表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/60

58話

 朝食を食べ終えた自分達は、本日の宿である石和温泉へと向かう前にレース場に到着した。


「ふっふっふ!ついにリベンジの時である!サクラ殿!」

「ふふん♪返り討ちにしてあげるよ!ルド君!」

「運転してええんか!こりゃ楽しみじゃ!だっはっはっ!」


 早くも火花を散らす2人を横目に、ダンもテンションが上がっている。もちろん自分も負ける気はない、前回はマシンのパワー不足による体重差で負けた。だが今回は問題ない、運転経験の差を見せてあげよう。


「1位!」

「大さんに負けた!」

「大さん大人げないですよー。」

「思わぬ伏兵である!」

「だっはっはっ!面白ぇ!」

「これは、もう1回ですね。」


 ダンは純粋に運転を楽しみ、エマさんは密かにやる気だ。


「この勝負受けて立とう!」


 その後、何度も勝負して総合優勝は自分。2位は意外にも美咲さん、そして最下位はなんとルドだった。


「むむむむぅ、やはりイスが合わないのである!今回の勝負は無効である!」

「次は専用の車を作って勝負じゃな!腕が鳴るわい!」

「夢中になってしまいましたね。」

「勝ち逃げは許しませんからね!大さん!」

「大健闘ですー。」

「いつでも相手になろう!」


 腰に手を当て勝ち誇った顔をする自分と、ピースする美咲さん。さくらは3位、エマさんが4位、ダンが5位。経験と体格の差かな?なんにせよ、次も自分が勝たせてもらおう。


 レース場を後にして有名な観光スポットに立ち寄り、湧き出る水の美しさに驚き、新しく水の精霊と契約して皆を驚かせたり。


「また、いつの間にか精霊と契約してるし…。」

「この旅は驚きの連続である!」


 左右対称の富士山に感心したり、昼食に山梨の名物を堪能したり。


「まるで絵に書いたみたいですね。」

「こっちからは初めて見ましたー。」

「この鳥は酒に合うのう!」

「さすがに食べ過ぎたな…。」


 午後はダン待望のウイスキー工場の見学に向かう。ダンは数ある酒の中でも特にウイスキーがお気に入りで、ルドの成人祝いに飲ませたかったらしいが、日本では酒は20歳からと聞いてがっかりしていた。


「成人したなら飲んでもよかろうもん…。」

「その気持ちだけで、充分である!」


 気を取り直して、ルドの成人祝いで盛り上がろう。宿に着いて風呂に入り、さっそく宴会場に向かう。


「まず社長から開会の挨拶お願いしますー。」

「えー、この度はゴールド君の成人祝いと迷宮攻略記念旅行にご参加いただき……。」


 事前に考えておいた無難な挨拶を終えて乾杯。つまらないとか言うんじゃない、さくら。


「では、続いてゴールド君から挨拶してもらいましょー。どうぞー!」

「むっ!吾輩の番であるか?」

「頑張って!ルド君!」


「……吾輩は幸せ者である。村のみんなや、この世界で出会った人達みんな優しいのである。」


 ルドと初めて会った時の事を思い出す。あの時から自分は余裕がなくて、ずっと頼りきりだったな。


「未熟な吾輩が、こんなにも素晴らしい毎日を過ごせているのは、今日までに出会ったみんなのおかげである。」


 ルドの真っ直ぐな性格や何事にも誠実な姿勢に、自分はどれほど助けられ背筋が伸びた事か。


「みんなへの感謝の気持ちを忘れる事なく、恩返しできるように全力で努力する所存である!」


 ルドはこれからも多くの人から信頼され、真っ直ぐに成長していくだろう。


「そしていつか、みんなのような立派な大人になるのである!」


 朝日が見えた。暗闇に決して負けることなく、力強く全てを明るく照らしていく。そんなイメージが浮かんだ。

 撮影スタッフや宿の従業員を含め、全員が拍手を送りルドの成人を祝福している。誇らしくて少し寂しい、…父親ってこんな気分なのかもしれない。


「これは、大さんと社長交代もアリですね♪」

「ふふっ、そうですね。」

「革命じゃな!ルド坊!」

「下剋上ですー。」

「ちょ!泣かないで下さいよ大さん!」

「みんな冗談を言っているだけである!吾輩その気はないである!ダイ殿!」


 もちろん分かってるよ、本気にしてるのはさくらとルドだけだ。


「感動に水を差すような事を言わないでほしいな。ちゃんと空気読め、さくら。」

「えぇっ!私のせいですか!?」

「そんなんじゃ、新しい職場で苦労するぞ。」

「いきなりクビなんて酷い!」

「職権乱用である!」


 一気に騒がしくなり、ダンは飲み過ぎだとか社長はもっとしっかりしてほしいとか、笑いながら文句を言いあう。こっちの方が自分達には似合ってるな。


「そんな事よりルド君に成人のお祝いですー。」

「みんなで選んで買ったんですよ。」

「社長から渡してやれ!ほれ!ダイ坊!」


 ワチャワチャしながらも、高級そうな箱をルドに手渡す。


「開けて良いであるか?」

「もちろん。」


 箱を開けたルドの目が輝く、中身は銀の懐中時計だ。ルドルフ将軍の逸話に銀の懐中時計の話があり、成人祝いとしてもふさわしい品。


「ふおぉぉ!家宝にするのであるぅ!」


 ルドは時計を両手で高く掲げ、興奮からか変な声を上げている。こんなルドは初めて見た、どうやら心から喜んでいるらしくて嬉しい。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ