51話
それがメイジの声だと気付いたと同時に、左太ももから高い音が鳴り相手の顔に向けてロケット花火が飛んで行く。
だがロケット花火が届く前に、メイジの喉にベルが操る矢が突き立った。一瞬遅れて花火が鳴るとメイジは膝から崩れ落ちる。
「⋯終わったか?」
「おう!楽勝じゃったな!」
「吾輩達の敵ではないのである!」
「ベル君、凄い!」
「いつもありがとう。ベル君。」
「ナイスフォロー、ベル。みんなも良い連携だった。」
ベルはいつも通り恭しくお辞儀をしている。戦闘が終わるまで数十秒の圧勝劇だった。
「これからどうしますか?大さん。」
時間も体力もまだまだ余裕、この迷宮が地下9階までだったとして普段通りの時間に帰れるだろう。
「もちろん先に進む。みんな油断しないようにな。」
「じゃあ、ここからは先頭交代だね。」
「頼むのである。サクラ殿。」
反響音で探査すると、地下6階は複数の部屋が通路で繋がっている作りで下り階段は3つ。比較的近い西側に2つ、離れた東側に1つある。
地下7階も同じような作りで、下り階段は2つある事が分かった。ただし東西が壁で分断されていて西と東に1つずつ。
「西側の階段から下りますか?」
「そうですね、こういう道順で地下8階まで行ってみましょう。」
「飛ばすなよ!サクラ!」
簡易地図をなぞりながら、効率良く全ての部屋を回れるルートを指定して出発。全ての部屋に毎回編成が違う3〜4体のゴブリンがいるが、連携もなくバラバラに襲ってくるだけで苦も無く倒せる。
地下7階では少しだけ手強くなった気がするが、誤差の範囲だろう。すぐに地下8階に到着。
「こっちはたぶん外れかな?」
「おそらく行き止まりである。」
さっさと地図を埋めて引き返す。新しい魔物もいないし魔道具も落ちてない、無駄足だったな。帰りは行きとは違う道順で地下6階の東側の階段へ向かう。
道中、何度となくゴブリンと戦う。⋯ゴブリンを倒す度に魔石を回収しているが、面倒になってきたな。何か良い方法はないだろうか?
そういえば、今は機械や油を回収して売っているから金に困らないが、他の迷宮を探索する時はどうしよう?何か回収できる物があれば良いが、魔石や魔物由来の素材が売れるようになるには時間がかかるはず。
政府が自分達に探索を依頼するという話だったが、依頼料はいくらになるんだ?好きでやってるとはいえ、命がかかってる訳だし⋯。
「おっと。」
「バテましたか?大さん。」
「少し休んだ方が良いのである。」
ホブの攻撃がかすめたが反撃で倒す。つい考え事をしてしまった、ちゃんと集中しないと。
「まだまだ。若い者には負けないよ。」
そう言って笑いながら東側の階段を下りて地下7階へ、出てくるのはゴブリンばかりで飽きてしまった。花火を使うまでもなく、考え事をしていても大丈夫。
この分だとボスもゴブリンで、合体ゴーレムもどきの時のように楽勝かもしれない。それはそれでアリだがイマイチ張り合いがないな。
⋯今日中に攻略するか?時計を見るとさっきの無駄足の分だけ余計に時間がかかっているが、これくらい許容範囲内だろう。さくらは絶好調だし、皆も調子が良さそうだし。
8階の探索が終わったら提案してみるか。そんなふうに考えていると、さっそく下り階段を見つけた。
「どうしますか?大さん。」
「行こう。少なくとも地下8階までは地図を完成させよう。」
地下8階に下りて反響音で探査すると、この階も地下7階と同じ作りで下り階段は1つ。地下9階は広いだけの空間だと分かった。
「⋯終わりが見えましたね。」
「もうすぐである。」
「はい、おそらく次の階に残りの迷宮核と守護者がいるんだと思います。」
守護者?エマさんの説明では、場所や鍵を守っているのが門番で、迷宮核を守っているのが守護者なんだそうだ。
「守護者なんぞ、儂らにかかれば楽勝よ!だっはっはっ!」
「油断大敵だぞ、ダン。」
地下8階は広くない。瓦礫に埋もれて入れない部屋がいくつかあり、すぐに全ての部屋を回って階段に辿り着いた。地上9階の時と同じように踊り場から様子を伺うと、通路の先に部屋があり中央に瓦礫に囲まれたゴーレムがいた。
「予想外ですね。」
「ゴブリンだと思っていたのである。」
「まさかハッタリゴーレムじゃないよな。」
「ありゃロックゴーレムだな!今までのゴーレムより強ぇぞ!」
「どうしますか?ダイ君?」
皆の視線が自分に集まる。
「やろう。今日でこの迷宮を攻略する!」
ハッタリゴーレムの時と同じ手順で攻める。階段を下りて地下9階に足を踏み入れると防火シャッターが閉まった、今度は焦る事なく盾を構えたダンを先頭に通路を進む。
ダン、自分、ルド、さくら、エマさんとベルの順で進んで行くとゴーレムに動きがあった。
「やべぇぞ!」
焦るダンの大声と直後の衝突音、そして吹っ飛ばされて自分にぶつかるダン。ダンは盾で頭を打ったようでフラフラしている、いったい何が起きた!
ゴーレムは周囲の瓦礫を掴んで投げつけたようだ。まずい!ここは真っ直ぐな通路の途中で逃げ場がない!
「ルド!さくら!行くぞ!」
自分の声と同時に2人が走り出す!




