36話
さて反省会だ、今回は何と言っても魔石回収だな。スライムとゴーレムは核がそのまま魔石なので楽だったが、ゴブリンは⋯せめて手袋を良いものに変えよう。
次回の探索は地上6階。出てくる敵はスライムとグレムリンが最も多く、次がゴブリンとゴーレムもどき。
上に行くほどスライムとグレムリンの割合が増えていき罠も増える。常に靄がかかっていて視界が悪く、ガスマスク無しでは体調が悪くなる。
魔物よりも罠に注意が必要だが地図とガスマスクは貸してもらえるし、問題は移動時間の短縮かな?
「回復促進の魔法は習得したようなので、明日からは感知の魔法を練習しましょう。」
エマさんの提案で移動時間の問題もクリアできそうだ。それに自分の召喚魔法が上達している関係で、エマさんが移動用の魔法を使えるようになった。
「ダイ君の努力の成果ですね。」
「日に日に力が高まっているのである。」
ついでに疲労回復促進の魔道具について聞いてみると、お茶やベッド等の種類があると教えてくれた。
「お茶の作り方を公開してもいいですか?」
「良いですよ。お茶は比較的簡単に作れますし、イトーさん達も大変でしょうから。」
エマさんはベッドは作れないそうだが、ドワーフなら作れる可能性が高い。それを売りに出しても良いし、ドワーフ次第だが弟子をとって作り方を教えるのも良いだろう。
自分の考えを皆に説明した。
異変のせいで世界中で人手不足になっている、特に自衛隊や消防や警察といった安全を守る組織。今の状態が続けば必ず限界が来る、治安が悪化するのは危険だ。それを少しでも先送りしたい。
すぐに魔道具が公式発表されるし、有効な情報は出していくべきだ。自分達の価値が高まれば狙われる可能性も高まるが、国も自分達を保護するべく動くだろう。
だが自分達から魔道具に関する有効な情報を得るには、迷宮の探索による召喚魔法の上達が欠かせない。
つまり国は自分達に探索させて間接的に迷宮を管理すると同時に、召喚魔法の上達によって有効な情報を得る。代わりに自分達は自由な探索の権利と、不必要な干渉に対する抑止力を国から得る。そういう状況を作る。
危険と面倒は少なく、安全で自由な探索の為に頑張っていきたい。
「吾輩に異論はないのである!」
「ふふっ、もちろん私もです。」
「魔道具なんてびっくりですー。」
「大さんて、何も考えてないようで考えてますよね。」
よく言われる。賛成してもらえて良かった。このメンバーに反対されるとも思ってなかったがホッとした。
反省会を終えて美咲さんから質問と提案があった。
会社の退職手続きとギルドの名前をどうするか?ギルドを作るなら正式に会社を辞める必要がある。明日にでも上司に連絡して手続きを進めよう。
ちなみにさくらも会社を辞めるそうだが、美咲さんは辞めない。休業手当を貰いながら家政婦のバイトをした方がお得なんだそうだ、しっかりしてるな。
ギルドの名前は「佐藤探索事務所」で決定した。自分が社長で丸投げされた形だ。ネーミングセンスに自信がないんだが⋯、あとで変更できるらしいから良いか。
そして提案だが。
「いろいろ記念パーティーしませんかー?」
異世界人3人の歓迎会と自分達の退職祝いと開業祝い、さらにさくらと美咲さんの引っ越しのお祝いを同時にやろう。という内容だ。反対意見なんて出るはずもなく、満場一致で賛成。
ただ、異変のせいで大勢が亡くなっている関係で内輪だけのパーティーにする。美咲さんが知り合いのレストランを予約してくれるので楽しみにしていよう。
「そこって有名なトコだよね?」
「少し遠いですけど、おすすめのお店ですー♪」
「素敵なお店ですね。」
「楽しみである!」
パーティーの最中にベルの超能力のお披露目したら盛り上がりそうだ。あとでルドとエマさんに相談しよう。
賑やかな夜が更けていく、明日からも楽しそうだ。子供の頃は毎日こうだったかもしれない。
翌朝、疲れもなく早起きした自分は土手を歩いている。輝く朝日を見ていると脱出した日を思い出すな、あの時はこんな日が来るとは思ってなかった。人生は何が起こるか分からないものだ。
川の流れに目をやると、やはり違和感を感じる。相変わらず正体は分からないが不快な感じはない。流れの先に何かがありそうな⋯。
ずっと見ているわけにもいかないので、朝の散歩を日課にして明日も見に来よう。
「おはようございます。今日の予定は⋯。」
美味しい朝食を食べ終えて今日の予定を説明する。感知の魔法の練習をして上司に退職願いの連絡、開業届けを提出して手袋を探しに行く。それ以外は変更なし。
「それと明日の午前中、ルドとベルの服の試作品を持ってきてくれるそうだ。」
「待ってました!」
「楽しみですー!」
これに目を輝かせたのがさくらと美咲さん。ルドは探索用に革製のジャケットと長靴とベルト、ベルは執事服しか見たことないからな。着せ替え人形にする気か?
2人は不穏な気配を察知したのかこちらを見てくるが、自分は超一流の男を目指しているから特別にデザートを用意しておこう。疲れた時は甘い物が1番だ。




