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お題シリーズ4

子供用ラーメン

作者: リィズ・ブランディシュカ



 今もまだ子供だけど。


 今よりもまだうんと小さい時は、たくさん食べれなかった。


 だから、外食をする時にはいつも、大人の食べ物を分けてもらっていた。


 大きなドンブリで食べる大人の横で、小さな器を用意してそこに盛ってもらう。


 それを時間をかけて少しずつ食べていくのが普通の事だった。


 けれど僕はそれが、あまり好きじゃなかった。


 早く大人になって、たくさん食べれるようになりたい。


 大人と一緒のテーブルにつくたびに。


 そんな事を考えていた。


 半人前扱いされているみたいでいやなのだ。


 大人と対等になる事に憧れを抱いていた。





 そんな時、外で食べようとなった時にいつものお店が満員だったから、別のお店に行った事がある。


 そこは、他の地域にあるラーメン屋。たくさんのメニューがあるお店だった。


 そこでは、大人用だけでなく、子供用のメニューまであった。


 大人用ラーメンの半分の金額で、子供用ラーメンが用意されている。


 それを見つめた時に思った。


 大人から分けてもらわずにすむ。


 子供用だけど、一人前の食べ物が食べられる。


 そう思ったから、少しだけ一人前になった気分で子供用ラーメンを頼みたいと言った。


 数分の待ち時間を経て、やってきた子供用ラーメン。


 少し口につけて、食べてみて思った。


 あたたかさが違った。


 小さな器に盛られていた時とは違う、熱の塊がそこにあった。


 なみなみと注がれたスープから立ち上る水蒸気は、迫力があった。


 とても美味しそうだった。


 いつもよりすごくおいしそうだった。


 大人はこんな食べ物を今まで食べていたんだと、衝撃をうけた。


 けれど、そう思ったと同時に。


 ああ、もう戻れないんだな。


 と。


 たった少しの変化だけど、その事を明確に意識した。


 その子供用ラーメンを食べた時に。


 子供である事からほんの少し卒業してしまったのだ。


 大人のまなざしを感じなくなった。


 どれくらい食べたのかな、なんて見てもらえなくなった。


 目と目をあわせて、おかわりいる?


 なんて聞いてもらえなくなった。


 あんなにも欲しかった一人前には、寂しさというものが存在するのを初めて知った。


 子供用ラーメン。


 子供でも一人前として扱ってもらえるメニュー。


 美味しかったけど、なんでだかちょっと苦かった。


 少ない量の麺をすすりながら、今よりうんと幼かった僕は、そんな寂しさを抱えていた事がある。




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