悪気
ええっと、何から言えばいいのかな。どうしよう。あんまり話、うまくないので。すみません。
「大丈夫よ。落ち着いて話してくれれば大丈夫。」
-スーツを着た女性が目の前の少女を優しく諭す-
私、霊感とか全然無いんですよ。てか信じてないし。
そーゆーのって、色んなものを怖がって、悪い事したから罪悪感を背負って生きてる人たちが創り出したモノっていうか。私悪い事してないし、恨まれる覚えもないし。
「それはあなたを見てたら分かるわ。あなた真面目ないい子に見えるもの。」
-女性が少女から出されたお茶を飲もうとするが上手くカップが持てない-
あ、ごめんなさい。どうしたらいいか分かんなくてそんなの出しちゃって。緊張しちゃったって言うか。
「いいのよ。歳なのかしらねえ。それで、なんでしたっけ。お化け?なにか視ちゃったとか憑いちゃったとか?」
そんな感じなんですけど…これ言っちゃっていいのかな。うーん…どうしよう。
「遠慮しなくていいわよ。こんな見ず知らずのおばさんに話し掛けるんだもの、よっぽど切羽詰まってるんでしょう。可哀想に。」
あの、あなた、誰なんですか。なんかずっと私の家の中に居ますけど。友達呼んでも親呼んでもみんな見えないって居ないって言うし。親来た時なんて、お母さんの隣に立って話聞いてると思ったらお父さんと開けてみた天井裏の奥でこっち見てるし。あなた、誰なんですか。人間なんですか。違いますよね。なんでみんなには見えないの。寝返り打ったら天井からぶら下がってるし。お風呂入れば気付くと後ろに立ってるし。鏡に映らないのに。友達泊めた日なんてあなたが歩き回るから、何もいないのに足音聞こえて怖いって友達泣きながら帰っちゃうし。なんでよ。どー見たって目の前で歩き回ってるじゃん。怖いよ。誰なんですか。居なくなってくれませんか。私あなたのことしらない。悪い事もしてない。誰か恨んでるなら人違いです。お願いだからもうやめてください。怖くて眠れないのに友達も親も気持ち悪いって寄り付かないし。なのに家から出ると離れるほどすれ違う人みんなあなたの顔になってニタニタ笑ってるし。怖いよ。もう許してください。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。ゆるしてよ…
-女性が席を立ち、少し歩いて台所に座り込む-
「それは大変ねえ…可哀想に…おまえがわるいんだぞ私霊とか全然分からなくて…わたしがくるまにつぶされたよこを可哀想だから何とかしてあげたいけど…たのしそうにあるきやがって貴方なんで私に謝るの?しねばいい大丈夫よ一緒に解決方法探しましょう!しねばいいお祓いとかなのかしらやっぱり…しねばいい大丈夫よしねばいい大丈夫よしねばいい大丈夫よ。」
見えるのも怖い。でも、見えないけどそこにいるかもしれない、のも怖いですよね。台所に、人、しゃがんでないといいですね。お風呂で顔上げたときの後ろとか。あなたの傍にいるそれって、誰なら見えるんでしょうね。