40話
「ふっふっふ。しょうがないですね。」
「何も言ってないよ、さくら。」
「目を見れば分かります、返り討ちにしてあげますよ。」
やれやれ仕方ないな、相手をしてあげよう。まだまだ子供だな、さくらは。
「む?2人共どうしたのであるか?」
「負けられない戦いが始まるのよ!」
「この挑戦、受けて立とう。」
2人して変なスイッチが入っているが、たまにはこういうのも悪くない。せっかくの休日、自分達だって楽しまないとな。
それに、3連敗で傷付いた名誉を挽回するチャンスだ。
「じゃあ、私達は応援してますー。」
「怪我をしないように気を付けて下さいね、2人共。」
自転車レース勝負の結果は3連勝。さくらも善戦したが自分には敵わない。自転車には自信があるのだよ。
「くっ、次こそは!」
「吾輩も練習して参戦するのである!」
「挑戦を待っているぞ、2人共。」
残念だが移動する時間だ、次は動物園だったな。数十種類の動物がいて、乗馬や餌やり体験ができる。それにホワイトタイガーの赤ちゃんが公開されたばかりだ。
動物を見る前に園内の広場でお弁当を食べる。必要な物は自分の異能で取り出すが便利だな。亜空間内は時間の経過がないし、重さも感じないから保存や運搬に最適だ。
午後は動物達を見て回る。色々な動物に見て触れて、驚いたり感激したりしながら過ごす。
「大人しくて可愛いですね。」
「きっと立派な戦士になるのである。」
「ヤバい!エモい!」
「癒されますー。」
「絵になるなぁ。」
エマさんがホワイトタイガーの赤ちゃんをあやしているのを、ルドとベルが覗き込んでいる。
神映像だな、後光が差しているように見える。動物園のご厚意に心から感謝しよう。
すやすや眠る虎の赤ちゃんを後にして、併設された遊園地ゾーンに移動。低年齢向けのアトラクションだからルドの身長でも問題ない。
ジェットコースターや観覧車といった初めて見る遊具に興味津々で楽しんでくれているようだ。
「負けないのである!」
「甘いよ!ルド君!」
「2人共、速いですー。」
今度はゴーカートで勝負しているが、さくらとルドが速い。意外と美咲さんも良い勝負していて、運転に慣れてないエマさんが4番手。自分は体重差のせいで勝ち目がない。半周遅れで惨敗だ。
「1位!」
「あと一歩だったのである。」
「さくらちゃん、大人げないですー。」
「残念でしたね、ダイ君。」
「体重別階級制度を導入しよう。今の勝負はフェアじゃない。」
「負け惜しみですね、大さん♪」
その後も定番のメリーゴーランドやコーヒーカップ等、ひと通り遊んでから遊園地を後にする。
童心に帰って時間を忘れて遊び、レストランの予約時間のギリギリになってしまった。
「乾杯の挨拶をお願いします、社長ー。」
「⋯えー、今日は色々記念パーティーという事で楽しんでもらえましたか?自分も含め楽しんでもらえたようで何よりです。」
人前で挨拶なんて苦手なんだが、こんな時じゃないとなかなか言えない事もあるからな。
「この世界に異変が起きてみんなと出会い、賑やかで充実した毎日を過ごしています。ありがとう。」
止まっていた時間が、流されるだけの毎日が動き出した。そんな気がしている。
「今も世界中で大変な事が起きていて、きっと自分達も大変な思いをするでしょう。」
不謹慎と言われるかもしれないが、自分の意思で生きている実感がある。
「でも皆と一緒なら大丈夫。そんな会社を、関係性を皆で作って行きましょう。」
1日でも長く今を続けていたい、まだまだ迷宮を味わい足りない。
「最後にパーティーを提案してくれた美咲さん、ありがとうございました。では乾杯。」
「どういたしましてー。」
「なんか締めの挨拶っぽくないですか?」
「確かに開会の挨拶としてはちょっと不思議でしたね。」
「良い挨拶だったのである!」
「⋯続きまして、さくらさんから一言。どうぞ。」
「聞いてないですよ!大さん!」
明日に悪影響が出ない程度に飲んで忘れて下さい⋯。
料理が運ばれてくれば、自分の挨拶の事なんか忘れて賑やかに騒ぎ出す。科学館、動物園、遊園地、どれも異世界には無いもので3人は貴重な体験ができたと喜んでくれている。
美咲さんは久しぶりに見たプラネタリウムが綺麗だったから婚約者と見に行きたいと言い。それを聞いたさくらは嫉妬しているフリをしている。
ルドが自転車に乗ってみたいと言えば、エマさんは馬に乗るより難しそうと困り顔。
自分は乗馬経験はないが、バイクの免許を持ってる事を話すと今度はそれぞれの趣味の話で盛り上がる。
ベルが超能力を披露しエマさんが種明かしすれば、知らなかったさくらと美咲さんはズルい!すごい!と大盛りあがり。
ルドとベル以外は酒を飲んで、楽しい時間は瞬く間に過ぎて行った。
「んー⋯。次は温泉旅行とか、本格的なテーマパークとかも良いね。」
「良いですね!両方行きましょう!」
「温泉!素敵ですね!」
「次は勝ってみせるのである!」
「今から調べておきますー。」
いつになるか分からないが、どこかの節目で行きたいな。そんな事を考えながら帰路についた。




