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14話

「お疲れ様です、早いですね。」


 メンバーと挨拶を交わす。

 早めに集合場所に着いたのに、たくさんの人がいる。時間を間違えたか?と思ったが、どうやら魔法を見たい人達が集まっているらしい。

 この人達はゴールドとエメラルドさんのファンみたいだ。中にはゴールドそっくりな人形を持っている女性もいる。

 いつの間に作ったんだ?


「召喚。」


 場所を開けてもらい、さっそく召喚する。自分自身と少し離れた2か所の地面から淡い光があふれる。


「待ちわびたのである!」

「時間通りですね。」


 ゴールドはやる気に満ちて、エメラルドさんは落ち着いて召喚に応じてくれた。目立たないがベル君も一緒だ。

 この3人には集合時間より早めに召喚する事を伝えてある。準備も休息も問題ないようだ。

 ずしりと重くなる体に気合が入る。これで全員揃った。


「これで全員揃いましたね。」

「はい。着替えたら、いつでも出発できます。」

「必ず助けましょう!」


 伊藤さんの声に答える。田中さんも気合が入ってるな。

 消防の服に着替えて装備を整え、忘れ物がないかチェックしてもらう。よし!いつでも行ける。


「少し早いが、出発しよう。」


 リーダーの伊藤さんから声がかかる。自分達も彼の指示に従って行動する。

 今は夕方。暗闇の中を夜通し移動する事になるが、娘さんの精神的・肉体的な消耗。それに魔物の存在を考えると、明日の朝までは待っていられない。


 境界線を越えて迷宮内に入ると、後続チームのエメラルドさんとベル君との繋がりが弱くなった。

 迷宮の中同士や外同士なら3人との繋がりを強く感じるが、中と外に分かれると途端に弱くなる。


 召喚魔法が未熟なせいで、距離が離れたり長時間離れたままでいると繋がりが弱くなってしまう。

 特に迷宮の境界線のように世界を隔てる程離れると、繋がりが非常に弱くなる。


 そして、用意してもらった無線機でも似たような現象が起きるらしい。

 外同士なら当たり前に使えるが、中同士では通信範囲が狭くなりノイズが増える。中と外に分かれると、完全に使用不可能になる。


 今回は境界線の外側の空き地に対策本部を設置し、境界線の内側の開けた場所に前線基地を置く。その間を魔物に警戒しつつ、有線で通信するそうだ。

 先行チームと後続チームは、田中さんの音魔法と無線機で通信できる距離を保ちつつ移動する。

 また、自分とゴールドとエメラルドさんとベル君は、契約のおかげで互いの距離と方向がなんとなく分かる。距離が離れ過ぎたり、道が分断された時に役に立つだろう。


 中継機を大量に設置して通信範囲を広げたいが、中継機の数が少なく人員も不足している。さらには魔物がいるせいで現実的じゃない。

 一応、瓦礫に偽装した中継機を設置して行く予定だが過信は禁物だ。


「ここから建物内に入るのである。」

「了解した、全員気を引き締め直してくれ。」


 ゴールドを先頭に周囲を警戒しつつ歩いて、今朝も通った道を通り工場内へ入る。ここまで魔物に遭遇していないが、ここからが本番だ。

 ゴブリンは夜行性で昼間は寝ている。日の光が届きにくい工場内でも同じと説明された。グレムリンとスライムは昼夜を問わず活動しているらしい。

 つまり、これからが魔物と遭遇する可能性が高まる時間帯。


 中継機を設置しつつ、あっさりとエメラルドさんとベル君を召喚した場所までやって来た。ここまでゴブリン1匹も出て来ない、肩透かしを食らった気分だ。


「皆、緊張し過ぎである。魔物は全て吾輩に任せる。くらいの気持ちで着いて来るのである!」


 ゴールドは胸を張って宣言する。確かに自分も含めた4人は緊張し過ぎだ、思わず苦笑いする。

 一度通った場所、ゴブリンは余裕を持って倒せる相手。スライムも落ち着いて対処すれば問題ないし、素早いグレムリンはゴールドに任せれば良い。


「そうだな。ゴールド君の言葉に甘えよう。」


 伊藤さんが答えると、タイミング良く無線から声がした。後続チームが建物前に到着したらしい、少しだけノイズ混じりの報告が聞こえた。

 負けてられないな。勝負している訳じゃないが、もっと肩の力を抜いて行こう。


「そうですね。先は長いですから、気負わずに行きましょう。」


 そうして移動を続け、ちらほらと出てくるゴブリンを倒し、最初の難関に辿り着いた。罠にあって大量の魔物と戦った場所だ。

 数匹のゴブリンをゴールドと協力して倒し、周囲の安全を確保する。さっそく伊藤さん達3人が、瓦礫を撤去する為に崩れた壁の調査を始めた。


 しばらくすると、予定通り後続チームが追いついて来た。一時合流し小休憩をする。自分は、この場所が重要な分岐点になると思っていた。

 ここを通れなければ、別の道を手探りで進まなければならない。その時はゴールドと田中さんが頼りだ。


 だが、伊藤さん達はいとも簡単に瓦礫を片付け、人が通れる道を作っていく。

 凄いな、さすがプロだ。

 作業中、広場に入って来るゴブリンを練習がてら倒しつつ考える。この中で一番役に立たないのが自分だ。

 今後、迷宮探索を続けるなら強みが必要になる。できれば何か1つ、『これだけは誰にも負けない。』そう言えるような何か。


 その鍵が宝珠。そんな事を考えながら作業が終わるのを待った。




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