第11話ダン編 両親からの手紙
愛する息子ダンへ
頑張っていますね。
こちらは今、作物の収穫で大忙しです。
ところで、カタヤ家のお嬢さんと仲良くさせていただいているようですね。
屋敷の事はカタヤ夫妻と相談して決めなさい。
最後に、あなたは騎士なのですから騎士らしい振る舞いを。
両親より
「……なんだこれは」
田舎へ引っ越して以来一度も連絡が無かった両親から、初めて手紙が届いた。
しかしこの内容は……、なんだ?
『頑張っていますね』? 何故断定的なのだ。
『カタヤ家のお嬢さん』? まあ確かに友人ではあるが。
……ニナか? サツキの事を伝えたのは。まったく余計な事をして。
屋敷の事を相談、というのはなんだ?
最後の騎士らしい振る舞いというのもいったい……。
「……うーむ」
何故このような難解な手紙を寄越すのだ。
もっと分かりやすく書けるだろう、子供では無いのだから。
それに便箋一枚に走り書きとは、失礼極まりない。
……はぁ、まあいい。どうせたいした意味は無いのだろう。もし重要な事柄を伝えたいのなら、あの両親であっても、こんな紙切れ一枚で連絡してくる筈はない。
それより早く甘い物が食べたい。
俺は手紙を引き出しに片付け、カタヤの屋敷へと向かった。