52話
火の精霊に頼んでロケット花火で攻撃開始!妨害ではない本気の攻撃が2人を追い越してゴーレムに襲いかかる!
ロケット花火が鎧の隙間に入り、火柱が天井まで燃え上がる。どうだ!ハッタリゴーレムの時はこれでほぼ決まりだった。岩でできたゴーレムだろうとダメージは大きいはず!
予想に反して動きが鈍くなっただけのロックゴーレムに驚きつつも次の指示をだす。
「エマさんはダンの治療を!2人は敵の気を引いて!余裕があれば関節を攻撃!」
先手を取られるなんて思ってもいなかった。どうする?近付いて自分とダンで攻撃するつもりだったが、ダンはまだ動けない。
精霊の攻撃も決定打にはならなかった。ルドとさくらの攻撃は効果が低そうだし、エマさんはダンの治療中。ベルの矢も岩には効かないだろう。
つまり自分だ、自分がなんとかしないと。ゴーレムは元々動きが遅い上に今は鈍くなっている。大丈夫だ、振動を溜めて叩き込め!
ルドとさくらと自分でゴーレムを囲んでエマさん達が狙われないように気を引いているが、自分が集中的に狙われている。当たれば即死の大振り攻撃は避けやすいが、反撃する程の余裕はない。
自分が死ねば召喚状態が維持できなくなり、さくらが1人になってしまう。そうなれば絶望的だ。
何かないか?亜空間内に使えそうな物は?あっても取り出す暇がない。この部屋には柱がある。その後ろで⋯、駄目だ。ゴーレムの攻撃で簡単に折れそうだ。
舌打ちして冷や汗をかきながら、瓦礫に足を取られないよう攻撃を避けて、激しく後悔する。何で挑戦した!準備不足にも程がある!
冷静な部分とそうでない部分が、まるで壊れたスイッチのように激しく切り替わる。そんな事を考えている暇はないのに集中できない。
ルドとさくらが何か言ってるが頭に入らない。なんだ?どうした?もっとはっきり言ってくれ!
ゴーレムの大振りな攻撃の合間を縫って、さくらが自分に突っ込んで来た。ダメだ!来るな!危険だ!
スローモーションに見えたさくらに突き飛ばされて仰向けに倒れ、ゴーレムとの間に距離ができる。
「大さんは囮になって下さい!コレは私が!」
さくらは自分を引き起こし、ひったくるように片口スパナを奪いゴーレムの後ろに回る。どういう事だ?
「ダイ殿!避けるのである!」
太い腕が振り上げられ、自分に向かって振り下ろされる。精霊のダメージのせいか狙いが大きく逸れたおかげで避けられた。
その隙に、さくらが後ろからガンガンと音を立ててゴーレムを叩いている。そういう事か!
焦りで冷静さを失っていた、自分1人で戦っている訳じゃない。今はダンが復帰するまで時間を稼ぐ、回復魔法を意識して呼吸を整え声を上げる。
「すまん!みんな!もう大丈夫だ!」
「無理しないで下さいね!」
「ここから反撃である!」
準備不足はどうにもならないが、どうにかするしかない。さくらのおかげで戦況は安定した、自分は回避に専念して、さくらが攻撃しつつ振動を溜める。ルドは瓦礫の中から手頃な棒をゴーレムの関節に突き込んでいる。さっきゴーレムの攻撃が逸れたのはルドのおかげだったのか。
「遅くなりました!」
「待たせたのぅ!」
ゴーレムの標的がルドとさくらにも分散し始めた頃、エマさんとダンが戦線に復帰した!ダンはゴーレムの膝を砕く勢いで斧を叩きつけ、少し離れた位置からはエマさんが魔法で支援してくれている。
⋯コイツ、なんでダンを無視してるんだ?エマさんはともかく、ダンはかなりの脅威のはずだ。ヘイト値ってヤツか?
「ダン!なんでゴーレムに狙われないんだ!」
「ゴーレムは!バカだからよぅ!目立つヤツを!優先すんだ!」
⋯なるほど、たぶん当たりだ。以前エマさんが言っていた事を思い出す、ゴーレムは命令通りに動く。だから最初は自分だけを狙って、今はダンを無視している。
「さくら!ダンにスパナを渡して距離を取れ!ダン!全力で振動を叩き込め!」
「はい!」
「まっかしとけぃ!」
これが正解のはず。精霊の攻撃で気を引くとゴーレムがこちらを向いた。さくらがダンにスパナを渡して柱まで後退する。
「だぁおりゃあ!」
読み通りにダンを無視し続けるゴーレムに、渾身の一撃が炸裂する!大きな鐘を叩いたような低い音が響き、ゴーレムの右足が砕けた!
「よしっ!」
「やったぁ!」
「お見事である!」
バランスを崩し立ち上がれないゴーレムは、その場から動けずに腕を振るだけ。と思ったが自身の足を掴み、武器のように振り回し始めた。慌てて距離を取り様子を見る。
何が起きても良いように構えていると、ゴーレムは足を放り投げ柱をへし折った。それと同時に支えを失った天井から瓦礫が降ってくる。
「サクラちゃん!」
不幸中の幸いか、崩れたのは天井の一部だけ。だが、さくらは悲鳴を上げる暇もなく瓦礫に埋もれ、姿が見えなくなってしまった。
止まりかける心臓と忘れかける呼吸を無視して叫ぶ。
「エマ!俺と来い!さくらを助けるぞ!ルド!ダン!ベル!3人でゴーレムを!」
どうしたら良い?正解なんて分からない。生きていてくれ、さくら!




