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7話

 焦って、驚いて、笑って、心が軽くなった。いつの間にかゴールドに頼り切りになっていた事をこっそりと反省して前に進んだ。


 進みながら火を使う敵について聞くと、あれはグレムリンである。と教えてくれた。

 機械にイタズラして人々を困らせる妖精らしく、さっきの火事とおそらくその前の火事もグレムリンが原因だったとの事。

 小さくて弱いが、すばしっこいから対処が難しい。かと言って放置すれば火事を起こしたり、瓦礫を崩して道を塞いだりとやりたい放題なんだとか。

 工場が迷宮化したこの場所は、グレムリンにとってまさに天国のような場所だな。こちらからすると、ひたすら迷惑な話だが。


 まだ出会ってないだけで、別の種類の敵もいるかもしれない。気を引き締め直して歩いていると、少し広い場所に出た。体育館くらいか?今来た道と先に進む道があるだけ。

 ライトであちこち照らしながら、ちょうど中央辺りを通り過ぎた時に異変が起きた。

 瓦礫の壁が崩れて前後の道が塞がり、連鎖的に天井の一部が崩れて小型の機械が落ちて来た。多くの破片や油が飛び散り床を汚す。

 そして崩れた壁の向こう側から、大量のゴブリンが大声を上げながらなだれ込んで来た。


「罠である!囲まれないよう注意して戦うのである!」


 ゴールドが鋭く指示を出す。自分は落ちてきた機械を背に鉄パイプを構える。ゴブリンの1匹や2匹は大丈夫。幸いゴブリン達は連係なんてお構い無しに、突っ込んで来るだけ。

 ゴールドと離れないように1匹ずつ対応していく。大丈夫。このまま勝てる。その時、瓦礫の壁に取り付いたグレムリンが目に入った。崩そうとしている!壁の向こうにゴブリンがいる!


「ゴールド!グレムリンを優先的に!」


 直感的に指示を出した。負担は増えるが大丈夫。グレムリンを放置していたら何をされるか分からない。これが最善のはずだ。

 任せるのである!力強い返事と共に駆けていくゴールドを見送り集中する。1匹2匹3匹と対応していく、全て一撃で倒せる。だが油断はしない。


 ゴールドはあっという間に1匹目のグレムリンを倒したが、まだ数匹いるらしくもう少し時間がかかりそうだ。ゴブリンの数が多いせいで手間取っている。

 あの2人も騒ぎながら応戦しているようだ。こちらは今までサボった分を頑張ってもらおう。ある程度分散されてちょうどいい。


 自分は今かなり集中出来ている、おかげで敵が良く見える。ゴブリン達は相変わらず痩せていて、骨が浮いている。こちらを見て学習したのか、手に武器を持っている。

 次々に襲って来るゴブリンを、右手の鉄パイプで叩き、左手はライトを持ったまま殴り、たまに蹴り飛ばしながらリズム良く対処していった。何箇所か小さな怪我をしたが、まるで問題無い。

 それでも数が多い。あと半分くらいか?日頃の運動不足のせいで肩で息をしながら手足を動かし、囲まれないように立ち回る。


「皆さん、大丈夫ですか!」


 自分から見て鈴木と高橋の向こう側、グレムリンが崩した壁の向こうから、田中さんが走り込んで来た。どうやら騒ぎを聞きつけて、駆けつけてくれたらしい。

 凄い。本格的に格闘技でもやっているのか、あっという間に数を減らしていく。ゴールドもグレムリンを倒しきり、鈴木と高橋を助けに行っている。


 よし、これでもう大丈夫だ。そう思ったのがマズかったのか集中が途切れてしまった、気付いた時には左腕に鋭い痛みが走る。

 ゴブリンに噛み付かれている。クソッ!咄嗟に引き剥がそうとするが剥がせない。無理やり腕を振り回して機械に叩きつける。離れた!すかさず鉄パイプを叩きつける!

 囲まれた。傷がズキズキと痛む。残り10匹くらい。何かがベチャッと覆いかぶさってきた。


「なんだこりゃ!」「気持ち悪ぃ!」


 離れた場所から高橋と鈴木の声が聞こえた。


「スライムである!核を狙って潰すのである!」


 上の階から濁った油のような、飴のような物が降ってきた。強引に拭い取ろうとするが、全く取れる気がしない。

 後回しだ。ゴブリンから先にやる。残りは10匹程度だ蹴散らしてやる。積極的に前に出て文字通り1匹目を蹴り飛ばす。鉄パイプで2匹目。

 包囲を抜けて振り返り、3匹4匹と倒していく。幸いスライムは動きが遅く、敵味方の区別も無いのかゴブリンも襲っている。

 体に付いたスライムも、顔に付かなければ邪魔にならない。床のスライムに滑らないように気を付けつつ、程なくして残りのゴブリンを倒しきった。


「お疲れ様でした。」

「サトー殿、素晴らしい判断だったのである。」


 お疲れ様です。田中さんが来てくれて本当に助かりました。ゴールド大活躍だったな。

 お互いを労い、自然と笑顔になる。ゴブリンを倒しきった後すぐにスライムも全滅させて、今は噛まれた左腕を手当てしてもらい休憩している。

 少し休んだら田中さんも一緒に行こう。よろしくお願いします、頼もしい仲間が増えたのである。3人でそんな話をしていると、瓦礫の壁が崩れ新しい道が出来た。


 疲れた体に鞭打って立ち上がり、またグレムリンの仕業かと襲撃に備えるが何も来ない。どうやら通れるようになっただけらしい。

 話し合った結果、その道を進む事になった。




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