28話
「ちゃんと将来を考える事、安全を最優先に行動する事。」
話し合いは平行線だったが、最終的には父親が折れる形で決着した。どうか娘をよろしくお願いします。と頭を下げた姿が印象的だったな。責任を感じる。
話し合いを終えて練武場に戻ると、ルドが子供達に剣を教えていた。エマさんとベルも子供達に混ざって剣を振っている。ベルが持ってるのは竹串か?
「話し合いは終わりか?」
「はい、すいませんでした。次回からは自分も練習に参加させて下さい。」
そろそろ夕飯の支度をしなきゃならない。さくらはこのまま父親と帰り、自分達はスーパーに寄ってから家に帰る。
今日は自分とルドが料理を作り、片付けはエマさんとベルが担当する。エマさんの負担が多いな、片付け手伝おう。
「一流を目指すならば当然である!」
ルドは器用に包丁を使い食材を切っていく、コンロの使い方もすぐに覚えた、あとは踏み台があれば問題なさそうだ。
さくらの事を報告しながら楽しく夕飯を食べ終えて、エマさんとベルが後片付けの為に立ち上がる。
食器が宙に浮き、あっという間に洗われて片付いていく。ルドと一緒に驚いて目を丸くしていると、2人はイタズラに成功した子供のような顔で、満足そうに笑った。
「うふふ、普段から家事はベル君と分担してるんですよ。」
ベルは超能力者で、家事全般をこなす執事のような使い魔なんだそうだ。凄すぎて、ほへーとか言ってしまった。
さくらには秘密にしておいて驚かそうと4人で盛り上がり、いつもより早めに風呂に入る。このあとは魔法と異能の練習だ。
午前中に迷宮探索か護身術、午後は資格の勉強かジム通い、夜は魔法と異能の練習。
自宅待機中に考えたスケジュールだが、学生時代より厳しいかもしれない。たまに完全休養日を設けよう。
さて、魔法の練習だ。4人目を召喚する為に何をしたらいいかエマさんに聞いてみる。
「ずばり!迷宮攻略を頑張る事です。」
人差し指を立てて教えてくれた。テレビを見て覚えたらしい。優しいお姉さんの雰囲気があったが、ときどき子供っぽい事をするな。
エマさんの説明によると、魔法の上達には知識を蓄え技術を培いマナを吸収する事が大切。
自分の召喚魔法の場合は、宝珠によって知識と技術が足りているので、マナを吸収して成長する事で上限を高める方法が有効との事。ちなみに異能の上達も同じ。
マナを吸収すれば成長し、吸収できなければ最終的に使えなくなる。
「自分が召喚魔法を教えたり、白魔法や音魔法を習う事はできますか?」
「魔法は専門性が高いので習得は難しいと思いますが、理論上は可能です。」
普通は数年がかりで努力して魔法使いになるんだそうだ。なるほど、国家資格みたいなものか。改めて宝珠は文字通り宝なんだなと思う。⋯皆の意見を聞いてスケジュールを考え直そう。
「⋯という事で、スケジュールを組み直したいんだ、道場行く前に時間もらえるか?」
「おけです、1時間くらい早く大さんちに行きますね。」
さくらは落ち着いたようだ。自分は家族がいないから考えなかったが、家族に対するケアもしていかないと。さくらは貴重な人材だ、辞められたら困る。
考える事が多いなと考えながら、報告書に魔法の習得の件を追記して早めに寝た。
「朝ごはん作ろうと思って来ちゃいました。」
さくら、作ってくれるのは嬉しいが来るの早くない?せっかくだから作ってもらうけど。
少し目が腫れてるなと思いつつ、キッチンに案内して料理してもらう。私に任せて下さいと言うので大人しく座って待つ事にした。
しばらくすると3人も起きてきて、さくらに驚きながらも挨拶する。
「おはよう、ちゃんと寝れた?」
「快眠である!」
「この世界は寝具も凄いですね。ぐっすり眠れました。」
3人共、朝からシャキッとしているな。自分は弱い方だ、なかなか布団から出られない。
キッチンからいい匂いがして食卓にホテルのような和朝食が並び、自分より先に腹の虫が鳴いた。
「いただきますであるグー。」
「いただきますグー。ふふっ。」
「いただきぶふっ。」
「はい、さくらアウト。いただきます。」
「ずるいです!エマちゃんだって笑ってました!」
出汁から作った味噌汁。身はふっくら皮はパリっとした焼き鮭。キメの細かい厚焼き玉子。シャキシャキ食感の浅漬。任せろと言うだけあって美味しい。
「ご馳走様でした。笑顔が溢れる時間をありがとう、さくら。」
「お粗末様でした。」
ベルの超能力はまだ秘密のまま、後片付けをして本題だ。
欲しい資格や魔法、体力作り。皆で意見を出し合い余裕のあるスケジュールを組み直す。迷宮探索は無理をしない。異世界の情報があるだけで全員が初心者だ、探索はしても冒険はしない。
週2回くらい迷宮探索して帰還後は体を休める。残りは午前中は資格と魔法の勉強、午後はジムと護身術。日曜日は完全休養日。
全員で無線の資格取得を目指す事になった。本当は医療関係の資格が欲しかったが、そちらは時間がかかり過ぎて本末転倒になってしまうので今は諦めた。
代わりに応急手当講習を受ける事にして、エマさんに簡単な魔法を教わる。
山本さんと密着スタッフに予定変更を連絡して、久しぶりの勉強だ。




