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24話

「こんなもんかな?」

「佐藤さんちって広いですね。」


 昔、祖父が町工場を経営していた名残で敷地が広い。今はもう影も形もないが、子供の頃はこの広い庭に工場があった。

 中学生の頃に両親と姉弟が事故で亡くなり、成人後に祖父母も亡くなった。何度も手放そうと考えたが結局先送りにしてきた土地。

 まさかこんな形で役に立つ日が来るとは、人生は何が起こるか分からないな。


「広いだけなんだけどね、でも役に立った。少し早いけど、お昼にしようか。」


 ご近所さんにも声をかけたし、お昼も食べた。さっきは中断したが、今度は大丈夫。


「間接的に協力とはどのような内容でしょうか?」

「ボランティア活動に参加しようと思っています。」


 午後、庭にマスコミを入れて質問に答えている。田中さんも質問を受けて魔法を実演したり、自分も異能を披露したりした。マスコミから驚きの声が上がっている。


「やはり直接的な救助活動をするべきでは?」

「はい。自分もそう思います。ですが、許可がなければ不法侵入です。政府も二重遭難を避ける為に、迷宮への立ち入りを禁止しています。」


 いくら人命救助とはいえ好き勝手はできないし、充分な実力と支援がなければ被害が増えるだけ。


「政府はどのような対策をすべきとお考えですか?」

「迷宮の攻略と管理を目標とする組織を作り、探索者の活動を支援するべきだと思います。」


 個人の努力でどうにかできる規模じゃない事は明らかだ。


「ですが、攻略するには情報が足りない。情報は命懸けで、手探りで手に入れるしかない状況です。」


 実際に日本どころか世界中で多くの犠牲者が出ている。


「幸いな事に、自分達には異世界人という協力者がいて、情報不足による犠牲者を減らす事ができます。」


 不法侵入に目をつぶれば、国籍を与えれば、活動の許可を出せば、日本は情報で世界をリードする立場になる。


「自分は召喚という方法で、彼等を不法入国させてしまいました。その罰は自分が受けます。」


 おそらく無罪になる。有罪でも300万、払える金額だ。


「その上で、彼等を召喚する権利が欲しい。彼等がこの世界で生きる権利を与えて欲しいと考えています。」


 召喚は自分の生命線だ。仲間がいれば迷宮に挑戦できる。


「その権利が迷宮攻略の糸口になる。と自分は信じています。」


 よし。質問からズレた答えになったが、言いたい事は言えた。

 その後も様々な質問にできるだけ丁寧に答える。中には番組への出演依頼や、ファンクラブを作りたい!なんて人もいて、田中さんと盛り上がっていた。

 それから数時間、休憩を挟みながら取材を終えた。もうすっかり日が傾いている。


「やっと終わりましたね。」

「終わったね。これで召喚の許可が下りると思う。」


 すぐ隣で大きく伸びをしている田中さんに、かすれた声で答える。のど飴買ってこよう。

 しばらくの間ボランティアに参加しつつ、不法入国の件と召喚の許可を待つ事になる。取材も続くだろう。

 召喚の許可の申請先が分からないが、報道されれば何かしら反応があるはずだ。

 その次は迷宮に入る許可。必要ならギルドの設立も視野に入れて⋯、やる事は多いが迷宮に挑戦できると思うとやる気も出る。


「きっと明日も大変だろうし、今日はこの辺でお開きにしようか。」

「はい。お疲れ様です。」


 その日の夜、全ての局で先を争うように自分達の事が報道された。ほとんどの出演者は自分の考えに賛成で、反対派は反対というより『検疫の観点から慎重に進めるべき』という考え。その点なら問題ない。

 これなら番組出演もありかもしれない。注目されるのは苦手だが、全く出演しないのも不自然だしな。田中さんと相談してみよう。


 ⋯のど飴を口の中で転がしながら別の事を考える。


 エメラルドさんの予想では、おそらく迷宮発生から1ヶ月以内に魔物の体内に魔石が発生する。

 今、魔物を倒すと消えてしまうのは体内に魔石が無い証拠で、初期段階の迷宮の特徴なんだとか。魔石が発生すると活動範囲が広がり、外に出る事も可能になり、魔物由来の素材も回収できるんだそうだ。


 つまり魔石とはバッテリーのような物。そして異世界には『癒しの指輪』や『人魚の首飾り』大規模な物になると『国を跨ぐ扉』等の魔石を活用する方法があるらしい、いわゆる魔道具だ。

 そしてエメラルドさんは簡単な魔道具なら作れるし、作り方を教えられる。


 今回、マスコミには意図的に情報を伏せた。知っているのは自分、ゴールド、エメラルドさん、ベル君、田中さんの5人。鈴木、高橋を含めれば7人か。この2人は除外してもいいが⋯。

 ニュースになってないだけで、宝珠から魔道具作りの知識や技術を授かった人もいると思うが少数のはず。


 命を狙われる危険がある情報と状況だ。魔石と魔道具、魔物素材には世界を一変させる可能性がある。スケールが大きすぎる話だな、この話はしばらく隠しておこう。

 ⋯国と交渉する時は、最初から話しておいた方が良いのか?分からないが話しておいた方が良い気がする。


 他に考える事は⋯。スポーツジムに入会して⋯、護身術を習って⋯、それに4人目を⋯、おとま⋯。




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