33話
新しい目標を立て反省会を終えて、報告書をまとめて勉強会をする。
今日も資格の勉強と、回復を早める魔法の練習だ。練習の合間に気になった事をエマさんに聞いてみる。
「ゴーレムもどきを倒す時、どうやって弱点を見抜いてるんですか?」
「魔力の流れを感じ取ってるんですよ。次に教える予定の魔法です、楽しみにしてて下さいね。」
その魔法も魔法の練習のような物で、専門的な魔法の勉強の前に習得すべき基本なんだそうだ。
自分とさくらは宝珠によって知識と技術を得てしまった為、基本の部分を知らないまま魔法を使っている。
基本を習得する事で効率良く魔法を使えるようになり、迷宮攻略の役にも立つ魔法。ワクワクする。
勉強会を終えて昼食を食べ、午後の予定をこなす。筋トレし過ぎたり形稽古に集中し過ぎて注意されたりしながら、翌日も同じようにスケジュールをこなした。
「今日の予定は午前中に応急手当講習、お昼はファミレスで午後にサクラちゃんとミサキちゃんの引っ越しですね。」
「それに、夜に役人が魔石と魔道具の確認に来るから秘密厳守でお願いします。」
約束通りの時間に講習の会場に着いて伊藤さんや渡辺さんと控室で待っっていると、外が騒がしくなってきた。会場は超満員らしい。どうやら異世界人を一目見たいと人が押し寄せたようだ。
この1週間、不必要な外出は避けてたからな。家の周りは警察が巡回してたし。実はジムも山本さんの道場も入会希望者が殺到したらしい。嬉しい悲鳴をあげていた。
「⋯人工呼吸はこのように、しっかり鼻を塞いで⋯。」
今日集まっているのは近所の小学生とその家族。最初はルドの登場に大騒ぎしていて、今はソワソワしながら話を聞いている。
対照的にルドは興味深そうに、エマさんはメモを取りながら熱心に聞いている。あとで密着スタッフに映像を譲ってもらおう。
「⋯では実際に人形を相手に練習してみましょう。誰かやってみたい人はいますか?」
「はい!」
「負けられないのである!」
エマさんがビシッとまっすぐに手を挙げて主張している、ルドも負けじと後に続く。
「さくらはやらないのか?」
「大さんこそやらないんですか?」
実は自分は何度か講習に参加しているから参加しなくても大丈夫。この流れならAEDは自分達が参加する事になるから、今はエマさんとルドを見守ろう。
「とても勉強になります!」
「素晴らしいのである!」
3人が住んでいた場所では今回のような集まりはないそうで、知識は学びたくても学べないのが当たり前なんだそうだ。
自分達は恵まれた時代を生きてるんだと実感する。自分も真剣に講習を受けよう、世界が変わって死が近付いて来た。その最前線をわざわざ歩くんだ、3人を見習って本気でやろう。
「⋯AEDはこのように使います。では実際に練習してみましょう。誰かやってみたい人!」
「はい!」
「じゃあ、私も!」
何度か参加した事がある講習、AEDの使い方はちゃんと覚えている。余裕もあるし買っておいた方が良いか?よし、買おう。買わずに後悔するよりマシだ。
「それでは、今回の講習はここまでです。ありがとうございました。」
「こちらこそ、ありがとうございました。」
「命を救う勉強、感動したのである!」
大きな拍手が起こり講習は終了した。
「すごく良かったよ!また頼むね!」
「参加してくれて本当にありがとう。」
渡辺さんと伊藤さんからひどく感謝された。今までにない盛り上がりだったらしい。前に自分が参加した時も参加者全員が消極的だった事を良く覚えている。密着スタッフも良い物が撮れたと満足そうだ。
今後もこういった講習に参加したい事を伝えて2人と分かれ、次は異世界人3人からのリクエストでファミレスの予定だ。
「なんと!飲み放題であるか!?」
「配膳ロボット⋯、家にあったら便利だと思います!」
「買っちゃいますか?大さん。」
「いや、もちろん買わないよ?」
ルドはドリンクバーやサラダバーに驚き目を丸くして、エマさんはタブレットや配膳ロボットに興味津々。ベルはそんな2人を見守っているみたいだ、三者三様に異文化を楽しんでいるようで何より。
今回、密着スタッフを通じてテラス席を貸切にしてもらった。おかげで人集りができてしまったが、マナー違反をする人がいなくて助かる。
運ばれて来た料理を皆でシェアしながら食べる。いつの間にか賑やかな食事が当たり前になっているな。
「ダイ殿どうしたのであるか?」
「ん?毎日が充実してるなと思ってね。」
「そうですね。探索も無理なく進めていますし、勉強も練習も順調です。」
「順調⋯。忘れてた!事務仕事をしてくれる人を探さないと!」
事務仕事。全く自信がない分野だ、社会人になって20年以上の間ずっと会社に丸投げしていた部分。
もちろん必要な事はやっているし、開業届けを出せばギルド設立できるんだろうが詳しい事は分からない。どうしよう?
「⋯あのー、心当たりがあるにはあるんですけど⋯。」
自分が頭を抱えていると、珍しく歯切れの悪い言い方でさくらが手を挙げた。




