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サツキとダンの新しい世界  作者: 手絞り薬味
サツキとダンの新しい世界
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第12話サツキ編   隣家買収

 あー、眠い。

 夜もしっかり寝ているのに、なんでこんなに眠いんだろ。

 やっぱりこのポカポカ陽気が原因かなぁ。

 凄いよね、ポカポカパワー。人を眠りに誘う力が秘められてるよねー。

 あー駄目。ちょっと昼寝しよ。

 ベッドに潜り込んで……。

 おやすみなさい。


 トントントン。


 この叩き方はマチルダだ。って事はまさか……。

「サツキ様、ダン様がおみえになりましたよ」

 ドアを開けて入って来たマチルダ。

 もう! こんな時に。

「私、寝るから」

「駄目ですよ。ほら立って下さい」

 マチルダは私をベッドから引き摺り出して、乱れた髪とドレスをサッと整えた。

 ふぁーぁあ、眠いよ。欠伸が止まんないよ。

「さあ、サツキ様」

 背中を押され、私は渋々客間に行った。


「サツキ」


 あーはいはい。こんにちは。

 もういいや、ここで寝よ。

 私はソファーに横になり眠った。





「サツキ、起きて」

 ……ん?

 この優しい声は、お母様?

「う……、まだ眠いよぅ、お母様」

「まあ、サツキったら」

 クスクスと笑うお母様。

 私は目を擦りながら体を起こした。

 あれ、お父様も居る。

「サツキ、ダン、見てくれ」

 お父様は満面の笑顔で、手に持っていた大きな紙をテーブルに広げる。

 ん? これは……図面?

「これが新しい屋敷だ」

 え? ああ、セキュリティ強化の……って、なんか部屋数めちゃくちゃ増えてない?

 そう思っていると、お父様は図面を指差して衝撃的な一言を言った。

「ダンの屋敷とこの屋敷を繋ぎ」

「なに!?」

「え……?」

 ダンと私が同時に声をあげる。

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 何故ここで俺の屋敷が出てくる?」

 ダンが焦った感じでお父様に詰め寄った。

「ダンの両親と話は終わっている」

「両親が!?」

「何よりサツキの出した考えだぞ。嫌なのか?」

「サツキが!?」

 ダンが目を見開いて私を見る。

 えーと……?

 セキュリティ強化の話はしたけど、なんでこんな話になってるの?

 てゆーか寝起きで頭が上手く働かないんですけど。

「いや、しかしこれは――」


 ドンッ!!


 お父様が拳でテーブルを叩いた。

「ダンは私達から、夢も望みも奪う気か!」

 え……、夢と望み?

 お父様はダンを睨み付け、肩で息をする。

 ダンが唖然としているよ。まあ、そうだよね。私もびっくり。

 それにしても……。

「お父様の夢?」

「ああそうだ! 大きな屋敷にして一緒に住もう!」

 うーん。お父様ったら、こんな大きな屋敷に住んでいて、更に大きい屋敷に住みたいの?

 ダンの両親との話が終わってるって、セキュリティ強化ついでに隣の屋敷も買っちゃったのかぁ。

 ん? あれ? じゃあダンはこれから何処に住むの? 引っ越すのかな。


 ……ダンが引っ越す?


 …………。

 そうだよね、ダンの屋敷はお父様が買っちゃったし。

 …………。

 へえ、まあ迷惑だったし、うん。

 …………。

 どっか行っちゃうんだ。もうお菓子食べに来なくなるのかな?

 まあ迷惑だったし、彼女いるし。

 うん、そう。彼女いるし。

 …………。


「えええぇえー!!」


 うわ! ダン、いきなり叫ばないでよ! びっくりした!

「な、なななななにを!?」

 『何を』って何が!?

 ダンがゆっくりと私達を見回す。

「ダン?」

「サツキ、大変だ! お、俺達がけけけけけっこー!」

 え? コケコッコ? ニワトリの真似? なに言ってんだろ。

 あ、そうか。屋敷をジャングルの両親に勝手に売られて動揺してるんだ。

「大変だね」

「大変だ!」

 ダンは可哀想な程おろおろとしている。

 そんなダンの肩にお父様が手を置き……というかグッと掴んだ。

「いいだろう、ダン」

「駄目です!」

「な!?」

 ダンに即答されたお父様が、信じられないという表情で後ろによろめいた。

「違うんです! サツキと俺はそんなの関係ない!」

 ダンは両手を振り回しながら叫ぶように言った。

 えーと、『そんなの関係ない』って、つまり『お前の夢など知ったこっちゃねえ!』って事?

 そりゃ確かに大きな屋敷に住みたいなんて子供っぽい夢だけどさぁ、でも私はお父様のそういう少年のようなところもいいと思うよ。

 屋敷売られたダンには迷惑だろうけど。

「なにを今更まさか! 遊びではないのだぞダン!」

 お父様がダンの胸ぐらを掴む。

 うん。遊びで大金出して隣家買ったりしないよね。

 分かってるよ、お父様が本気で夢を追いかけてるって。

 でも喧嘩は駄目だよ、話合おうよ。

「いや、だから……」

 ダンが眉を寄せ、私を見る。


「…………」

「…………」


 はあ? 何その目は。

 なんで私がガン飛ばされなきゃいけないの? まるで私が悪いみたいじゃない。

 それに、うん、そうだよ! よ~く考えたら、屋敷を勝手に売り払ったダンの両親が一番悪いんじゃない!


「ごめん! サツキ!」


 ダンは唇を噛みしめ、お父様の手を引き剥がして猛ダッシュで部屋を出て行く。

「ダン、待ってちょうだい!」

 お母様がその後を追いかけ走るが、すぐに戻って来て首を振った。

「くそ! 分からない人だ!」

 ドン! っと、お父様がまたテーブルを叩く。

 …………。

 えー……と。なんだろ、この重苦しい雰囲気は。なんだかもの凄く気まずいなぁ。

「サツキ……」

 お母様が近付いてきて私を抱きしめる。

 う。どうしよう……。


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