最終話ダン編 新しい世界
暖かい日差しが降り注ぐ庭で、俺とサツキはお茶の時間を楽しむ。
俺がケーキを食べる姿を、サツキは微笑みながら見ていた。
ああ、なんて可愛い。
一見、華奢でか弱いサツキ――。だが数日前、俺はサツキの真の姿を知った。
結婚式があったあの日の夜、部屋のドアを開いた俺は、まずサツキへの愛を叫んだ。
『愛している、サツキ!』
サツキの元に駆け寄った俺は、抱きしめそして……。
しかしその時、サツキが目を見開いて叫んだ。
『まさーか! トンデヒニイルナツノムシ!?』
そして突如――いや、これ以上は俺の口からはとても言えない。
とにかく驚愕しながらも期待に応えようと奮闘した結果、翌日サツキは起きられなくなり、俺は皆から怒られた。
ただ、父さんだけは腹を抱えて爆笑していたが……。
「ダン」
サツキがフォークでケーキを掬って、俺の口元に持ってくる。
「あーん」
大きく口を開けて、ケーキを食べる。
きっと……近い将来には、この広い庭を子供達が駆け回っているだろう。楽しみだ。
こんなに可愛くて優しくて、時に積極的なサツキと結婚出来て、俺は本当に運がいい。
隊長も騎士仲間達も、殿下や陛下も『ダンは結婚してとてもいい感じになった』と言う。
周囲から話し掛けられることが多くなり、そして驚く程仕事が順調になった。
以前隊長から皆と仲良くしろと注意された意味を、俺はやっと理解した。
すべては目の前にいる、愛する妻のおかげだ。
サツキと出会って恋をして、そして結婚して……とても不思議な感覚なのだが、目の前がパッと開けて新しい世界に辿り着いた気がする。
「ねえ、わたーしことね……好き?」
サツキが俺を見上げて訊く。
俺はサツキの手を優しく握り答えた。
「勿論だ。サツキ、好きだよ愛している」
チェルルの実のような赤く可愛い唇をサツキが突き出し、俺は顔を近付ける。
チュッ!
ああ! 幸せだ!