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53話

 まずはさくらの位置を特定して、崩れないように瓦礫をどかして、それから治療してもらう!


「いた!さくら!!」


 さくらはすぐに見つかった。だが意識がないのか声をかけても反応がない。次は瓦礫だ!どれから退かすのが良い?山になった瓦礫をぐるりと一周して考えるが分からない。

 クソッ!伊藤さん達がいれば!いなくてもやるしかない!


「まずコレを退かす!そっちを持って!」


 しまった!ダンを呼べば良かった!落胆が顔に出たのか、エマさんが強い眼差しで近づいて来る。


「まずは落ち着いて。私達が冷静にならなきゃ助けられません。」


 両手で自分の顔を挟み、真っ直ぐに目を見つめて言う。むにっとされた自分は強制的にアヒル口のまま頷く。


「邪魔な瓦礫を亜空間に収納して、それから救急箱を出して下さい。」


 そうだ、自分には異能がある。また焦って冷静じゃなくなっていた。


「大丈夫です。きっと助けられます。」

「はい。」


 さっきはさくらに助けられて、今はエマさんに救われた。ルドもダンもベルも戦っている、皆で生きて帰るんだ。

 深呼吸をして瓦礫を睨み集中する。邪魔な瓦礫を収納して救急箱を取り出し、浮き彫りになったさくらの様子に息を呑む。

 さくらは文字通り血の海に沈んでいた、うつ伏せで呼吸もしていない。


「ダイ君は心肺蘇生を!」

「はい!」


 奥歯を噛み締め、震える手を握り、止まった足を動かす。


 体をひっくり返して気道を確保し、ナイフで服を切り裂いてAEDのパッドを貼り付ける。心電図が表示されて自動で電気ショックが行われ、心臓マッサージと人工呼吸を交互に繰り返す。


 服が血で赤く染まっている。⋯自分はなぜ距離を取れなんて言ったんだろうか?

 顔色がいつもより白い。⋯いや、そもそもなぜ守護者に挑戦したんだ?

 口に息を吹き込む、まだ温かい。⋯1度帰って作戦を練っていれば。


 心肺蘇生を繰り返す間に頭に浮かぶのは、口に出したら泣いてしまいそうな後悔ばかり。

 油断するなと散々言っておきながら、調子に乗って準備もせずに強敵に挑み、自分ならまだしも仲間を⋯。


「⋯死なないでくれ。」


 涙と一緒に我儘が零れる、自分が殺したようなものなのに。


 妹のように思っていた。負けず嫌いで努力家で、生意気だけど憎めない。才能に恵まれていても、思うように前に進めない事に悩んで。涙を流しても、きっと前を向いて進むんだろう。


「⋯死なせない。」


 ⋯落ち着いてと言われたばかりなのに、ムカついてきた。どうしても自分を許せない。頭に血が上り体が熱くなってくる。

 死なないでくれ?ふざけんなよ。自分が殺したようなものなのに?俺が調子に乗ってこんな事になったんだろうが!いつまで後ろ向きなんだ!考えろ!何とかしろ!


「絶対に死なせない。」


 乱暴に涙を拭い決意を口にする、何かスイッチが切り替わった。頭がすっきりする、今なら何でもできる気がする。

 そして唐突に閃いて思わず口角が上がる、心肺蘇生と回復魔法と強化魔法の合わせ技。さくらを自分の体の一部に見立てて生命力を高める。


「戻って来い、さくら!」


 原因を作った俺が言える立場じゃないが、お前はこんな所で死ぬ人間じゃない。この迷宮を攻略したら歌手活動を再開して多くの人に歌声を届けるんだ!


「サクラ殿!吾輩、こんな別れは嫌である!」

「サクラ!こっちはもうすぐ終わるぞ!いつまで寝とんだ!」


 離れた位置からルドとダンの声が聞こえる。ベルもきっと同じ気持ちだ。


「治療は全て終わりました。戻って来て!サクラちゃん!」


 エマさんはできる事は全てしてくれた。


「あとはお前だ、さくら!死ぬな!」


 俺達だけじゃ足りない!お前がいなきゃ駄目なんだ!


 何度目かの電気ショック。弱々しいが間違いなく心臓が動き出した。胸が上下して呼吸をしている。


「さくら!」

「サクラちゃん!」


 久しぶりに、本当に久しぶりに声を上げて泣いた。ここが迷宮だと忘れて、何も見えなくなる程の大粒の涙を流して、喉が枯れる程の大声で泣いた。


「良かった…、本当に良かった…!」

「サクラちゃん…。」

「2人共!まだ戦闘中である!」

「いつまでイチャイチャしとんだ!」


 ハッとして周りを見回す。気付くとその場に座り込み、すすり泣きしながらエマさんと抱き合っていた。嬉しさと感動でおかしくなってたが、さくらは大丈夫か!

 …良かった。さっきと変わらず心電図も呼吸も大丈夫だ。


「…ぐすっ。サクラちゃんは出血が多くて危険な状態です。すぐにでも病院に連れて行かないと。」

「…その為には、防火シャッターを抉じ開けるより守護者を倒した方が早そうですね。」


 エマさんはさくらをお願いします。そう言って立ち上がり、3人に合流する。すでに守護者は片腕を失っていて、あとは魔石を掘り出すだけだ。


 魔石を見つけ出し回収すると、守護者は動かなくなる。そして周囲を観察すると、部屋の中央付近に力が収束し始めた。

 キラキラと輝きながら半分に割れた球体が現れ、コロンと床に転がる。


 よし!もうすぐだ。もう少しだけ待っていてくれ!




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