月明かりに輝く
小説初投稿です。誤字脱字あったらごめんなさい。
頭で想像してることを文字にします。見切り発車です。
週に2から3話を目標にしています。
よろしくお願いします。
わたくし、月山和也。20歳の男の子。社会人3年目に突入したバリバリ働く工場の作業員でありまして。会社に入って初めての休日に山にハイキングしに行った時の解放感にハマって、週末には欠かさず山にきております。
桜が満開のこのシーズン、いつも来ている山もさぞ見頃だろうと意気揚々と晴天青空の山道を登り、休憩スポットである広場に腰をかけていました。
ちゅんちゅんと鳴く小鳥の歌声に耳を澄ませ、澄み渡る青空に暖かく穏やかな春風、視界いっぱいに広がる桜を堪能していたら眠くなってしまいました。周りには珍しく誰もいないし、お昼ご飯も食べ終わったことだし、昼寝をしようとゴロンとその場に寝転がりました。
すやすやと、それはもういつ寝たか記憶にないくらいに安らかに眠りに落ちました。
はい、起きたら視界は真っ暗、風は信じられないほど寒い。さっきまでの穏やかな春はどこへやら。
嘘だろ夜になるまで寝ちまったのか。
真っ暗すぎて何もわからないけど、まぁ広場で寝ていたんだしそれほど焦ることではないか。スマホで時間を確認して、水飲み場で水分補給してゴミを持って帰ろう。明日から仕事だし。
山へゴミは捨ててはダメだからね、ちゃんと指定されたゴミ箱に捨てるか持って帰りなさいよ。広場のど真ん中で大の字で寝ていたお兄さんとの約束だぞ。
さて行くか、と手探りでポケットのスマホを取り出そうとした。
「ん?スマホさん?」
いつも右ポケットに入れているはずのスマホが無かった。慌てて左ポケット、パーカーのポケットも破れるくらいの勢いでてを突っ込んで探すが見当たらない。というか財布もない。
まさか、寝ている間にパクられた?
ありそうな話だ。真昼間から人気の少ない山の広場で、しかも大の字で爆睡しているなんて、悪い人からすれば盗んでくださいといっているようなものだろう。信じたくないがそういうことをする人間はいる。
どうしたものか。いつパクられたかもわからない。
そもそも本当にパクられたのかも謎だ。落としたのかもしれない。
そうだ、周りに落ちているかもしれない。寝返りをした時にポケットから出てしまったのかも。
「ちくしょう何も見えねえ」
周りは何も見えない。月明かりも、雲が出てしまったのか一切無くなってしまった。手探りでいくしかない。寝返りをうつ範囲内であろう地面からの感触は土と雑草のものだったので、至近距離には無さそうだ。
ガチで無いじゃんか。どーしよう。この場合ってどこに言えばいいんだ、警察?
「人気のない山の広場で、昼間から大の字で夜まで寝ていたら財布とスマホを盗まれてしまいました!」
これを言うのか。中々キツイな。防犯意識は無いのかと言われてしまいそうだ。というかそもそも防犯意識なんてのは悪人がいるから必要なのであってそんな人が居なければ以下略
手探りだと限界あるしな、仕方ない目も使って探そう。光なんて一切ないけど、もしかしたら万が一にでも画面が何かに反射するかもしれない。
周りを見渡す。現状を把握した。
風が止んでいる。
鳥も虫の声もしない。
月明かりもない。
完璧な静寂。あまりに現実離れした世界。
いや、手探りする時の草をかき分ける音や自らの呼吸音はするがそれだけ。
自分以外が音を立てることが一切、全く、微塵も無かった。
凄まじい恐怖が襲ってきた。毛という毛が逆立つような感覚がした。鳥肌が立ち、全身に力が入った。
次の瞬間、俺はその場から全力で駆け出した。
どういう状況だよこれ!?いくらなんでも怖すぎる!!
恐怖よりも疲労が勝ってきた頃、一度足を止めた。何キロも走った、いや、すぐ止まったのか。景色も見えず、時間なんて体内時計でしか測れない。そんな感覚なんて今は消えている。結局どこにどれだけ走ったかなんて全然わからなかった。
一回冷静になろう。夜の山を全力で走るのはびっくりするほど危険だからな。凸凹な地面、斜面、階段、場所によっては小川も流れているからな。いくら整備されている山道とはいえども、山をなめてはいけない。
「.......ちょっと待て」
俺は今、どこを走っている?
寝転がっていた広場は山道の終着点、そこそこ長い階段を登りきった先にあるものだ。その広場の周りは桜の木などがぐるりと並んでいる。木々の先は雑木林となっており、山道も一切無いために行ったことはない。というか気にもしてなかった。
つまり、階段を降りない限りは雑木林を突っ切ることになる。
俺は階段を降りてもいないし、ましてや雑木林なんて突っ切ってもいない。そんなところに入っていったら、すぐに木に激突、樹皮に自分のデスマスクを刻印することになるだろう。しかしそんなことは無かった。
周りが見えないから実際どうかはわからないが、真っ直ぐ全力で走ったのだ。無意識のうちに見えない木々を全て避け、一切足を取られることなく全力で走ってきた可能性なんて俺にはない。そんなこと出来たらとっくに何かの分野で世界をとっている。
ということはなんだ?存在するはずのない、木が一切無い平坦な道を通ってきたとでもいうのか。
あり得ないだろ?神隠しにでも遭ったのか?このタイミングで?今?
実は階段を平坦な道と思うほどに全力で、しかも転ぶことなく駆け降りました、という方がいくらか現実味がある。無理だろうけど。
「あー....ゴミを広場に置いてきちゃったな...」
あまりに非現実的な経験をしているせいか、なぜ今浮かんだのかわからない言葉が口から出た。理性を保とうとしているのか。そんなこと言うくらいならもっと理論的なことを考えてくれ脳みそ。頼む、20年も人生を歩んできた相棒だろうが。
_____そんな混乱している時、突然それは起きた。
ズシャ。
何かが土の上を歩いた....ような音がした。
「っひょ!?!!!?」
あまりに突然だったために体が跳ね、声にならない声が出てしまう。後ろを振り返るが当然何も見えない。というか後ろから音がしたのかも定かではない。
何も見えない。未だに真っ暗。
ズシャ。
明らかに先程より音が大きくなった。ということは近づいているのだろうか。ならば生き物の可能性がある。野生動物だろうか。音からして結構重量級な気がする。鹿か。猪か。この辺で出てくるとは聞いたことはないが___熊という可能性もある。そんなの勝てるわけがない。
鹿って声のする方に近づくってか逃げるんじゃね?あれ、猪か熊?いや無理じゃん逃げられないじゃん。
冷静に頭では考えているが、すでに腰が抜けている。口もガチガチと歯を鳴らしており、涙とも鼻水とも思える液体が顔を滴っていた。
怖い。
頭をしっかり両腕で庇って、三角座りの体勢にいつのまにかなっていた。これしか出来ない。
ズシャリ。
もう、すぐそこまで足音が聞こえてきた。
不意に三角座りしていた足元がぼんやりと明るくなった。自分の靴が泥だらけになっていることがわかった。
しかし、すぐに影になってしまった。何かに覆い隠されてしまったようだった。
反射的に上を見る。
そして、見惚れてしまった。この世のものとは思えない光景に。
いつの間にか雲は消え、不自然なほど大きく見える満月が、近づいてきていた者の正体を教えてくれた。
歯の一本だけで、俺と同じくらいありそうな大きさだった。それがずらりと並び、左右に一本ずつ更に長い犬歯が生えていた。
紅く、力強い目が、俺を視線だけで射殺さんばかりに見つめている。
耳もあった。犬の耳、いや、狼の耳なのかもしれない。
この時点で、俺はこの巨大な何かは犬か狼なのだと悟った。
毛並み良く全身を覆う、月光に照らされてより美しく輝く金色の体。
顔と同じ大きさはあろうかと思われる長さの、妖しく淡く、紫に光る尻尾。
「我が地に何の用だ」
その者は低く威厳のある声で、侵入者である俺に問いかけてきたのだった。
次話は明日以降投稿予定です。
頭の中にはありますが文字には出来ていません。
一話だけで高評価も何も無いと思いますが、これからご贔屓にしていただけると幸いです。