47話
「今日は南側から入って地下を探索する。いつも通り油断せずに行こう。」
ダンを召喚して3日目。昨日はダンの健康診断と検疫検査をした後、実力を見せてもらい問題なしと判断した。むしろ自分達より戦い慣れていて探索経験も豊富だった。
エマさんには及ばないが魔法が使えるし、道場ではルドとさくらに勝って山本さんを驚かせていた。
一方2人は酔っ払いに負けた!と悔しがり、必ずリベンジすると息巻いている。自分もリーダーとして恥ずかしくないよう頑張ろう。
対策本部から工場を迂回して南側から迷宮へ、地図を作りながら地下へ下りていく。出てくる魔物はいつも通りで自分達の敵じゃない。
「こちら側は分岐が少なくて簡単ですね。」
北側と比べてこっちはほぼ一本道だ、たまに分岐があってもすぐに合流する。あっさりと地下3階に到達した。
「ダイ坊!振動は溜まったか?」
「ん?⋯⋯許容量の半分くらい溜まったと思うけど、どうしたんだ?」
「なら、この柱叩いてみろ!」
そう言ってダンは構造体の金属の柱を指差す。⋯なるほど反響音でより遠くまで把握するって事か。
「了解。ルド、さくら、準備は良いか?」
説明しなくても2人共頷いた。それを見て自分は長く遠くへ響くように振動を柱へ送り込む。それなりに大きな音が、ずいぶん遠くまで響いている。
「この先は5階で行き止まりである。」
「うん、隠し通路とかもなさそう。」
凄いな、そんな事まで分かるのか。感心しつつも今後の予定を考える。
「よし、今日は地下5階まで地図を作ろう。時間に余裕があれば門番の様子を見に行く。」
「戦うのであるか?」
「いや、作戦を立てる為に見るだけにしよう。」
地下5階へ移動する間、これまでと変わらない魔物達を倒す。新しい魔物は出てこないが、既存の魔物が強くなってる気がする。
「同じ種でもマナの影響で奥にいる魔物の方が強くなります。」
「個体差が出る事もあるのである。」
「んー、前に言ってたゴブリンメイジとか?」
すでにホブは出てきてるし、メイジとかアーチャーとかが出てくるかもしれない。⋯飛び道具は困るな。自分とダンは盾を持っているが、3人は避けるか叩き落とすしかない。
対策を考えながら探索し地図を完成させて、ちょうど昼食の時間になった。
「ルド坊!お前ぇこれ、刃引きしてあんじゃねぇか!儂が研ぎ直してやる!」
「吾輩はまだ未熟だから、これで良いのである。成人したらダン殿にお願いするのである。」
「おう!そん時ゃ任せろ!ついでに酒も教えてやる!だっはっはっ!」
ルドの剣は剣の形をした鈍器だ、先端が尖っているが刃は付いてない。ゴブリン程度は問題ないし、ゴーレムが相手ならその方が都合が良いんだそうだ。
ちなみにダンの斧も刃はない、重さで叩き斬る為に頑丈さを優先しているそうだ。自分は長く大きな片口スパナ、さくらとエマさんは杖を持っている。全部凶器だが警察に届出済だから問題ない。⋯1ヶ月前なら考えられないな。
「ルド君、いつ頃成人なんですか?」
「来月である。」
「じゃあ、お祝いしないと!旅行行きましょう!大さん!」
「そいつぁ良いな!取っておきを飲ましてやるぞ!ルド坊!」
「そうだな。ルドの成人祝いと迷宮攻略記念、一緒にやろう。」
温泉とかゴーカートとか酒とか夢の国とか色々言ってる。このメンバーなら何をしても、どこに行っても楽しいだろう。モチベーションも上がった事だし、午後も頑張って行こう。
以前は辿り着くだけで半日近くかかっていた門番までの道のりも、エマさんの魔法のおかげで半分くらいに短縮できた。
久しぶりに見た門番ゴーレムは相変わらず見上げる程の巨体に立派な鎧姿で存在感を放っている。こちらが見えているはずなのに微動だにしない。
「さて、何か良い方法はないかな?」
「良い方法も何もダイ坊、ありゃ大した事ねぇぞ!」
「そうなのであるか?」
「でけぇだけだ!鎧も見かけ倒しだしな!」
「うそ、あんなに強そうなのに。」
ダンの説明によると、たまにハッタリゴーレムがいるんだそうだ。立派な鎧を着て堂々としているがそれだけ。大きいから打たれ強く重いから攻撃力もあるが、動きが遅すぎてカモなんだそうだ。
「そんなゴーレムがいるんですね、びっくりです。」
「そんなに弱いなら攻撃してみようか?」
まず敵が行動を始めるギリギリまで接近して、自分が火の精霊の力を借りて攻撃。その後ダン、ルド、さくらが囲んで攻撃する。自分とエマさんとベルは待機して不測の事態に備える。
手順を決めて行動開始。精霊はひゅるんと飛んで行き鎧の隙間に飛び込んで、一気に天井まで燃え上がる。
「おぉっ!」
「わゎっ!すごっ!」
ゴーレムはバランスを崩して倒れ立ち上がれないまま、走り寄った3人があっさり倒してしまった。ゴーレムが弱いというか精霊が強過ぎるな。
「だっはっはっ!やるな!ダイ坊!」
「勝ったけど不完全燃焼。」
「物足りないである。」
「怪我がなくて良かったじゃないですか。」
エマさんの言う通りだが、肩透かしを食らった気分だ。ダンが加入して初めての探索は成功なんだが、イマイチな気分で自分達は帰路に着いた。




