35話
「今日は前回の続き、地下3階を探索する。無理しないように頑張ろう。」
ここは対策本部前。魔石回収用に腰に新しくナイフを装着して、お互いに装備を確認。良し!
まずは前回魔石を回収した場所まで移動する。途中、魔物が出てくるだろうが覚悟はしてきた。大丈夫。
魔石が回収できる事、つまり倒した後に体が残る事は関係者なら知っている情報だ。すでに自衛隊員や消防隊員は回収を経験済み、彼等にできて自分にできない理屈はない。
今後、探索者を続けていくなら避けて通れない道。今日、克服する。
「とは言え、いきなりはキツい。見本を見せて下さい。」
迷宮に入り地下3階への途中に出てきたゴブリン。倒すのは今まで通り大丈夫だった。倒したゴブリンを前に素直に頭を下げてお願いする。
「任せて下さい。」
エマさんは慣れた様子でゴブリンの横隔膜の辺りを切り開いて、体内から魔石を取り出した。出血も少なく内臓が出てくる事もなかった、何より魔石を取り出すと体も流れ出た血もいつも通り消えていく。
良かった。これなら自分にもできそうだ。
「内臓を傷付けないように開くのがコツです。傷付けてしまうと大変ですから気を付けて下さいね。」
魔物由来の素材は魔石を回収すると消えずに残るから剥ぎ取らなくていいのも気が楽でいい。
「どうせなら魔石と素材だけ落として消えてくれたら良いのに。」
「倒した後に放置すればそうなるのである。」
「そうなのか!?」
その場合、自分とさくらの決意は⋯。
「それは迷宮で生まれたばかりの魔物の場合ですね。」
「そうなのであるか?」
「はい、迷宮内のマナに依存しない魔物は倒しても消えません。」
「さすが、エマ殿は博識である!」
ルドはキラキラした目でエマさんに質問している。さて、次は自分の番だ。何度か失敗して大変な状態にしてしまったが、何とか回収できるようになった。
「私、ゴブリン嫌いです。臭いし汚いし、人間っぽいし、魔石小さいし。」
「分かるぞ、さくら。一緒に頑張ろう。」
「そうですよ、上手にできるようになったじゃないですか。」
「よく頑張ったのである!」
ゴブリンは触った感触が人間と同じせいで、魔石を取り出す時の忌避感が凄い。おかげで自分とさくらの精神的ダメージが大きい。グレムリンも似たような感じだ。異世界でも嫌われているらしい。
「あ、細ゴーレム!」
「よし!」
ゴブリンより強い細ゴーレムの方が今の自分達にとってはありがたい存在だ。ホブゴブリンと同じくらいの強さで少々打たれ強い程度、魔石の回収が楽なのが良い。
魔物に苦戦しないおかげで探索が捗り、地下3階の地図は午前中に完成。地下4階へ進む道も見つけてある。
「このルートは外れですね。」
「魔物が数体いるだけである。」
さくらとルドの話では地下4階は行き止まりになっているらしい。地図を完成させて今日は探索を切り上げる事にした。もっと魔石を回収したいところだが、無理しない方がいいだろう。
「やっぱり門番がいるルートが正解かな?」
「その可能性が高いと思いますよ。」
帰り道の休憩中に今後の探索を話し合う。門番ゴーレムと戦って倒し先を探索するか、迷宮内でキャンプするつもりで遠い位置にある下り階段を探索するか。
「どちらにしても、あと2人は欲しいのである。」
「救助の時の方々に頼んでみますか?」
「伊藤さんに相談してみるか。」
門番ゴーレムは攻撃が効かなそうなんだよな、有効な攻撃手段と人手が欲しい。キャンプは交代で見張りが必要だ。
「あれ?別の入り口から入ればキャンプしないで大丈夫っぽいですよ。」
自分達はいつも北側から入っているが、封鎖された南側から入れば時短できる。キャンプの必要はなさそうだ。
「よし、まずは渡辺さんに説明して南側から探索に入ろう。それと門番ゴーレム対策に攻撃手段と人手を確保する。」
方針を決めて帰還し、ちょうど対策本部にいた渡辺さんに南側の通行許可をもらう。人手を借りられないか聞いたが、それはさすがに無理だった。
伊藤さんにも相談するとキャンプは交換条件で協力してもらえるが、門番ゴーレムとの戦闘は申し訳なさそうに断られた。
「その条件というのが、上の階の探索協力だね。」
上の階は明るく探索は簡単と思われていたが、グレムリンとスライムのせいで罠だらけになっていて思うように進めないらしい。
「良いんじゃないですか?困った時はお互い様だし。」
「異議なしである。」
キャンプが確定した訳じゃないが、自分達が救助してもらう事もあるかもしれない。
それに警察も消防も通常業務に加えて迷宮の封鎖と探索をしているんだ。無償で協力を頼むなんて恐れ多い。全員一致で賛成。
「エマさん、自分達が習っている魔法を教える事はできますか?」
「教える事はできます。ですが宝珠から魔法を授かってない方は習得に時間がかかります。」
授かってない人は何年も修行が必要なんだとか、全員が回復促進や感知ができれば楽になると思ったんだが。
「なになに?なんの話?」
説明したら2人は残念がっていたが仕方ない。魔道具で代用できるかな?と考えつつ帰る事にした。




