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闘争の果て

「今日はこの辺にしとくか。」

「そう……だな……。」

 ディンが先代竜神王の力を受け継いでから50年、ディンは現竜神最強の称号を手に入れる程、強くなっていた。

 先代の弟レヴィノルや、その息子レヴン、孫であるレヴィストロは、戦闘に特化した能力を持っていたのだが、それすら超える力を手に入れて、修行に精を出していた。

 アリステスが相手をして修行をしているのだが、ディンの動きにアリステスがついて行けず、最近はもっぱらアリステスの体力がなくなって修行を終える。

 ディンだけが使える、寿命や魂を魔力に変える能力、もコントロールが出来る様になってきた、最低限の代償で最大限の力を発揮する、それを可能にするだけの時間はあった。

「そういや、あいつらはどうしてるんだ?」

「あいつら……?あぁ、奴らの事か。今日も、集会を開いているはずだぞ、王よ。人間殲滅、それを諦めたわけではないだろうからな。」

「……。人間殲滅、ね。」

 年輪の世界、と呼ばれるこの世界群の、全ての人間を滅ぼす。

 その結果がどうなるのか、その末路は、想像するに難しくない。

「俺はもうちょっと魔法の方修行するけど、アリステスはどうする?」

「私は遠慮しておこう、この後図書館に行かねば。」

 賢竜と呼ばれているだけあり、アリステスの知識欲は止まる事を知らない。

膨大に世界群の歴史や魔法の種類、戦闘方法、発展の仕方などが納められている、大図書館に通いつめ、大体の書籍の内容は把握している程、アリステスの知識は造詣が深い。

 数千あると言われている年輪の世界の歴史やその他諸々を把握しているのだから、記憶力は並大抵ではないだろう。

「王よ、少し気を休めたらどうだ?殺気立っている様だが。」

「ん?そうか?そうだな、少し休むのも大事か。」

 アリステスの言葉に耳を傾け、剣を消して歩き出すディン。

与えられた部屋で、少し休息を取ろうと思っているのだろう。

「……。」

 アリステスは、図書館に向かいながら、そう言えばと思い出す。

あの時、50年前の、ディンのあれは何だったのか、と。

「王よ、君は本当に覚えていないのか……?」

 あれほどの業を噴き出した事を一切覚えていない、というディンの言葉に引っかかりを覚えていたアリステス、記憶を覗き見る力を使おうかと悩んだ事もあったが、それは友人であるレヴィストロが許さないだろう。

「……。」

 何か、ヒントがあるかもしれない。

自分が知らない書物のどこかに、何かヒントがあるのかもしれない、と思ったアリステスは、改めて図書館へと足を進めていった。


「……、皆……。」

 部屋に戻ったディンは、魂の宝玉を握り締めながら追想に浸っていた。

 竜神王術、時空超越。

それは、己を過去や未来に送り、世界を改変する魔法、とレイラは言っていた。

 が、ディンは気づいていた。

自分と悠輔は、魂が普遍的な世界の流れから外れ、もう一度同じ場所に生まれる事はない、という事に。

 弟達は、魂の欠片だけを宝玉にした為、また生まれてくるのだろうが、悠輔と自分は違う。

 過去に飛んだつもりでも、「別の時間軸」に飛んだのだと、ディンは気づいていた。

その結果として、世界にはディンアストレフは生まれない、坂崎悠輔も生まれない、というのがディンの出した答えだった。

 十代目竜神王、というのは変わらず自分の事かもしれないが、もしかしたら、この時間軸における十代目竜神王が生まれる可能性もある、と。

「……。」

 そうなった場合、自分は用済みになってしまうのだろうか。

 世界がどういった選択をするか、その結果世界から弾かれる可能性もある、とディンは思い至った。

そうなった場合、自分はこの世界に存在出来ない「異物」になってしまう。

 正常な歴史の物語を外れた、異質な存在、それが今のディンと悠輔だ。

「俺は……。」

 しかし、ディンはこうも考えていた。

世界は新たな竜神王を生み出さず、自分自身がまたデインと対峙する事になる、と。

 それは10代目竜神王の宿命、そしてディンアストレフの宿命、坂崎悠輔の宿命。

その宿命だけは、誰かに代われるものではないのではないか、と。

「俺は、勝てるのか……。」

 今のディンは、先代竜神王の力、そして命を魔力に変える力を行使している。

自分自身の力、10代目竜神王としての力は、未だに取り戻せていない。

 そんな自分が、仮初の力だけを行使している自分が、果たしてあのデインに勝てるのだろうか。

 もう一度時空超越は使えない、それはディン自身理解していた。

竜の刻印、それは今左半身を覆っており、それが全身を覆った時、ディンは人間の姿を保てなくなる。

 竜の姿に変貌し、竜神として世界を見守るだけの存在になり果ててしまう。

それは嫌だ、だからこそ時空を超えて今ここにいるのだ。

「眠い……。」

 考えている内に、陽が沈んできた様子だ。

眠気を覚えたディンは、静かにベッドに横たわり、眠りに落ちた。


「ディン!起きて!ディン!」

「ん……?レヴィか?」

「起きてディン!お爺ちゃん達が!」

「奴らがどうかしたか?」

 レヴィストロのけたたましい声で起こされ、ぼーっとしながらディンは体を起こす。

この慌てようは何かがあったのだろうが、と頭を振りしゃっきりさせ、目を覚ます。

「人間殲滅を実行しようとしてるんだ!」

「……。この事、母さん達は?」

「もう皆集まってるよ!」

「わかった、直ぐに行く。」

 レヴィストロは、ディンがしっかりと要件を理解した事を把握すると、部屋を飛び出して行った。

「……。」

 人間殲滅、相手がそう出るのであれば、自分はこうするしかない、と決めていた。

だが、同族を相手に、しかも千を超える相手だ、生きていられるかはわからない。

 しかし、人間を滅ぼされてしまったら、時空を超えた意味がなくなってしまう。

それだけは嫌だ、例え兄弟達が自分の事を知らずとも、他人だったとしても。

守ると誓ったのだ、それだけの為に、自分は生きているのだ、と。


「母さん、お待たせ。」

「ディン……。ごめんなさい、とうとう、私達は止められなかったわ。」

「良いんだ。きっと、どう足掻いていもこの結果は変わらなかったと思う。それは、俺がここに来た時点で決まっちゃってた事だと思うから。」

「10代目、何か策はおありで?」

「貴方は……?」

 竜神達の気配を探知すると、決起集会でもしているのだろうか、里の広場にほとんどの竜神が固まっていた。

 ここにいるのはディン、レイラ、アイラ、ケシニア、レヴィストロ、アリステス、そして知らない顔が一人。

「私は先代竜神王の妻、ライラ。貴方の力になるべく、眠りから醒めたのです。」

「先代の、奥さん……?」

 確かに見てみると、レイラやアイラに似ていて、しかし何処か老け込んでいるとでも言えば良いのか、歳を重ねている様子が伺える。

 その瞳の色は翡翠色で、レイラと同じだ。

「人間を滅ぼす、それは世界の滅びと同義。貴方が止めなければ、世界は滅んでしまうでしょう。10代目、何か策はおありで?」

「……。それなんだけどさ。」

「ディン、どうしたの?暗い顔して。」

「……。俺一人で、奴らを止める。皆は手を出さないで欲しいんだ。」

「え……!?でも、お爺ちゃん達は千人以上もいるんだよ!?一人でって、戦うって事だろう!?そんなの、僕達が許せるわけないじゃんか!」

「確かに、勝てるかどうかはわからない。でも、戦いの後、きっと魔物が世界群の中で増える。それを対処する存在がいないと、それこそ世界が滅んじまう。それに、これは俺が引き起こした問題だ、俺がけりをつけるのが道理だろ?」

 ディンは、独りで戦うつもりだった。

もしも全面戦争が避けられないとしたら、それはどちらかの滅びしか結末はない。

 そして、もしも勝った場合、千数百の竜神の死後、それだけの闇が世界に広がる事になる、と考えていた。

だから、それを鎮める役割を持つ者が必要で、それをここにいる面々に任せたい、と願った。

「ダメよディン!向こうは千人以上いるのよ!?」

「だからこそだよ、ケシニア。千幾ばくかの竜神の闇、それを鎮めるのに、全員が疲弊してたら、それこそ世界が滅ぶだろ?だから、俺は独りで戦う。必ず勝って、人間を……、弟達を、守るって決めたんだ。」

「……。信じても、良いのね?」

「レイラ?彼一人で行かせるつもりかい?私は反対だ、せめて何人かは連れて行くべきだと思うよ。」

「この子は、お父様の血を受け継いでる、次代の王。きっと、私達が止めたのなら、私達でさえ斬ってしまう、そう思うの。なら、この子を信じて、私達は世界を守りたいのよ。」

 ケシニアとアイラは反対の様だが、レイラがそれを止める。

 ディンの目、それは先代竜神王が世界を分けた時と同じ瞳だった。

決して揺るがない意思の瞳、それは、止めるものすべてと戦う事になったとしても、という決意の瞳。

「あぁ、誰であろうと、止めるなら斬る。それに……。」

「なんだ?王よ。」

「皆にまで、同族殺しなんてさせたくない。これは俺が来た事で起こった、歴史の改変。なら、俺がカタを付けなきゃならない、皆にまで背負わせるつもりはないよ。」

「……。もう、戦うしかないの……?」

「俺はそう思ってる。人間殲滅、それを掲げた時点で、俺とあいつらは決別してるんだ。」

「必ず、帰ってくる……?」

「必ず帰ってくるよ、ケシニア。俺を信じてくれ、皆からしたら、これは我儘かもしれない、子供の駄々かもしれない。でも、俺はそうするしかないって確信してるんだ。」

 ディンは真剣だ、そう目と言葉で伝えている。

 ケシニアは、自分よりもだいぶん歳の幼いディンが、しかしやはり王は王なのだ、と思わせるような何かを感じていた。

ケシニアだけではない、その場にいる全員が、何故かディンになら任せてもいいのではないか、と思わせられていた。

「死んだら、承知しないんだからね……。」

「必ず、生きて帰ってくる。約束だ。」

 ディンはそう言うと、その場にいる面々に背を向け、広場へと向かっていく。

 6人は、ディンが無事に帰ってくる事を祈る。

そして、もう戦争は避けられない事なのだ、と改めて痛感した。


「今こそ人間を滅ぼし!世界に平和を与えようぞー!」

「「おおー!」」

 決起集会をしていた竜神達は、レヴィノルの言葉に賛同し吼える。

全員が心の剣を持っていて、いつでも人間を殲滅しに行ける、という勢いだ。

「人間を滅ぼす事は許さない!」

「なんじゃ!?」

「レヴィノル!お前は間違ってる!今ここでやめるのなら、命までは奪いはしない!」

「小童!?貴様一人で何が出来るというのじゃ!」

 広場に入ってきた一人の男、ディン。

 レヴィノルは、ディン一人で来た事をせせら笑っていて、他の竜神達も、いくら現竜神最強と謡われるディンだったとしても、一人でこの状況を何とかしようとしている、という事に半笑いだ。

「もう一度問う!先代の意思に従って世界を護るか!それとも俺に斬られるか!選べ!ここにいるすべての竜神よ!」

「馬鹿馬鹿しい!レイラ達を連れてくれば良いものを!むざむざ死にに来たというわけじゃな?よかろう、人間殲滅へ向けた第一歩じゃ!同胞よ!奴の闇を切り裂き、王の器がない事を知らしめよ!」

「「おおー!」」

「止める気はねぇみたいだな……。」

 竜神達の決起の声を聞いて、ディンは最後まで残しておいた希望を捨てる。

もしかしたら戦わずに済むかもしれない、と淡い期待を持っていたが、それは不可能だ、と。

「竜神剣、竜の誇りよ……。」

 ディンは剣を出現させ、左手に握る。

「竜神剣竜の意思よ、我が右腕となり、我が力となれ……!」

 そして右腕を前に出し、唱える。

 光が零れ、収束し、ディンの無いはずの右腕が銀色となって現れ、ディンは拳を開いて閉じて、その感覚を確かめる。

「竜神剣、竜の想いよ……。」

「二刀流……!?何故じゃ!竜神の剣は一人一本ではないのか!?」

「デインだよ。それに、先代だ。50年前、先代竜神王から、剣を受け継いだ。今の俺は先代の力を行使してる、それ位出来て当然だろ?」

「貴様……!兄上を手に掛けたか下郎!同胞よ!あの下賤な竜神もどきを殺すのじゃ!」

「「おおー!」」

 戦いは始まってしまった。

 人間を守ると誓ったディンと、人間を滅ぼそうとしている竜神達による、対立の闘争が。


「だらぁ!」

「がはぁ……!」

 もう五百人は斬っただろうか、第四段階解放と魂を魔力に変える力を使っているディンは、竜神達を圧倒していた。

 次々に倒されていく竜神達、屍は辺り一面を覆い、広場は血で濡れている。

「行け―!殺せー!」

「死ぬわけにゃいかねぇんだよ!こちとらこっからが本番なんだ!」

 壮年の竜神、レヴィノルの息子レヴンが大声を出し、竜神達は果敢にディンへ攻撃を仕掛けるが、一撃で返されて倒されていく。

「何故じゃ……!?」

 レヴィノルは驚愕していた、それはディンの強さだけではない。

竜神は闇を持たない、即ち竜神剣で斬られたとしても意味はない、と妄信する程に信じていた。

 だが、この惨状はどうした。

ディンの剣が特別な物な訳ではない、一度闇に堕ちたデインの剣だからという理由でもない。

目の前で鬼神の如き力を発揮している存在の使っている剣は、どう足掻いた所で竜神剣だ。

「何故じゃ……、同胞よ……!?」

 目の前で斬られては死んでいく同胞達を見て、レヴィノルはフラッシュバックする。

かつて、9千と950年前、先代竜神王が世界を分けるきっかけとなった事件、魔物の大量出現の際を。

 あの時も、負けるはずがないと思っていた、光の存在である自分達が一人でも欠ける事はないと妄信していた、しかし竜神からも死者は出た。

 世界の守護者であるはずの自分達が、闇に負けた者もいるという事実。

「くらえぇ!」

「やられるか!」

 そして、今。

闇を持たないはずの自分達竜神が、同じ竜神によって斬られている、

 信じられない事が目の前で起きている、これは夢か?

違う、夢などではない、現実に血の匂いがしている、充満する程に広場は血なまぐさい。

 目を背けたいはずなのに、この光景から目が離せないレヴィノル。

「はぁ……、はぁ……。」

「今だー!敵は疲弊しているぞー!」

 そんなレヴィノルをよそに、ディンは斬りかかってくる竜神を、片端から切り伏せていく。

 竜神は本来二刀流はしない、竜神剣は一人の竜神に一つしかない、だから二刀流など出来るはずがない。

 しかし、ディンは巧みに二刀流を操り、複数の攻撃を捌いて見せた。

 次々に倒れていく竜神、しかし彼らは止まろうとしない。

自分達は絶対的に正義であり、守護者であり、目の前の竜神もどきは悪だと、そう妄信しているのだから。


「はぁ……、はぁ……、はぁ……。」

「なん……、だ……。これ……、は……!」

 気が付けば、レヴンとレヴィノル以外の全員を切り捨てていたディン。

レヴィノルは固まっていて、レヴンは狼狽えていた。

 歴戦の戦士達が、5百歳にも満たない子供に、一掃されてしまったのだから。

「レヴン……、てめぇ……、臆したな……?」

「ふ……、ふざけるなぁ!」

 最後の生き残り、レヴンが斬りかかってくる。

ディンは竜の想いを光に還すと、両手で剣を握ってそれを迎撃する。

「貴様如きにぉ!同胞達をよくもぉ!」

「……。」

 闇がにじみ出す、それは自分自身が気づかないのがおかしいほどに。

レヴンの剣の柄にはまっている藍色の宝玉が、だんだんと赤黒くなっていく。

「くっ……!」

「死ねぇ!」

 ディンが剣を弾かれ、体を一回転させようとした時。

レヴンの放った一撃が、ディンの背中を深く抉る。

「負けて……、たまるかぁ……!」

 痛み、疲労と襲い掛かってきて、今にも倒れそうなディン。

しかし、ディンは諦めなかった。

 弾かれた剣を無理やり引っ張り、レヴンの攻撃が終わった瞬間を狙って、首を刎ねた。

「バカな……。」

「これで……、てめぇ一人だ……、レヴィノル……!」

「何故じゃ……?」

「人間は……。あの子達は……、滅ぼさせねぇ……!」

 死屍累々の戦場と化した広場の中で、カランカランという音が響く。

それは、レヴィノルが剣を手放した音だった。

「同胞達よ……。儂は、間違っていたのか……?」

「竜神は闇を持たない……、なんて、ばかげた話は、なかったんだよ……。」

 重たい体を引きずって、ディンはレヴィノルの前までたどり着く。

戦意を喪失した、この哀れな老人を倒せば、人間殲滅は出来なくなる。

 ディンは、最後の力を振り絞って、竜の誇りを振り上げた。

「済まない……、同胞達よ……。兄上……、儂は、間違っていたのか……。」

 それに気づいたレヴィノルは、自らを捧げる様に両手を広げる。

「……。さらばだ、世界よ……。」

 ディンの一撃が、体を両断する。

レヴィノルは、今際の際の言葉を告げると、絶命した。


「ディン!」

 戦いが終わった事を感じていた6人が、広場にやってくる。

 ケシニアとレヴィストロはディンが今にも死にそうに肩で呼吸をしているのを見つけ、駆け寄る。

「これが、末路か……。」

 アリステスは、歴史に今までなかった、同族同士での殺し合い、その末路を目に焼き付けていた。

 賢竜として、この戦争の行く末を語らなければならない、こんな悲惨な出来事を、二度と起こしてはいけないのだと。

「叔父様……。今はディンの治療をしましょう。竜神王を失ってしまったら、世界の崩壊を止める者がいなくなってしまうわ。」

「遺体はどうすれば……。いや、今はそんな事を言っている場合ではないか。レイラ、治療は任せても?」

「えぇ。ケシニアちゃん、レヴィちゃん、ディンを部屋に。」

「わかったわ!」

「うん!」

 ケシニアとレヴィストロがディンを担ぎ、レイラが後を追って広場から去る。

 アイラとアリステスは、この惨状をどう整理すればいいのか、と戸惑っていた。

「哀れな子達よ、お還りなさい。貴方達のいるべき場所へ、貴方達の還るべき場所へ。」

 そんな中、アイラが何かを呟いた。

すると、死屍累々だった広場を光が包みこみ、アリステスとアイラはその眩さに目を閉じる。

「……。母よ、何をしたんだい?」

「竜神が還るべき場所へ、還したのですよ。剣は10代目が継承したでしょう。」

「哀しい事だ……。それでは、私達も行こう、アリィ。この事は記録し、次世代に受け継がせなければならないよ。」

「わかっている、アイラ様……。」

 静寂の場と化した広場を、3人が去っていく。

そこには何も残らない、まるで最初から竜神などそこにいなかったかの様に。


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