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20話

「細っ。」


 誰が言ったか分からないが、第一印象はまさにそれだ。

 現れたゴーレムは予想より細かった。無意識に門番ゴーレムをイメージしていたせいで、余計に細く感じる。

 その細いゴーレムが、ゴリラのような4足歩行で拠点に向かって通路を歩いて来る。

 手が長く、足が短く、背は自分達より高い。能面のような顔でこちらを見下ろしている。


「サトーさん!まだですか?」


 エメラルドさんの声。そうだ、見ている場合じゃない!拍子抜けして合図を忘れていた。


「振り子!お願いします!」


 重い瓦礫が風を切るように、勢い良く先頭のゴーレムの胸に吸い込まれる。結果的にちょうど良いタイミングだった。

 まるでボーリングの1番ピンのように吹っ飛んだ先頭のゴーレムは、真後ろにいた2体目のゴーレムにぶつかって土の体が粉々に崩れる。


 あまりにも作戦通り。全員から歓声が上がり、勝利を確信してガッツポーズする。

 起き上がれない2体目のゴーレムを無視して、3体目のゴーレムが拠点に足を踏み入れる。こいつらに連携はない。命令以外の事はできない。


「くくり罠!お願いします!」


 今度はベストタイミング!

 消防士3人が力を合わせてロープを引っ張ると、3体目のゴーレムは絵に描いたようにつんのめって倒れた。

 自分とゴールドと田中さんは、倒れたゴーレムを踏みつけて土の体を掘り返す。核を見つけて壊してしまえば終わりだ。

 すぐに核を見つけ出し、ゴーレムは煙のように消えていった。次でラストだ!


 顔を上げて通路を見る。ようやく起き上がった最後のゴーレムは、倒した2体と比べて明らかに太い。

 こいつ、こんなに強そうだったか?


「⋯そんな!こんな事って⋯。おそらく1体目と混ざって大きくなったんだと思います。気を付けて!」


 魔法で分析したエメラルドさんが慌てている。1体目は振り子で倒したはずなのに、混ざった?

 通路には土の体の残骸が残っている。消えてない!今まで倒した魔物は全て煙のように消えていたのに、土が残っている!

 倒せてなかったのか!良く見れば、残骸が動いて小さなゴーレムになろうとしている。


「佐藤さん!」


 田中さんの焦ったような声で、ゴーレムの接近に気付いた。掬い上げるように振り回された腕を転がるように逃げて避ける。空気を切り裂く音が体の直ぐ側を駆けていく。

 冷や汗が止まらない。もし当たったら今度はこちらが粉々になる番だ。


「振り子!準備!くくり罠!準備!」


 考える前に指示を出した。準備して何になるんだ?決まってる。倒すしかない。立て!


 大きく振りかぶった腕。叩きつけ?横っ跳びで床に倒れ込むように逃げる。直後に腹に響く大きな音。

 すぐに立ち上がって構える前に次の攻撃。横薙ぎ?真後ろに飛んで逃げる。かすった!セーフ!


 分かりやすい雑な攻撃ばかりで、ギリギリ避けられる。だが完全に標的にされてる!誰か代わってくれ!


 逃げ回っていると、不意に後ろから突き飛ばされた。すぐ目の前にゴーレムがいる。なんだ?何が起きた?

 後ろを見る余裕もなく。反射的に腕を上げる。ゴーレムの腕に薙ぎ払われ、ふっ飛ばされた。


「サトーさん!すぐに手当てを!」


 大きな怪我はしてない。当たったのがゴーレムの肘の辺りだったのが幸いした。優しくて温かい光に包まれて痛みが消えていく。エメラルドさんの癒やしの魔法だ。


「ありがとうございます。」

「無理し過ぎです!」


 怒られてしまった。あの状況では仕方ないと思うんだが。⋯確かに自分が死んだら2人は強制的に元の場所に帰る、大幅な戦力ダウンだ。


「すいません、反省します。」

「⋯大きな怪我がなくて良かった。」


 許してもらえて良かった。

 ⋯今はゴールドが気を引いて足止めしている。ゴールドは余裕を持って避けてるな、さすがだ。そして自分を突き飛ばしたのは、小さいゴーレムだったようだ。そちらは田中さんが相手をしている。

 ⋯ゴーレムは誰かを狙うというより、近い相手に攻撃を仕掛けているようだ。それなら誘導できるかも知れない。


 振り子はもう少し時間がかかりそう。くくり罠はセットするだけ。よし!


「ゴールドはそのまま時間を稼いでくれ!自分と田中さんでミニゴーレムを倒す!」


 作戦を伝える。落ち着け。やる事は変わらない。


「その後、入り口にくくり罠をセット!振り子の準備が終わったら教えてください!」


 返事を待たずに行動開始。デカいゴーレムを大きく迂回して田中さんと合流。さっきのお返しとばかりに盾を構えて体当たり!

 ひっくり返ったミニゴーレムを踏みつけて、土の体を掘り返し核を壊すと煙のように消えていった。


 次はくくり罠だ。拠点の入り口にセットする。ここにデカいゴーレムを誘導して振り子をぶつける!


「振り子、準備できました!」

「ゴールド!ここに誘導してくれ!」

「任せるのである!」

「合図したら2つ同時に使います!」


 くくり罠だけではきっと倒れない。振り子だけではきっと倒せない。だから合わせて倒す。大丈夫。きっと上手くいく。

 入り口まで誘導されたゴーレムが、くくり罠に足を踏み入れた!


「今!」


 罠が足を縛り上げ、瓦礫が風を切って迫る。倒れろ!




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