちゃったり、キスしちゃったりしたことある?」

「……え!?」

 お父様は大きく目を見開いてじっと私を見て、それから豪快に笑った。

「無いよ。お母様が一番素敵だからね」

「本当に?」

 不安げな私に、お父様がウインクする。

「ああ。ダンもお父様と一緒の気持ちだよ」

 お、おおおー! つまりダンもお父様も浮気はしない!?


「そうだよね!」


 うん、そうだよ。ダンがいい男だから、私考えすぎていた。私っていう素敵な彼女がいるのに浮気したりしないよね。

「ありがとう、お父様!」

 私はお父様に飛びついて、頬っぺたにチュッとキスをした。

 うん、お父様に相談して正解だった。さ、部屋に戻ろう。

 私はお父様と別れて、自分の部屋に向かって廊下を歩く。これから何をしようかなー。

 すると、前方からヤンが歩いてきた。そうだ、ついでにヤンにも訊いちゃおう。

「ヤン!」

 私が呼ぶと、ヤンが走ってくる。

「何ですか? サツキ様」

「あのね、マチに内緒で女の人が沢山いる場所に行って、マチ以外の女の人を見てドキドキしたり、胸を見ちゃったり、キスしちゃったりしたことある?」

「え!?」

 無いよね! だってマチルダとヤンは仲良し夫婦なんだから。

 ドキドキしながら返事を待っていると――。


「な、何を突然……、そ、そ、そ、そんなこと、あ、あるわけ……」


 ヤンがゆっくりと視線を逸らした。

 ……え? 


「…………」

「…………」


 何、この重たい空気。どういうこと?

 まさか、まさか……!

「失礼します、サツキ様!」

 ヤンは猛スピードで走って行く。ちょ、ちょっと待って!


「どういうことよー!」


 私の叫びは廊下に虚しく響いた。


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