最終話サツキ編 新しい世界
暖かい日差しが降り注ぐ庭で、私とダンはお茶を飲む。
大きな口を開けてケーキを頬張るダン。
幸せそうな顔しちゃって!
私は頬杖を付いてそんなダンをじっと見つめる。
一見、人畜無害なこの男――。
だけど数日前、私はダンの真の姿を知った。
コスプレ祭りがあったあの日、眠りにつく寸前に聞こえたノック。
勢いよく開いたドアから入ってきたダンは、こう叫んだ。
『愛している、サツキ!』
驚く私の元に駆け寄ったダンは突如――ケダモノに豹変した。
まさかダンがあんなことするなんて……異世界トリップ以上の衝撃だったよ。
祭りでテンション上がった上に飲み過ぎて、酔った勢いで……って本当に馬鹿なんだから。
ダメージくらった私は翌日寝込んで、ダンはカタヤの両親とダンの両親、ついでにニナやマチルダ、ヤンにまでこっぴどく怒られた。
でもベッド脇で『愛してる』って言われ続けたら、もう何だか許してあげようかなって。惚れた弱みかな?
実はダンも前から私のこと好きだったんだって。
それならそうと強引にじゃなくて、ちゃんと告白してから色々すればいいのに――馬鹿。物事には順序ってのがあるんだよ。
もう本当に、私が付いてないと駄目なんだから。
「ダン」
私はフォークでケーキを掬ってダンの口に持っていく。
「あーん」
ダンが口を開けてパクッと食べる。
まあ、思いがけない出来事で親公認の恋人同士になれたことだし……近い将来プロポーズされて『奥様』なんて呼ばれちゃうかも。
うん、ダンとだったら結婚しても上手くいくと思う。
突然異世界にトリップして、それでもこんなお金持ちに拾われて、ちょっと困ったところもあるけど素敵な彼氏が出来て、私ってば本当に運がいい。
日本の両親が言ってた『自分なりの新しい世界』って、もしかしたらここのことかも……なんてね!
私はダンを見上げて訊く。
「ねえ、私のこと……好き?」
するとダンは、私の手をギュッと握って答えた。
「当然だ。サツキ、好きだ、愛してる」
唇が近付いてきて、私はそれを受け入れる。
チュッ!
ああ! し・あ・わ・せ!