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メィイと気の合う仲間達の新しい世界 後編

「おい! 魂を連れ戻しに行かないのか?」

「うるさいシュラーン」

「俺は『主神に見つからずに魂を連れ戻せる』に陣地半分賭けているんだぞ」

 それは大博打だね。懲りない男。

 実は何度か行ったんだけど、エメローダの元へ着く前に主神に見つかっちゃって目的を達成できていない。

 やばいなぁ。何かあってからじゃ遅いし、怒られるのを覚悟で主神にすべてを告白したほうがいいかな。でもそれで主神が怒りのあまり新世界ごと消滅させたら……そんなの嫌よ!

「なあ、メィイ」

 ん? 何?

 シュラーンが大きな手で私の頭を撫で回す。

「自分だけでやろうとせずに、みんなの力を借りればいいだろ?」

「え……?」

「例えば俺が美味い酒で主神を酔わすとか、な」

 え、協力してくれるの?


「じゃあ私がお酌しようかな?」

「食べ物なら俺にまかせろ」

「適当に理由を付けてパーティーするか」

「飾りつけなら私達がやるよ」

「じゃあ俺は魂を連れ戻すのを手伝うか」


 不意に後ろから聞こえた声に振り向く。みんな、いつの間に来ていたの?

 美の神に料理の神、水の神、花の神に剣神その他大勢。

「あ、ありがとう」

 みんな! めんどくさいことが大嫌いなのに、手伝ってくれるなんて嬉しいよ。

 私は元気よく拳を振り上げる。

「うん! じゃあ早速作戦を考えよう!」

「おおー!」

「魂を連れ戻すぞ!」

「おおー!」

「今こそ私達の力が試される時だ!」

「おおー!」

「我らが一致団結すれば不可能は――え!?」

 ゾクッと悪寒がした。みんなもざわつく。

 近付く大きな力……は、え~と。

「おい、メィイ……」

 シュラーンの口元がひきつる。

「ハハハ。――逃げる!」

 絶対ヤバい!

「『逃げる』ってどこにだよ!」

「遠くに!」

 みんなが叫びながら一斉に走る。


「遊び場の玩具を隠せ!」

「それよりもっとやばいものが!」

「どこに隠せって言うんだよ! 世界ごと消滅させろって言うのか!?」


 もう無理。絶対隠せない。

 う~。主神がこの状況見たらどうなっちゃうんだろ?


「メィイ」


「うぎゃあ!」

 もう見つかった!

 目の前に主神がパッと現れる。みんなその場で固まった。

しかも主神が腕に抱えているのは――エメローダ!?

 主神は腕の中で気を失ったようにぐったりしている少女を私に見せた。うん。成長はしているけど、間違いなくエメローダだ。

 以前は別の魂が混ざっていたが、何故か今はエメローダだけの魂に戻っている。

「これは何だ?」

 私は視線を逸らす。

「え~と、主神の世界の少女です」

「ほお?」

「ごめんなさい」

 速攻で謝る。だってもう全部知ってるみたいだし、何よりめちゃくちゃ怒ってるんだもの。

「いろいろと楽しいことをやっているみたいだな」

「いやあ、それほどでも……」

 溜息を吐いて、主神はエメローダを私に差し出す。

「え……?」

「本来はもっと早くに亡くなる予定の少女が生きていることで、周りの者達の運命が少し狂ってしまった。これ以上は我の世界に置いておけない」

「…………」

 もしかして、とっくにエメローダのこと知っていた?

 私はエメローダを受け取りながら主神をじっと見つめる。

「以前混ざっていた魂は?」

「消滅した。しかし本来より長く維持できたので魂も喜んでいた」

 それはエメローダが魂の消滅を食い止めていた、とか? まさか。

 主神が周りで固まる仲間を見回す。

「ところどころ遊びすぎの部分もあるが……まあそれなりにやっているようだな」

 そして私の目を見つめた。

「創った命には責任を持ちなさい。特にメィイ」

 う。何故私だけ名指し?

「お前に似てお転婆な魂だ。これからはしっかり見守ってやるように」

 フッ……と主神が消える。帰った、の?

「…………」

 私は腕の中の少女を見た。お転婆な魂……ね。

「それにしても……」

 ろくに怒らず、お咎めもなくなんて――。

「主神、もしかしてモウロク……うひゃあ!」

 振ってきた雷を避ける。

 前言撤回。まだまだ元気。

 なんかよく分からないけど許されたみたい。

 私は大きく息を吐いてその場にへたり込んだ。





「ほら、行きなさい」

 仲間達が見守る中、エメローダを両親の元にそっと送る。

 たとえ姿は変わっても、あなたの両親は気づいてくれる……たぶん。


 光が溢れ、少女は目を覚ます――。


 あ、いきなり言葉の壁にぶつかった。

 そうかしまった、トーラ語は話せないんだ。

 うーん、でも……頑張りなさい。障害を乗り越えてこそ得られるものもあるから。ちゃんと見ててあげる。

 その日から私はエメローダ改めサツキを毎日見守った。





「それは見守っているんじゃなくて、『覗き』と言うんだぞ、メィイ」


 うるさいエイプ。今ちょっといいところなの。

 あ! 隣の男が急接近。


「あの男と半年以内に結婚に陣地全部」


 自棄になった? シュラーン。

 陣地が無くなっても知らないよ。


「ねえメィイ、あの子はもう少し『美』に興味を持ったほうが良いのではないかしら?」

「相手の男に朗らかさが足りないわ」

「いや、男はあれで良い」

「サツキは鈍感ね、ちょっと注意してこようかしら?」

「あのままが良いのではないか?」

「あ、あ、あ、サツキが意識し始めた」

「げ。結婚が決まった」

「よし! やったぞ!」

「男は紳士的すぎる。もっとケダモノになれ。それが男ってものだ」

「あらあら本当。サツキのほうが積極的ね」


 あれ? いつの間にかみんなあの子に夢中になってる。まあ確かに面白いけど、陣地ほったらかしで大丈夫?

 何か惹かれるものがあるのかな、あの子には。

 こうして私達が見守る中、サツキは少々勘違いしたままみたいだけど驚くべき早さで結婚の日を迎えた。


「いや~、良かった良かった」


 そうだね、シュラーン。失った陣地が戻ってきて良かったね。

 トーラ最古の神殿にこっそり降り立った私達。その前で若い二人が愛を誓う。

 沸きあがる歓声。愛し合う二人が走る。

 あ、そうだそうだ。結婚のお祝いに祝福でも授けようかな。

 私はサツキの魂に直接語りかける。


「サツキ、私は女神メィイです。あなたに祝福を授けましょう」


 サツキが驚いた表情で一瞬振り向き――また前を向いて去っていく。

 え? 何故?

「サツキ、祝福を! サツキ!」

 ……行っちゃった。嘘みたい。普通、神の声を無視する?

 神々を笑い転げさせるなんて、あなたくらいよ。

 はあ、もういいわ。サツキに祝福を授けるのはやめた。その代わり――。


「愛に祝福を! お転婆な魂と共に歩む力を授けましょう」


 あんな子また何をやらかすか分からないしね。夫になる者に、サツキを守り繋ぎとめる為の力を授けておきましょ。


「お? じゃあ特別に俺も、祝福を!」

「じゃあ私達からも。愛に祝福を!」

「愛する気持ちを力にして剣を持て。祝福を!」

「も一つおまけに祝福を!」


 ……え? あらら、祝福与えすぎ。でもまあ、たまにはいいかな?

 チャマに乗って去っていく二人を見送る。うーんなんだか娘を嫁にやる気分かな?

「さて、帰ろうか」

 私は振り向いてみんなに笑う。



 頑張りなさい、愛し子よ。

 きっと楽しい未来があなた達を待っているから――。


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