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12話

 異世界人3人に協力を要請した消防士を探して5人で移動する。

 注目されながら歩いていると、少し開けた場所で談笑している消防士をゴールドがすぐに見つけてくれた。


「イトー殿、詳しい話を聞かせて欲しいのである。」


 話を聞くと、やはり3人に迷宮内に同行して欲しいそうだ。今は警察による封鎖は完了していて、すでに消防が迷宮内に入り建物の外側を調査している状態。

 工場関係者も迷宮内に足を運んだが、荒れ果てているどころか面影もないくらいに変わってしまった様子を見て、何枚か写真を撮りすぐに外へ出たらしい。


 ここで問題は、そんな場所に一般人である自分や田中さんを同行させる訳には行かないという事。

 伊藤さんは現場の責任者として、迷宮内に入り異常性を肌で感じている。四の五の言ってられない状況を理解しているが、それでも葛藤しているのが見て分かる。


「人殺し!娘を返せぇ!」


 突然、女性が怒鳴り込んで来た。しかも自分に言ってるらしい、驚いて声も出ない。


「やめなさい!落ち着くんだ!」


 伊藤さんが止めに入り、女性をなだめている。

 この2人は夫婦らしい。奥さんが落ち着くのを待って詳しく話を聞いてみると、この工場で働いている娘が行方不明になっている。と言われた。

 それで何故、自分が人殺しと言われるのか?


『佐藤は猫をけしかけて俺を殺そうとした。』

『あいつは田中を見殺しにしようとした。』

『俺達を迷宮に置き去りにしようとした。』

『俺達はあいつが伊藤を襲ってるのを見た。』


 伊藤さん夫妻の説明によると、鈴木と高橋がこんな事を言っているらしい。奥さんは2人の話を鵜呑みにして、自分が犯人だと思い込んだようだ。

 もちろん自分はそんな事はしてない。あの2人が好き勝手な事を言ってるだけだ。

 姿が見えないと思ったら、そんな事をしてたのか。迷宮内の事は調べようがないから、適当な事を言ってるんだろう。沸々と怒りが込み上げてくる。


「自分はそんな事してません。」

「あの2人の嘘なのである!」

「でたらめです!あの2人を訴えるべきです!」


 ゴールドと田中さんもヒートアップしている。騒ぎを聞きつけた警察官がやって来た。

 警察官もこの噂を耳にしたらしく、この事が問題になっていると教えてくれた。さっき何故か注目を浴びたのは、この噂が原因か。


「サトーさんは、無実なんですよね?」


 エメラルドさんの問いに、もちろんです。と答える。


「でしたら、私が証明できるかもしれません。過去を視る魔法を使えば、1日前くらいなら視えますから。」


 そんな魔法があるのか。確かにそれなら自分の無実が証明できる。


「さっそくあの2人を呼び出して、皆の前で謝罪させましょう!」


 ゴールドと田中さんは意気込んでいる。公開処刑だ。

 少しの間待っていると、警察官に連れられて2人がやって来た。これから何が始まるか、2人は聞かされてないらしい。

 周囲には警察や消防、工場関係者、伊藤さん夫妻もいる。さらに魔法に興味がある人達もいるだろうか?


 表向きは『過去を視る魔法で工場内の様子を知る為の集まり。』だ。過去を視る事で自分の誤解は解けるだろうし、2人にはデマを流した分だけ恥をかいてもらう。


 そしてエメラルドさんの魔法が始まる。


 大地震、ゴブリン、ゴールドとの出会い、避難の途中で2人と合流し、いきなり言いがかりをつけられた。

「鈴木さん襲われてないっすね。」「ヘリクツじゃねーか。」囁く声が聞こえてくる。


 宝珠でまた言いがかり、田中さんと出会い、2人とは別行動、ゴールドと心から笑いあう。

「言いがかりとヘリクツばっかだな。」「田中を見殺し、なんて嘘じゃないですか。」2人を非難する声が多くなってきた。


 大量の敵と戦い、田中さんと合流して5人で移動、自分の体調不良。

「置き去りにしようとしてんのは、鈴木達の方じゃねーか!」「何が自業自得だ!」もう誰も噂を信じてない。


 ゴーレムもどきとの戦いの中でエメラルドさんとベル君を召喚し、朝日に感動して、出口に辿り着いた。

「2人共、見てねーで戦えよ。」「2人以外は頑張ったな。」良かった、自分に対する疑いは完全に晴れたようだ。


 鈴木と高橋は途中から完全に孤立して黙り込んでいる。


「⋯⋯つーかお前ら、こんなん信じんのかよ?あの女が魔法で作ったフェイク動画じゃねーか!」


 突然、鈴木がそんな事を言い出した。


「それに俺達はあいつが伊藤を襲ってんのを、この目でハッキリ見てんだ!その部分が全部カットされてる!そうだろ!高橋!」

「鈴木の言う通りだ!」


 集まった人達が騒ぎ出した。

 確かに『過去を視る魔法』が嘘で『幻を見せる魔法』だった場合、対処できずに簡単に騙されてしまう。


「フェイク動画というのは分かりませんが、魔法で過去を改ざんする事は出来ません。」

「そんなのわかんねーだろ!」

「エメラルド殿はそんな事しないのである!失礼である!」


 自分達はエメラルドさんが嘘をつくとは思わないが、集まった人達はそうじゃない。このままではエメラルドさんまで疑われてしまう。

 と思ったが、そんな事はなかった。エメラルドさんが嘘をつくメリットが無い。というのが理由だ。


 ほっと胸を撫で下ろし、自分は2人に質問した。



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