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27話

 昨夜遅くに降った雨は明け方には止んで、いつもより気温が低い。

 ここは対策本部前。メンバーは自分を含め5人、体調を崩した人は誰もいない。昨日に引き続き撮影スタッフに囲まれている。早くからご苦労様です。


 自宅待機中にネットで購入した装備に身を包み、リュックを背負って今日の予定を説明する。

 10日ぶりの迷宮という事で、午前中だけ比較的浅い場所でゴブリンやゴーレムもどきを相手に戦闘訓練をするのがメインの目的だ。

 ベル以外の全員が胸元にカメラを付けていて、自分達の活動と迷宮内の様子を録画する。持ち帰って情報を共有したり、反省点の洗い出しに活用したりマスコミに提供したりする。


 お互いの装備をチェックして、いざ迷宮へ。問題が起きれば基本的に自分達だけで対処する。もちろん消防と連携していて情報をもらっているし、何かあれば救助に来てもらえる。

 ⋯大丈夫。期待と緊張、半々くらいで迷宮に足を踏み入れた。


「おそらく、ゴブリンの足跡である。」


 建物入り口への途中でルドが足跡を見つけた。周囲に隠れている様子はない。おそらく夜の間に建物外に出て、夜明け前に戻ったんだと思う。

 消防は捜索の為に何度も迷宮内に入っているが、建物外で魔物と遭遇したという情報はなかった。


「活動範囲が広がったのかも知れません。」


 つまり、体内に魔石が発生した。

 ⋯いや、断言はできないか。ここはもう迷宮内だ。今まで誰も気付かなかっただけで、初日から建物の外まで来ていたのかも知れない。


「ここからは気を引き締めて進もう。先頭はルド、2列目右にエマさんとベル。左に自分、3列目にさくら。さくらは後ろの警戒よろしく。」


 建物入り口まで1本道で右側は見通しが良く、左側は離れた場所に雑木林がある。来るなら左側だろう。 

 警戒しながら進み、何事もなく建物入り口に到着して大きく息を吐く。


「大さん、緊張しすぎです。」

「自分でもそう思うよ。」


 皆で笑って肩の力を抜く、もう大丈夫だ。本部に無線連絡して、入り口から薄暗い建物内を見る。


「行こう。」


 1階と2階と地下1階を探索する。初日に自分達が見つけた遺体は全て消防が回収済み。地図を見ながら奥へと進み、その先の空白地帯を埋めていく。

 この迷宮は地上がピラミッド型で、地下が逆ピラミッド型になっていると考えられている。どちらかの頂点に核があると予想しているが、逆に1階の中央付近も怪しい。


「火柱が邪魔だなぁ、エマちゃん魔法で消せない?」

「ごめんね、ちょっと無理そう。」


 迂回して別の道を進み、出てくる魔物を片っ端から倒す。久しぶりだから手こずるかな?と思っていたが、魔物は全く問題にならない。

 宝珠も魔石も出ない事を少し残念に思いながら順調に進んで、予定より早い時間に帰還して初日は終了した。

 反省会をして報告書を作る、新しい情報はゴブリンの足跡と地図を更新した事くらい。


 午後の予定はまず引っ越しだ。今日からルドとエマさんとベルが共同生活する。部屋を掃除して昨日買った家具を配置していく、足りないものは今後少しずつ買い足して行こう。


「新生活!楽しみである!」

「医療ドラマという物を早く見たいですね。」


 ルドとエマさんは好奇心が強く、ワクワクを隠せない様子だ。ベルはそれを微笑ましく見守っているのが面白い。


 次はさくらが高校卒業まで通っていた道場に、護身術を習いに行く。


「パパ!なんでいるの!」

「心配だからに決まってるだろう!」


 どうやらさくらの父親らしいが、いきなり親子喧嘩を始めた2人に落ち着いてもらい挨拶する。


「はじめまして。いつもお嬢さんにお世話になっています。佐藤といいます。」

「こちらこそ娘がいつもお世話になっています。田中です。」


 典型的な日本人のやりとりをして喧嘩の理由を聞いてみると、さくらは父親の反対を無視して自分達と一緒にいるんだそうだ。

 自分達が聞いた話とは違うな、ちゃんと説得したんじゃなかったのか?さくらを見る。


「ちゃんと説得しました!パパが納得してないだけです!」

「納得できる訳ないだろう!ママだって反対する!」

「ママは関係ない!」

「隙だらけだぞ、さくら。」


 いや、誰だ?

 2人がヒートアップし始めた頃に、こっそり近づいて来たお爺さんがさくらのお尻を触ろうとして手首を掴まれている。


「先生!ウザい!」

「うむ、見事だ。だからそろそろ離しなさい。」


 急展開に自分達は空気みたいになってる。話を聞くために道場に移動して、お爺さんの正体が判明した。


「儂は道場主の山本じゃ。さくらから話は聞いている、今日はゆっくりしていくといい。お前達!有名人が来たからってソワソワするんじゃない!」


 山本さんは道場生からセクハラ先生と呼ばれているが、絶対に触らないから慕われているんだそうだ。

 叱られた道場生達は自分達をチラチラ見ている。異世界人3人はどこに行っても人気者で、特にルドは全員に好かれている。

 入会の手続きはしたが見学はできなかった。道場生が異世界人3人に群がり、今日はもう練習どころじゃなくなってしまった。


 自分は田中親子と話す為に、道場の1室を借りて場所を移した。




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