表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/26

11話

「おはようございます。お加減はいかがですか?」


 エメラルドさんが優しく微笑んでいる。自分はいつの間に寝てたんだ?


「おはようございます。」


 とりあえず挨拶して。

 周囲を見回すと、ここは災害時用のオレンジ色のテントの中だった。ゴールドと田中さんも毛布に包まって寝ている。

 エメラルドさんに聞くと、自分は写真を見せて名札を渡した後、話の最中に突然倒れて寝てしまったらしい。

 驚いたんですよ。エメラルドさんはクスクス笑っている、申し訳ない。皆にも後で謝罪しておこう。


 自分が寝てしまった後、ゴールドとエメラルドさんが自身の事や、マナや迷宮や魔物、宝珠と宝珠から授かる知識や技術について説明していたらしい。


「マナとは何ですか?」


 他は聞いたがマナは初耳だ。

 マナとは万物の素となる要素で、世界の全てがマナによって構成されている。と言われています。

 エメラルドさんはそう教えてくれた。空想上の元素という事か。


 原因は分からないが、迷宮が発生するのはマナの働きによる現象だと考えられている。そして今、世界中で迷宮が発生し人類はその対応に追われている。

 ゴールドとエメラルドさんは異世界からの来訪者として、様々な形での協力を要請されている。と教えてくれた。


 世界中で?⋯寝ぼけた頭で聞き逃しそうになったが、世界中で迷宮が発生している?まずいんじゃないか?

 ⋯いや、考えすぎか。一般人の自分達でも脱出できたくらいだ、自衛隊や軍なら問題無く対応できるはずだ。


「サトーさんは今後の事をどのようにお考えですか?」


 今後の事。そんな事なんて考えてなかった。寝起きの頭じゃ何も考えられない。


「⋯分かりません。」

「そうですよね、いきなりじゃ困っちゃいますよね。ごめんなさい。」


 エメラルドさんは謝っているが、考えなきゃならない事だ。会社の事もある、自分はどうなるんだろう?


「とりあえず、上司に連絡してみます。エメラルドさんも疲れてるでしょうし、休んでいて下さい。」


 テントから出て上司に連絡する。

 上司は昼勤で迷宮化に巻き込まれてない、この状況ならここに来てるはずだ。スマホを片手に、何故か注目を浴びつつ歩いていると、すぐに繋がった。


「おはようございます、大丈夫っすか?心配しましたよ。」

「おはよう、とりあえず怪我は無いよ。ありがとう。」


 上司は年下だが頼りになる奴だ。あの2人とは大違いだな。⋯そういえばあの2人見てないな、帰ったのか?


「⋯大変な事になったな。大勢亡くなったし、工場も立ち入り禁止だろう。これからどうなると思う?」

「想像もつかないっすね。世界中で異変が起きてるって、朝からニュースはそれしか放送してないっす。」


 いくつか話をして、会社の方針として社員は自宅待機。あとは警察と消防の指示に従う以外、何も決まってない事を知った。それはそうだろうな。

 それから、国内で大規模な異変が複数箇所で起きており、自衛隊はそちらの対処に行っている事。ここの対処は警察と消防が担当する事を聞いた。

 この工場は小規模な異変だったらしく、数十キロの範囲が変貌したという報道もあったらしい。それに魔法使いに関する報道もあったそうだ。


 上司との話をすませてテントに戻ると、ゴールドと田中さんが目を覚ましていて、4人で昼食を食べている。

 何も食べてないな、そう思うと急に腹が鳴った。


「おはよう。それ美味しそうだね。」

「おはようございます、佐藤さんの分もありますよ。」


 倒れて驚かせてしまった事を謝り、5人で笑いながら食べる。ゴールドもベル君も人間用の食事で問題ないようだ。

 他愛のない話をしながら、こんなに楽しい食事はいつ以来だろう?と記憶を遡るが思い出せない。

 昼食を食べ終わり、今後の事を話し合う。


 迷宮化の問題が解決しない限り、工場は操業停止だ。だが解決の目処は立ってない。

 警察が迷宮周辺を封鎖して消防が救助に入る、そこに異世界人3人が協力を求められている。おそらく同行を求められるだろう。

 だが、召喚した自分が近くにいなければ3人は力を発揮できない。

 それに、確か72時間だったか?迷宮化から約12時間。残りあと60時間、助けられる人もいるかも知れない。

 それらを説明して伝える。


「自分は救助に協力しようと思ってます。」


「吾輩に異論は無いのである!さすがサトー殿である!」

「私も協力に賛成です。微力を尽くします。」

「もちろん私も!困っている人の力になりたいです!」


 ベル君を含め4人共、裏も表もなく協力に賛成なんだな。自分はその事が少し後ろめたい。

 生活や建前、何より自分の人生が大きく変わりそうな予感がしている。ここだけでも大きな被害が出てるのに、この異変に期待して年甲斐もなくワクワクしてるんだ。


「まず家族と上司に連絡して、そのあと警察と消防と話し合いですね。」


 田中さんはやる気を見せて立ち上がり、スマホを持って出ていった。自分は家族はいない、上司に連絡するだけだ。

 上司に操業停止中は警察と消防に協力する事を伝え、何かあったら連絡してくれと言っておく。しばらくすると、田中さんが戻って来た。


 さて、次は警察と消防だな。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ