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38話

「酷い目にあったのである。」

「ごめんなさい。」

「ごめんなさいー。」


 今回は完全にスタッフさんとさくらと美咲さんが悪いな、ルドとベルはご立腹だ。

 河川敷に行っている間、異世界人3人を上手く丸め込んでコスプレ撮影会のような事をしていたらしい。

 自分が帰って来た時は女装させようとしていたし、次に同じような事があったら出入り禁止にすると言い渡しておいた。


「途中まではカッコよかったですよ。」


 エマさんのフォローと買っておいたデザートで機嫌をとって午後の予定をこなすが、2人の機嫌は完全には直らず山本さんにも心配されてしまった。


 そんな事があった翌日。今日は4回目の探索、地上6階より上を目指す。


「さて、準備はいいか?ここからは地図がない、注意して進むぞ。」


 移動用の魔法のおかげで地上6階まであっという間に到着した。移動の速度が上がり負担は減り、敵や罠には普段通りに気付く。

 改めてエマさんも魔法も凄い。だが自分も負けてない。


「エマさん、あの靄は敵ですよね?」

「ふふふ、感知の魔法はもう十分みたいですね。」


 工場内は大量の油を使う関係上、オイルミストが発生している。今までオイルミストだと思っていた靄が、感知の魔法によってスライムだと気付いた。


「そんなダイ君に質問です。倒し方は分かりますか?」

「試してみます。」


 ゆっくり靄に近付くが攻撃してくる様子がない、このスライムは待ち一辺倒なんだろう。

 弱点である核は見えないように隠し、呼吸によって自身を吸い込んで弱った獲物を倒すんじゃないだろうか?


 だが力や流れを感じ取れるようになった自分に、その戦術は通用しない。杖で核を叩き落とすと、すぐに靄が晴れて力を感じなくなった。


「お見事です。」

「ありがとうございます。」

「負けてられないのである!」

「どうやったんですか!」


 河川敷での体験を話すと、ルドとさくらは帰ったらさっそく行ってみる!と意気込んでいる。


「このスライムは練習相手にちょうど良いみたいだから、コツが掴めると思うよ。」


 注意すれば見えるし、触った感触もある。弱いし積極的に攻撃しない。感知魔法の練習相手にちょうど良い。

 練習をしながら魔物や罠にも注意して探索を進める。半日くらいで2人共コツを掴んだようだ。


 ルドとさくらは感覚が鋭く敵の接近に気付きやすい、仕掛けられた罠も簡単に見破れる。反響音や空気の流れで出入り口が分かり、感知魔法によって5感に頼らない知覚を手に入れた。向かうところ敵なし、本当に頼れる仲間だ。


「⋯しまった!せっかくのアドバンテージが!」

「アドバンテージを気にする割には熱心に教えてましたね。大さん。」

「同感である。」

「ふふっ。無理のない献身は良い事ですよ。」


 2人に教えるのが楽しくて、つい⋯。安全性が高まるのはいい事だと思う事にしよう。


 探索のペースが早くなり地上6階の地図が完成した。

 この迷宮は外から見る限り、ピラミッド型で地上9階まである。登るほど探索範囲が狭くなり、階段の数も減っている。6階の登り階段は2つだけ。

 このままなら、あと3回か4回で地上部分の探索が終わるんじゃないか?

 終わるのが残念な気もするが楽しみの方が強い。もし迷宮を攻略できたら何が起きるだろう?崩壊してその後は⋯。さすがに気が早いか、まだ地下も門番も残っている。


「帰りはこの道を直進であるか?」

「うん。その方が近道だから。」

「あの1番おっきい火柱の近くの道?」


 火柱を横目に1階中央付近を抜けて行くルート。火柱が邪魔で地図に空白地帯ができてしまい、怪しいと感じていた場所だ。

 帰り道、進むほどに暑くなっていく。まだ火柱まで距離があるのに気温が上がってきた、まるで熱気が怒鳴っているような気がする。


「大丈夫ですか?ダイ君。」

「少し頭がぼーっとします。」


 水分補給しながら違和感を感じる。⋯これは河川敷での体験に近い?

 エマさんに河川敷での体験や火柱について質問してみた。


「ダイ君は外側の力や妖精や精霊と相性が良いみたいだから、呼ばれてるのかも?」

「呼ばれてるって、幽霊みたい。」

「むぅ、実体がないのは困るのである。」


 さくらは怖がっているが、精霊と契約するチャンスなのかもしれない。悪い印象はないし、もっと近づいてから判断しよう。


「危険と判断したら全力で逃げよう。逃げるルートは⋯。」


 命あっての物種。チャンスを活かすのも大切だが、ピンチを減らすのも大切だ。準備を整えて進んで行く。

 とうとう1階に着いた、怒鳴るような熱気は鳴りを潜めている。暑いが我慢できない程じゃない、こちらを気遣って抑えてくれているのか?


 ⋯視線を感じる。人間とは違う知性ある存在からの友好的な意思表示。危険はないと思いつつも圧倒的な存在感に尻込みする。

 雄大な自然に目を奪われ言葉を失うような感覚に近い。山岳信仰の始まりはこんな感じなのかもしれないな。

 自分が何もできずにいると、向こうから語りかけてきた。以心伝心。言葉とは違う方法で考えが伝わる、どうやら自分は気に入られたようで無事に契約が完了した。




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