39話
「どうしたんですか?大さん。」
後ろを歩くさくらに話しかけられて我に返る。前を行く3人も振り返り、自分の様子を伺う。
「あー⋯、突然だけど火の精霊と契約できた。」
「は?いつの間に?」
全員気付いていなかったようで驚かれた。異世界人3人は称賛してくれたが、さくらは分かってないようだ。詳しい事は帰ってから説明しよう。
「⋯という事で、精霊の力を借りられるのは大変な事なんですよ。」
無事に家に帰りついて今は反省会中。エマさんが自分に代わってさくらに精霊について説明している。
「じゃあ、迷宮を吹っ飛ばすとかできるんですか?」
「それは無理だな。力の一部を借りてるだけだから、そこまではできないよ。」
精霊が本気で力を奮えば可能だろうが、今の自分では不可能だ。マナを吸収して成長し続ければ可能になるのか?
「でも敵に攻撃したり熱気を和らげたり、自分の努力と想像力しだいで色々できそうだ。」
川で感じた力の流れを辿って行けば水の精霊に出会えそうだし、今後は契約できそうな精霊を探すのも良いな。
エマさんには鍵の精霊をおすすめされた。召喚や異能、まるで扉を開くように外側と繋がる力を持っているからだそうだ。なるほど、しっくりくる。
他に話題に上ったのが感知魔法の代用魔道具。自分達は自力で靄スライムを攻略できるが、他の人達に同じ事はできない。虫取り網を振り回せば核を採れるが、さすがに効率が悪いだろう。
エマさんは材料があれば作れるし、作り方を教えてもいいと言ってくれた。
「ありがとうございます。」
「ふふっ。お役に立てて嬉しいです。」
こういう時、エマさんは本当に嬉しそうに笑う。優しくて面倒見が良く、誰かの役に立つ事が好きなんだな。
「どうしました?ダイ君?」
「いえ、エマさんの笑顔はいつも素敵だと思っただけですよ。」
「同感である。」
「うふふっ、ありがとうございます。」
さくらと美咲さんがコソコソ話で盛り上がり始めたが気にしない、そんなつもりじゃないしな。
反省会が終わってドワーフの話題になった、どんな人が来るか予想して盛り上がる。一般的なイメージは明るく陽気で大の酒好きとか、頑固で無口で職人気質とか。
女性ドワーフは子供のような見た目をしている。なんて話もあるが、ルドの住んでいた場所では長い髭を三つ編みにしたご婦人だったらしい。
⋯興味深い種族だな、ドワーフ。
「いつ頃になりますか?大さん。」
「さすがにまだ無理だな。」
今はルドとエマさんの召喚状態を維持していて、自分の力の半分以上が封印されている。ちなみにベルはエマさんの使い魔であり、体の一部のような扱いだから別。
2人で6割が封印されるとしたら、3人で9割が封印される計算になる。探索どころか日常生活に支障があるくらい負担が大きい。
「ただ、もう少しでって感じはあるんだよな。」
「あ、それ分かります。殻が破れる感じ。」
「レベルアップですかー?」
ちょうどそんな感じだ。もう少しで習得できそう⋯、できた!って感覚が割とはっきりある。
「ルド達も同じなのか?」
「同じである。剣も魔法もコツを掴んだ瞬間が分かるのである。」
「サクラちゃん達は今まで違ったんですか?」
「もっと曖昧だった気がするけど⋯。」
「初めて自転車に乗れた時、とかは分かりやすいか?」
「私、いまだに自転車乗れないですー。」
ワイワイと賑やかに話が逸れていく。話は尽きないが、あまり遅くなる前に寝よう。
「さて、今日の予定は⋯。」
朝食後のミーティング、最近はこれが当たり前になってきた。今日と明日は勉強とトレーニング。明後日はパーティーだ。
「ダイ君は感知魔法は十分なので、次に進みましょう。ルド君とサクラちゃんはもう少しですね。」
そうして始まった魔法の練習、自分は新しく強化魔法を教わる。これは内側の力を操り一時的に自身の性能を高める魔法だ。
気合を入れて練習を始めて、あっという間に時間が経ち⋯。
「駄目だ。全然分からない⋯。」
「大丈夫、良くなってますよ。あとはコツを掴めば覚えられます。」
美咲さんよりはマシだと思うが、それは比べる相手が間違ってるな。美咲さんは宝珠から魔法を授かってない分、力を認識する事から始めなければならない。迷宮でマナを吸収している訳でもないから、実に大変そうだ。
「前よりできた気がしますー。」
「その意気ですよ、ミサキちゃん。」
⋯負けてられないな。もう一度気合を入れ直して前向きに頑張ろう。
地道に前向きな努力を2日ほど続けて今日はパーティーの日。異世界人3人にこの世界を知ってもらう為に朝から遊びに行く予定だ。
この日を心待ちにしていた密着スタッフ達は、かなり気合が入っている。
科学館でプラネタリウムやサイエンスショーを見たり、ロボットや乗り物の科学を体験したり。子供向けではあるが説明が分かりやすい。
「そういえば、外に変わり種自転車があったな。」
「ありましたね。子供の頃に遊んだ憶えがあります。」
小学生の頃に姉弟や幼馴染と競争したのを憶えている。姉がとにかく負けず嫌いで弟と幼馴染はいつも泣いていた。
そんな事を思い出して懐かしんでいると、ちらりとさくらと目が合った。




