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サツキとダンの新しい世界  作者: 手絞り薬味
サツキとダンの新しい世界
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第11話サツキ編   セキュリティしてますか?

「さあ! 好きな物をいっぱい選んで」


 え? なんですか、お母様。

 テーブルの上に山と積まれたカタログ。

 ドレスに家具に宝石に……買ってくれるの? って、どうしていきなり?

「これはどう? 似合うわサツキ」

 お母様はドレスのカタログを開き、ピンクの超ビラビラドレスを指差した。

 うわー、少女趣味。

 無理。それは無理ですお母様。

「ああ、これもいいわね。これもこれも……マチルダ」

「はい」

 サッと私達の前に立ったマチルダに、お母様はカタログを指差しながら言った。

「ここからここまで全部注文して」

 うわぁ、セレブ買いだ。さすが金持ち。

「サツキも選んで」

 えー、そうですか? では。

 私は積まれたカタログから一冊選んで指差した。

「ここからここまで全部」

「はい。サツキ様」

 マチルダが頷き、お母様が笑顔になる。

 凄いなあ、宝石をセレブ買いしても怒られないなんて。

 日本円で言ったら何億もするんじゃない?

「サツキ、これも」

 お母様が家具のカタログを開く。

 細工が綺麗なドレッサーやベッドの絵が描いてあるけど……。

「要らない」

 髪は結える程長くないし、化粧もあんまりしないからドレッサーは要らない。

 ベッドも今使ってるのでも十分広いのに、絵の通りだとすればコレかなーり大きいよ。五人眠っても余裕がありそうだもん。

 だけどお母様は珍しく怒った顔をして、私の額を人差し指でチョンと突いた。

「サツキ駄目よ。これが一番大事なのだから」

「大事? なんで?」

「これにしましょう。マチルダ」

「はい」

 私の疑問を華麗に無視してお母様が選んだのは、天蓋付きお姫様ベッド特大サイズ。

 それからお母様は、ドレッサーと櫛なんかの小物類、下着や靴やバッグにやたらセクシーなネグリジェまでガンガン注文しまくった。

「ああ、これでいつでも大丈夫ね。ダンの挨拶はいつかしら」

 満足げな笑みを浮かべながら、お母様はお茶を飲む。

 ん? ダンの挨拶? 何故今ダンの話になるの?

 今日は朝から晩まで仕事が忙しいらしく、珍しく来ていないのに。思い出させないでお母様。

「お隣というのは運が良かったわね、あなた」

 あ、お父様居たんだった。

 もの凄く静かにソファーの端っこに座っていたから忘れてた。

 でもお父様、なんか顔色悪くない?

 私は立ち上がってお父様の前に行き、そこで跪いてお父様の顔を覗き込んだ。

「お父様、気分悪いの?」

 お父様は力なく首を振り、私の手を握りしめた。

「お父様?」

「サツキ……」

 え? ちょっとちょっとどうしたの? お父様が泣き出しちゃったよ。

「お父様?」

「サツキ!」

 お父様は私をギュッと抱きしめる。

「手に入ったばかりなのに、こんなに早く盗まれたなんて……!」

 ……はい? 盗まれた?

「仕方がないでしょう? こういう事は」

 苦笑するお母様。

 えーと、なんの話かな?

「大事にしていたのに、突然来た男が盗って行った」

 ……突然来た男が盗む? 盗む盗む……ってまさか!?

「え!?」


 この屋敷、泥棒が入ったの!?


 えー、いつの間に。

 お父様の大事にしていた物が盗まれちゃったんだ。

「ほら、そんな事言うからサツキが驚いているでしょう?」

 いや、本当に驚き。

 あ、でもだからこのカタログなんだ。色々盗まれたから新しいの買うって事か。

 お母様ったら、私に心配掛けないように黙っていたんだね。

 でもベッドとかは盗まれてないから要らないんじゃないかな?

 ついでだから家の中の物を一新しちゃおう! って思ってんのかなぁ。

「ううっ、サツキ」

 お父様が私の肩に顔を押し付けて嗚咽する。

 うーん、余程大切にしていたものを盗られたんだ。可哀想、お父様。

 そうだ! 色々新しく買うのもいいけど、根本的な問題を解決しなければいけないよ。

「盗まれないようにしようよ」

 セキュリティだよ!

 だいたいこの屋敷は門も開けっ放しの事が多いし、警戒心が無さすぎるんだよね。

「盗まれないように……?」

 お父様が顔を上げる。

「そう。ちょっと屋敷を新しくして、使用人も増やして。大勢住んでも大丈夫でしょ?」

 この広い屋敷に使用人が二人って少なすぎだよ。

 あと簡単に泥棒が入って来られないように改築、門とかドアとか窓とかしっかりとした鍵付きにしよう。

 私がそう提案すると、お父様は目を見開いた。

「サツキ!」

 私をギューッと抱きしめてお父様はお母様を見る。

 あれ? お母様が泣いてる。どうして?

「素晴らしい考えよ。ありがとうサツキ」

 お母様はハンカチで涙を拭きながら笑った。

「早速今夜にでも話をつけるか」

「いえ、その前にワーガル夫妻に味方になってもらいましょう」

「そうだな。あいつが嫌がったら説得してもらおう」

 ワーガルってダンの両親? なんで? 『あいつ』ってダンのことかなぁ。

 じゃあダンがうちの改築を嫌がる……音がうるさいとか苦情を言ってくるって事?

「手紙を書こう」

 お父様は立ち上がり、部屋を飛び出して行った。

 おーい、お父様ぁ。

「サツキ」

 お母様が手招きをする。

「なに?」

 お母様の隣に座ったら、頭を撫でられた。

「なんて優しい子」

 はあ……、ありがとう?

「あなたが来てくれて、私達幸せよ」

 うん。私も凄く幸せだよ。

「大好き、お母様」

「サツキ……!」

 お母様は私を抱きしめて頬擦りをする。

 あ、いい匂い。安らぐなぁ。

 お父様もお母様も、本当にいい人で大好き。

 こんないい人達から盗みを働くなんて、どこの誰だか知らないけれど最低!

 早くセキュリティ強化しようね! ダンが「うるさい」って文句言ってきたら、私が怒ってあげるから。

 ところで、さっきダンの両親に手紙書くって言ってたけど……、ジャングルに手紙って届くのかな?


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