46話
「あ、その子なら捕まったよ。」
「は?捕まった?もう?」
思わず素っ頓狂な声が出た。渡辺さんに事情を説明し相手の特徴を説明すると、何でもない事のように言われた。
この辺りをウロウロしている所を通報され、話しかけた警察官に怪我をさせて現行犯逮捕されたらしい。
「ぷふっ。」
「拍子抜けである。」
「間抜けな奴じゃな!だっはっはっ!」
「ホントに馬鹿な事したもんだよ。何考えてんだろね?全く。」
「笑っちゃだめですよ、サクラちゃん。」
「だって大さん、カッコつけてたし。」
「それは言わないでくれ、さくら。」
さっきまで真面目な雰囲気だっただけに、スタッフも含めて堪えきれずに笑っている。君に計画性はないのか、高校生君。おかげで自分まで笑われているぞ。
恥ずかしさで赤くなった顔を誤魔化す為に、思案顔で静かにしている美咲さんに話しかける。
「どうしたんですか?」
「どうして逃げなかったのかと思いましてー。」
言われてみれば確かに。通報した人はどうして気付けたのか?その時は力を使ってなかった?だとしても力を使えば警察官から逃げられたのでは?
「まぁいいじゃねぇか!んな事より腹減っちまった!」
「そうですね、今日は腕によりをかけて作りますー。」
懸念がなくなって嬉しそうにパタパタと台所に向かう美咲さんを見送り、渡辺さんに聞いてみるが詳細までは分からないそうだ。後日、改めて聞いてみよう。
そして賑やかな日常に戻った。さくらとエマさんは美咲さんに料理を教わり、ルドは新しく加わったダンにテレビの事を教えている。
誰かが欠けるような事にならなくて良かった。
「あ、そうだ!あとで大さんに話があります。」
「そうでしたー。」
「覚悟しておいて下さいね、ダイ君。」
なんだ?覚悟?全く心当たりがないんだが、何の話をされるんだ?
「何をしたのであるか?ダイ殿?」
「おいおい、ダイ坊も隅に置けねぇな!」
「いや、冤罪だ。怒られるような事は何もないぞ。」
慌てて否定するが、女性陣は笑っていて何も教えてくれない。今日は朝からイベント続きなんだ、厄介事は勘弁してくれ。
スタッフを見回すが何も知らないようだ、⋯いや、女性スタッフは知ってそうだが教える気はないようだ。
何を言われるのか戦々恐々としながら夕飯を待ち、皆にイジられながら賑やかな夕飯を食べる。順番に風呂に入って身を清め、リビングに全員が揃う頃には覚悟を決める。
大丈夫だ。何でも来い。
「さて、大さん。何か心当たりはありますか?」
「隠してもムダですよー。」
「正直に話して下さいね、ダイ君。」
「何もありません。自分は潔白を主張します。」
ダイニングに移動して正面にさくらが座り、その隣にエマさんと美咲さんか座る。リビングからはルドがハラハラ、ダンがニヤニヤしながらこちらの様子を伺っている。
「嘘つかないで下さいね、大さん。」
「話すなら今のうちですよー。」
「魔法で調べる事もできますよ。」
「3人が何の事を言ってるのか分かりません。」
ニコニコしながら堂々と答える。これはあれだ、揺さぶりをかけてボロが出るのを待っている状態だ。
「ノリ悪いです、大さん。」
「つまんないですよー。」
「ごめんなさい。ダイ君。」
「おじさんの経験値を舐めすぎだね、3人共。」
「だっはっはっ!今回はダイ坊の勝ちだな!」
「⋯どういう事であるか?」
ルドに説明するとズルいのである!と3人にお説教を始めた。反省するがいい3人共。
「さて、そろそろ何の話か聞いていいか?」
ルドのお説教が一段落したところで本来の目的を聞いてみる。すると思いもよらない答えが帰ってきた。
「せっかく若返ったのに勿体ないですよ。大さん。」
伸び放題の髪とかヨレヨレのシャツとか、もっと身だしなみに気を使うように言われた。
「という事で、私達からプレゼントですー。」
女性陣3人からベルを含め男性陣4人に香水をプレゼントされた。ちょっと待った、こっちは何も用意してないぞ。
「良かったら使って下さいね。」
「⋯ありがとうございます、大切に使います。」
「吾輩も身だしなみに気を付けるのである。」
「こりゃ、あとで何か返さんとな!」
身だしなみ。⋯面倒くさいが仕方ない、もう少し気を使うか。
改めて鏡で自分を見る、シミやシワもないし20代で通用する顔。背は少し伸びたか?
メガネはもういらないか。若返って視力も回復し裸眼で問題なく見える。あとで視力検査してこよう。
髭というかムダ毛はない。数年前に剃るのが面倒になって脱毛して、それ以来マメに家庭用脱毛器を使っている。
髪は短い方が清潔感があって良いらしいが、マンバンヘアに憧れて伸ばしてるんだよな。
あとは服か、もう何年も買ってない気がする。元々ファッションに興味がなくて、インドア派だから服が長持ちするんだよな。
「せっかくイケメン予備軍なんだから、頑張って下さいね。」
「磨けば光りますよー。」
「楽しみにしてますね。」
「おだてても大したお返しはできないよ。」
自分はテレビに出る事もあるし、印象を良くする為にもう少し気を使うか。




