表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/26

23話

「おはようございます。」


 対策本部に着くと、すでに田中さん、伊藤さん、上司がいた。離れた場所にマスコミも大勢いる。


「逮捕されたら、すぐ抗議しますからね。」

「事情を説明をするだけだから大丈夫だよ。」

「自首の件、本気なんですね?」

「はい。あとで揉めるより、今ハッキリさせた方が良いですから。」

「あー、会社としては何もできないっす、すいません。」

「謝ることじゃないさ、こっちこそ騒がせて悪いな。」


 真面目過ぎとか、あの人はあーゆー人だからとか、呆れ気味の3人に見送られて、警察のテントに歩いて行く。途中で昨日の記者に声をかけられた。


「おはようございます!取材よろしいですか!」


 マイクを向けられカメラが自分を映す。一斉にフラッシュが焚かれて、蜂の巣をつついたように騒がしくなった。

 警察官が何人か止めに入るが収まらない。こちらを無視して様々な質問が飛んでくる。


「一言お願いします!」「猫は一緒じゃないんですか?」「あの女性とはどのようなご関係ですか?」

「すいません。これから警察に相談したい事があるので、取材は後でお願いします。」


 全然収まる気配がないな、仕方ない。軽く会釈して早足で警察のテントに向かう。


「お騒がせして、すいません。」

「いやー、凄いな。一躍時の人じゃないか。」


 この人は渡辺さん。伊藤さんの同級生で自分達の担当みたいな警察官だ。親しみやすくて話しやすい。


「相談とか言ってたけど、どうしたんだい?」


 ここに来た理由を説明すると、周りにいた警察官達も苦笑いになった。そんなに変な事か?


「つまり、召喚魔法で3人を不法入国させてしまったから自首しに来ました。って事かい?」

「はい。」

「いや、確かにそうなんだけどね、それでわざわざ自首しに来るなんて。君、相当変わってるね。」

「あの3人にも言われましたが⋯。」

「異世界人から見ても変わってるんだ!」


 笑いが起こる。もう慣れたが自分はズレてるんだな。


「うーん、在宅事件で良いんじゃないかな?マスコミの対応は署長お願ーい。」


 渡辺さんは署長さんらしき人に向かって両手をスリスリ、署長さんは苦笑いしている。

 在宅事件とは、逮捕されずに自宅から通いながら捜査を受ける事件の事らしい。初めて知った。

 渡辺さんの見立てでは、入国管理局の判断次第では刑事事件になるが、おそらく無罪になるんじゃないか?との事。自分と同じ考えだ。


 次は取材だな。

 どうにかして世論を味方につけ、国を動かして国籍を取得する。最低でも日本に滞在できる権利を手に入れる。迷宮探索を仕事とするなら、働く権利も必要だ。

 あの3人と、今後召喚される仲間の権利を勝ち取る必要がある。自分が迷宮を攻略するには、召喚魔法は不可欠だ。


 集まってくれた田中さん達3人に自首の結果を報告して、対策本部の外で大人しくしているマスコミに近づいていく。取材を受けるのは自分と田中さん。


「お待たせしました。取材をお受けします。」


 昨日の記者に話しかけると、堰を切ったように質問が飛んでくる。あっという間に囲まれて、顔の周りがマイクだらけになってしまった。


「警察に相談と仰っていましたが、何を相談されたんでしょうか?」

「魔法が使えるというのは本当ですか?」

「いったい何が起きてるんでしょうか?」

「猫は今どこで何をしてますか?」

「2人のご関係は!」


 熱量と圧が凄い。芸能人や政治家はこれを捌いてるのか、やましい事は何もないのに汗が吹き出てくる。

 まず囲むのをやめてもらい、昨日までの出来事と警察には不法入国の件を相談した事を説明して、少し休憩。

 質問は1人ずつにしてもらう。1人目は昨日の記者だ。


「警察が捜査中との事ですが、異世界人3人は召喚しないんでしょうか?」

「入国管理局の判断次第です。違法行為なら召喚しません。」


 バシャバシャとシャッター音が鳴る。もう会えない事に残念そうな声が聞こえる。よし、次の人。


「今、その3人はどこで何をされてますか?」

「一時的に元の場所に帰ってもらって、迷宮や魔物やギルドについて調べてもらってます。」


 ギルドについて、迷宮と探索者の管理をする異世界の組織です。と補足説明をする。

 聞き慣れ始めたシャッター音に混ざって、再会を期待する声が聞こえてくる。よしよし、次の人。


「佐藤さんは迷宮を探索する意思がある。という事でしょうか?」

「あります。ですが、3人がいない現状では諦めるしかないと思っています。」

「じゃあ、救助はどうすんだ!見殺しにすんのか!」


 野次馬の中から声が上がる。どうやら被災者の家族のようだ。何とかしろ!と、同調する声が増える。


「迷宮は非常に危険な場所です。現状では探索はできませんが、間接的に協力をしようと思っています。」

「間接的って何すんだ!ハッキリしろ!」


 大騒ぎになる前に警察官が割って入り、相手をなだめている。自分も異変の被災者なんだけどな。

 その場は解散となったが、午後から場所を自分の自宅に変えて続きをする事になった。

 近所迷惑にならないようにしないと。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ