表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/14

8話

「おい、置いていくなよ!」


 鈴木が追いかけて来た。少し遅れて高橋も。休憩の途中から姿が見えなかったが、こいつらは何をしてたんだ?別行動だから関係ないんだが。


「そういえば、どうして4人一緒にいたんですか?」


 確か、別行動でしたよね?と田中さんが聞いてくる。


「何故か着いて来たんですよ。「仕方なく。」と言うならなら来なければ良いのに。」


 自分が答えると、田中さんはウンウンと頷いている。2人はイジメだ!とか、見殺しだ!とか言っている。

 結局、自分の身は自分で守る事や、言いがかりやヘリクツをやめる事を約束させ、2人は一緒に来る事になった。


 先頭はゴールド、2列目は鈴木と高橋、3列目に自分と田中さん。

 ゴールドは先頭で警戒しつつ、出口を探してもらう。中2人はゴールドが囲まれないように対応。後ろから来る敵は自分と田中さんが対処する。

 あの2人は大人しくしているし、敵は弱い。問題なく進んでいるが⋯、熱いな。皆は涼しい顔をしているが、自分だけなのか?


「大丈夫ですか?」


 しばらく歩いていると、田中さんが心配そうに訊ねて来た。自分は正直に、熱くて息苦しい事を伝える。皆は平気か聞くと、どうやら自分だけが異常を感じているらしい。

 風邪か?動けない訳じゃないから水分補給しながら進んで行く。もうすぐ出口のはずだ、こんな所で足踏みしている場合じゃない。

 自分が3列目、田中さんには4列目になってもらい、鉄パイプを杖代わりに歩く。


 少し広い場所で何度目かの休憩中。汗が止まらず、節々が痛み、頭がぼんやりして来た。風邪だな。そう思ったが田中さんとゴールドの考えは違うらしい。


「絶対におかしいです。」

「風邪ではないのである。」


 確かに、昨日まで風邪の前兆は全く無かった。今日は色々あって体調を崩したとしても、症状の進行が早すぎる。とすると迷宮の影響だが、何故自分だけ?

 ⋯どちらにしても完全に足を引っ張ってるな。


 少しずつでも進む、だが敵はこちらの体調なんてお構い無しに襲って来る。自分は身を守る事に徹して、戦いには参加しない。


「俺達を見殺しにしようとしたバチが当たったんだ。」


 珍しく高橋がそんな事を言い出した。鈴木は頷いている。見殺し?何の事か聞くと、別行動の事を言っているらしい。


「田中の事も見捨てようとした。」


 今度は鈴木が話を蒸し返した、高橋は頷いている。見捨てた覚えはないが?自分が弱ってるのをいい事に、この2人面倒くさい。


「つーかもう、俺達だけで先に進んだ方が良いんじゃねぇ?」

「自業自得だと思う。」


 2人は勢いづいているな。ゴールドと田中さんは、約束を破るなら別行動だと主張しているが、あの2人の言う事も一理ある。


「田中さん、2人と一緒に脱出して下さい。」


 そして、できれば救助隊を連れて来て欲しい。と伝える。

 さっきのような罠さえ無ければ1人でも行動出来るくらい強いし、自分が死ねばゴールドは元の場所に強制的に帰ってしまう。

 自分とゴールドがここに残って救助を待ち、3人に頑張ってもらうのが合理的だろう。


「それなら1人の方がマシです。正直、あの2人は信用できません。」


 口ばっかりで自分勝手。大きな襲撃の後の休憩中も、勝手に光る玉を拾っていたようですし。

⋯あの2人あの時そんな事してたのか、そういえばしばらく宝珠出てないな。


 ⋯宝珠。何か新しく魔法を授かればこの状況を変えられるだろうか?例えば回復魔法。⋯いや、宝珠が出るとは限らないし、出ても授かるとは限らない。授かるとしても回復魔法とは限らないな。

 ⋯魔法。一度ゴールドを返して、回復出来る誰かを呼ぶ?⋯召喚魔法が上達すれば出来るかも知れないが、現時点では出来そうにない。

 ⋯安静にして自然回復を待つ?⋯迷宮内で安静は無理だな。戦うのはゴールドと田中さんに任せて、あの2人に運んでもらうか?冗談じゃない。


 ⋯そもそも、この体調不良の原因はなんだ?⋯敵の魔法?毒?⋯魔法を使う敵は見てないな。

 ⋯ゴブリンに左腕を噛まれたしスライムも付いていた、そこから毒や病原菌が体内に?

 ⋯だとしたら対処できないな、未知の毒や病原菌では医者だってお手上げのはずだ。


「行こう。」


 良い案は浮かばない、だが死にたくない。出口まで残り僅かと信じて進むしかない。せっかくここまで来たんだ、意地でも脱出してやる。

 飲み物はまだまだあるんだ、荷物を減らす意味でもガブ飲みして、頭からかぶり少しでも意識をハッキリさせる。前を向いて背筋を伸ばし、痛みは無視して歩く。諦めてたまるか。


 すぐまた敵。ゴブリンが4匹、その向こうになんだ?大きな歪な骨組みの⋯ゴーレムなのか?

 そのゴーレムのなり損ないが、太い腕を持ち上げて床に叩きつける。それが始まりの合図になった。


 まずゴブリンは相手にならない事は分かっている。ゴールド、田中さん、自分で1匹ずつ。あっという間に残り1匹。

 しかしゴーレムの動きが予想より早い。最後の1匹を仕留めようとしたゴールドを狙って突進し腕を振る。ゴールドは腕を避けるが、当たったら只じゃ済まないだろう。


「ゴブリンは俺がやる!2人はデカブツに集中してくれ!」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ