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17話

 地下2階を通り過ぎ地下1階へ、あの2人と合流した場所の手前で、天井に大きな穴が空いている。そこから瓦礫が降って来て、道を塞いでしまったようだ。

 ライトで穴を照らすと小さな人影が見えた、グレムリンだ。こちらの手が届かないのをいい事に、高みの見物をしている。

 その時、後続チームから無線が入った。


「奥から大量の魔物が近付いています!すぐに合流して下さい!」


 あのグレムリンをなんとかしたいが仕方ない。急いで引き返し地下2階を駆け抜け、地下3階の分かれ道で後続チームと合流した。


「この先に広めのスペースがあります!そこで迎え撃ちましょう!」


 分かれ道の左側、そこは袋小路になっていて天井もしっかりしている場所だった。入り口を半包囲する形で陣取り、すぐに投光器を準備してもらう。

 ゴールド、田中さん、自分、消防士6人が戦い、エメラルドさんと美咲さんは後ろで待機していてもらう。


 まるで何かに追い立てられるように、ゴブリン達がやって来た。数は多いが問題にならない。

 調子が良い。周りが良く見える。昨日よりも集中できている。体力を温存して、できる限り効率良く敵の数を減らしていく。

 警察から借りた装備もいい感じだ。左手に透明な盾、右手に警棒。もっと長くて、もう少し重ければ最高だ。


 田中さんは130センチくらいの棒を持っている。護身術の杖術を駆使して戦っているらしいが、あれくらいがちょうど良いな。

 消防士の皆さんも、危なげなく応戦している。ゴールドは余裕そうだ。


 このまま、このゴブリンの群れを倒しきる。その後、脱出路を探索する。こういう時こそ落ち着いて対処しよう。


 そう思っていると、道の奥から明らかに今までのゴブリンより大きなゴブリンが3匹現れた。ホブゴブリンか?

 そいつらは大声をあげてこちらを威嚇する。それと同時に他のゴブリン達を怒鳴りつけているようだ。ゴブリン達は萎縮している。

 3匹は手にした棒で地面を叩き、奇声を発して突然襲いかかってきた。標的はゴールド、田中さん、自分。


「むぅ!」

「きゃあ!」


 突然の事に驚いて、正面から攻撃を受け止めてしまった。叩かれた盾から伝わる音と衝撃に、思わず腰が引ける。

 相手は棒を振り回し、2発3発と叩いてくるのを盾と警棒で防ぐ。大丈夫、大丈夫だ。

 驚いただけ、相手は自分より小さい。棒を振り回しているだけ、簡単に防げる。

 相手の攻撃を盾で弾いて、反撃の警棒を叩きつける!ガツン!と強い手応えの直後、ホブゴブリンは煙になって消えていった。よし!


 ゴールドと田中さんはどうだ?

 田中さんは大丈夫そうだ。ゴールドは?⋯苦戦している?目を疑うが、自身より大きな相手に力で抑え込まれて戦いにくそうだ。

 盾を前に出して突っ込む!ホブゴブリンに体当たりして吹っ飛ばすと、ゴールドがすぐにトドメを刺した。


「助かったのである!」


 次は田中さん!ちょうど突き飛ばされて転がって来たホブゴブリンを警棒で叩く。


「ゴールドは数を減らしてくれ!田中さんは通路に向かって大声魔法!デカい敵は複数で対処!」


 それぞれが了解の返事を返して、すぐに行動を始める。ゴールドはゴブリンの間を縫うように動き、ゴブリンがバタバタと倒れていく。

 田中さんは大きく深呼吸して、通路に向けて魔法を使った。事前の打ち合わせで話していた魔法だ。

 音魔法には様々な使い方があるが、今回は指定した場所に音を届ける。音を増幅する。を同時に使った。

 通路に密集していたゴブリン達は、鼓膜が破れる程の爆音に目を白黒させいる。中には本当に鼓膜が破れたヤツもいるようだ。


 その後は危なげなく戦いが進んだ。ゴブリンは多いだけ、田中さんの魔法で定期的に蹴散らした。ホブゴブリンも1対1でも倒せるようになった。

 最後の1匹を倒して一息つく。終わってみれば怪我もなく全員無事、場所が良かったな。


「お疲れ様です。大活躍でしたね。」

「いえいえ、ゴールドや田中さんの方が凄いですよ。」

「素早く的確な判断が出せるのは凄い事ですよ。」


 年をとってから褒められる事なんて滅多にない。伊藤さんに褒められて気恥ずかしくなった。


 全員で休みながら今後の事を話し合う。

 地下1階は瓦礫で塞がっていて通れず、撤去できるかは分からない。地下2階は1本道で地下3階には奥に進む道がある。

 強行軍で帰る予定だったが、グレムリンのせいで大幅な変更が必要になった。


「やはり、ここで野宿しましょう。」


 このままでは全員動けなくなる。しっかり休んで、日が昇ってから行動すべき。幸い、ここは壁や天井もしっかりしている。魔物に気を付ければ問題ない。


 全員そう考えたが無理だ。眠れない。

 襲撃の回数が多過ぎる。かなりの数を倒したはずだが、尽きることなく湧いてくる魔物に方針転換を余儀なくされた。


「ごめんなさい、まさかここまでとは思ってませんでした。」

「迷宮を甘く見ていたのである。」

「そんな事ないよ。全員初心者なんだ、仕方ないさ。」


 エメラルドさんとゴールドは迷宮の知識がある。だから責任を感じて謝っているが、2人は何も悪くない。世の中、実際にやってみないと分からない事だらけだ。




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