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サツキとダンの新しい世界  作者: 手絞り薬味
サツキとダンの新しい世界
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第17話ダン編    婚約披露パーティー

 ついに屋敷が完成した。

 そして今日は、親交のある方々を招いて婚約披露パーティーを開いた。

 大広間には沢山の人。

 ニナ夫婦と騎士仲間、隊長も来てくれている。

 ちなみに両親は『家畜の出産が間近』という信じられない理由で欠席だ。

 ピンクのドレスを着たサツキはとても可愛い。

 俺はサツキの髪に、婚約者がいる事を示す髪飾りを挿した。

 トーラでは昔から、これを挿している女を口説いてはいけないという決まりがある。

 これでいくらサツキが可愛くても横取りしようという馬鹿は現れないだろう。

 パーティーが始まり、カタヤのおじ様が招待客達に挨拶をする。

「本日は二人の為に来て下さりありがとうございます」

 すると、サツキが急にそわそわとし始めた。

 ん? どうしたのだろう。

「サツキ」

 小声で名を呼び肩を抱くと、サツキが俺を見上げる。

 不安げに揺れる瞳――。

 ああ、そうか。緊張しているのだな。

 軽く肩を叩くと、サツキの表情が和らぐ。


 『俺が付いているから恐がらなくていい』


 心の中でそう語り掛けると、サツキがニコッと笑った。

 ああ! 凄いではないか。

 サツキと俺は言葉に出さなくても気持ちが通じ合うのだな。

 感動していたらいつの間にかおじ様の挨拶が終わっていた。

 ワッと拍手が起こり、サツキが招待客に笑顔を見せる。

 そして拍手が止み、招待客がサツキの可愛さについて語り合い始めると、サツキはおじ様に向かって唇を尖らせながら言った。

 

「おとさま二人違う、わたーしとおとさまおかさま一緒家族。忘れる無い」


 サツキ……、何て優しいのだ。

 『結婚しても、お父様とお母様と私は家族だよ。いつまでも一緒にいようね』と言っているのだな。

 こんなに素晴らしいサツキと結婚出来るなんて、本当に幸運だ。

「ああ! そうだな! ありがとうサツキ」

 おじ様も感動してギュッとサツキを抱きしめ、おば様はハンカチで涙を拭った。

「サツキ、ダンとあちらに行っておいで」

 おじ様に言われてサツキが俺の腕の中に戻る。

 俺達は広間の中心付近に行き、招待客に挨拶をした。


「おめでとう」

「ありがーとござうね」


 お祝いの言葉を下さる方一人一人にサツキは微笑んで礼を言う。

 騎士仲間達が俺の耳元で「可愛いなぁ」とか「羨ましい」と、からかうように囁くのが少々照れくさい。

 何人もの人が入れ代わり立ち代わり祝ってくれ、そろそろ挨拶も終わりかという頃、俺の所属する部隊の隊長がサツキの前に立った。

「おめでとう」

「ありがーとござうね」

 隊長はニコニコと笑いながらサツキの頭に手を置く。

「こんなに可愛いとは思わなかった。ダンは幸せ者だな」

 そして隊長はサツキの頭を撫でるのだが……ちょっと待ってくれ! 髪飾りが見えないのか!?

 隊長とは言え俺のサツキに許可無く触るな!


「隊長! 触らないで下さい」


 慌ててサツキを引っ張りギュッと抱きしめる。

 隊長は一瞬ポカンとして、それから大爆笑した。

 何が可笑しいのだ!

「そうかそうか、悪かったよ。良かったな」

 強い力で俺の腕を叩きながら隊長が笑っていると、別方向から聞き慣れた笑い声が聞こえてきた。


「ウフフフフ」


 ……ニナか。

 サツキを離し振り向くと、やはりニナが夫であるリックを従えてこちらに向かって来ていた。

「おめでとう」

「ありがーとござうね」

 ニナが片目を瞑り、口角を上げる。

「仲がいいのね」

 その途端、サツキが慌てて俺から離れる。

 ニナ、サツキをからかうな。もうすぐ結婚するのだから仲が良くて当然だろう。

 まったく、どうしようもない奴だな。

「サツキ」

 恥ずかしがるサツキを引き寄せようとすると、手を叩かれる。

「おいおい、今からそれでどうする」

 隊長が横から茶化す。

 尻に敷かれているとでも言いたいのか?

 隊長、自分がそうだからって俺も同じだと思わないで下さい。

 サツキは眉を寄せて顔を逸らし、そこでふとニナの後ろにいるリックの存在に気付いた。

 ニナがリックを紹介する。

「サツキ、私のリックよ」

 ……本当に独占欲が強いな。

 リックもこんな女と夫婦では大変だろう。

「はじめまして、リックです」

「はじめてね」

 サツキが挨拶を返すと、ニナがリックの背を叩いて飲み物を持って来てと頼んだ。

 リックはトレーに飲み物を載せてきて俺達と隊長にも配る。


「乾杯!」


 サツキがグイッと呷る。

 ……これ酒なのだが、そんな飲み方して大丈夫なのか?

 俺の心配を余所に、隊長がガハハと笑う。

「良い飲みっぷりだな」

「ありがーとね」

 うむ、平気そうだな。

 しかしサツキは華奢だから、あまり飲ませないように気を付けなくてはならないな。

 そんな事を考えていると、サツキがハッと何か思い付いた表情をして、空のグラスをリックに押し付けてテーブルに向かって走る。

 そして妙な料理が載った皿を持って帰って来た。

 野菜や魚などが穀物でクルクルと巻かれているようだが……まさかこれは。

「これは……?」

 顎に手を当て料理をじっと見る隊長にサツキが笑顔で答えた。

「わたーし、国の料理ね」

 やはりそうなのか!

 あのとんでもない根性試しを隊長でもやろうというのだな。

「ほおー。ちなみに国は何処だ?」

「ニホンね」

「ニホン?」

 隊長が首を傾げる。

 隊長もニホンを知らないのか。いや、それより……。

「トーラ人、知らない思う。国、小さいね。ほら、どうぞ。食べるしてみるね」

 サツキが隊長に皿を差し出す。


「サツキ!!」


 駄目だ! そんな事してもし隊長が倒れでもしたら、大混乱になる。

 サツキが振り向き、不思議そうに首を傾げる。

「それは……」

 何と言えば良い? サツキを傷付けず、尚且つ根性試しを諦めさせるには。

 悩んでいると、サツキが謎の料理を一切れ摘んで俺に差し出した。

「はい」

「う……」

 つまり、隊長の代わりに俺に食えと言うのか。

 あの時の苦く酸っぱく甘い味が蘇る。

「ほら」

 しかし、断ればサツキが傷付く。大勢の前で恥をかかす訳にもいかない。

 ここは思い切って、この料理を俺が独りですべて食べよう。そうすれば丸く収まるのだから。

 屈んで恐る恐る口を開けると、謎の料理をサツキが放り込む。

 根性を出して咀嚼――ん? んん? おかしい、これは!


「……美味い!」


 美味いではないか!

 以前食べた料理とは全然違う。

 そうか、そうだな。サツキが客を使って根性試しをする訳がないじゃないか。俺は少しどうかしていた。

 サツキが頬を膨らませて俺を見つめる。すまない、許してくれ。

 心の中で深く反省していると、隊長がサツキに料理を一切れくれと言った。

 サツキが笑顔で皿を差し出し、他の招待客も次々にサツキから料理をもらう。

 ニコニコと笑うサツキ。

 ……良かった、怒ってはいないようだな。

 ホッと胸を撫で下ろしていると、耳元でウフフと笑い声がする。

「……ニナ」

「本当に可愛いわね」

「当然だ」

 俺のサツキは世界一可愛い。

「それだけではなく、優しくて面倒見が良い素晴らしい女性だ」

「まあ! ダンったら」

 そうしてニナと話をしていると――、またもや隊長がサツキの頭を触っているではないか!

 慌ててサツキを抱き上げる。

 いい歳した大人がひとの婚約者に馴れ馴れしくさわるな!

 俺が怒っているのが分からないのか、隊長と何故かニナも爆笑する。

 周囲の者達もクスクスと笑い始めるし、いったいどうなっているのだ?

 訝しく思いながらサツキを見ると――ああ、なんて可愛らしい。輝く笑顔がそこにあった。

 サツキは慰めるように俺の頭をポンポンと叩く。

 やはりサツキは優しい。

 サツキに出逢えた奇跡を、俺は心の底から神に感謝した。


早坂器乃様が素敵なイラストを描いて下さいました!

とても可愛いサツキとダンです。

皆様是非見に行ってみて下さい。

(ブログURL http://subuta.seesaa.net/article/171432580.html)

(又は、検索→シーサーブログ 狐の森ゲーム制作日記:2010年12月01日の記事)

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