75話 模擬戦 (ティファニーの挿絵付)
「お兄ちゃんとスパーリングするの久しぶり〜!」
俺たちはギルドの屋外訓練場に来ている。
俺と向かい合うように立っている最愛の妹ティファニーは軽い口調で話しているが、体内から恐ろしい程の魔力が立ち上がっている。
学院の制服姿のティファはL字ガードに構えており、両足はやや広めのスタンスを取っている。
彼女のジョブ『超魔拳神』の力を充分に引き出すフォームだ。
俺たちを見て、訓練中の冒険者が手を止めて集まって来た。
うむ…見世物では無いんだが…
「ティファ、そんな短いスカートで模擬戦なんて、お兄ちゃん認めないよ。
着替えて来なさい」
「ダイジョーブ!
今日のは見られても良いパンツなんだ〜」
「いや、見られても良いパンツって何だよ!
ティファがそんなはしたないコになったなんて、お兄ちゃんは悲しいぞ!」
「スキ有り!」
ティファの姿が消えたと思ったら、腹を吹き飛ばされたような衝撃を感じた。
ティファの高速ボディストレートにより、あっという間に俺は訓練場の端まで吹き飛ばされたのだ。
うえぇぇえ!!イデエ!い、息が出来ねえ!
地面をのたうち回るしか出来ない…ヤバいぞ、ボディ一発でこのダメージか!?
正直ティファを舐めてたかも知れない。
「今の一発で死なないなんて、さすがお兄ちゃん♩」
既に俺の近くに立っているティファが、俺を見下ろしている。
お、おまえ…めっちゃ透け透けのパンツ履いてるじゃねえか!
どこが見られても良いヤツだ!
「そんなパンツ、お兄ちゃんは許さんぞぉぉお!!」
余りの怒りに跳ね起きた俺は、模擬戦用の木剣を袈裟斬りに振るった。
「危なっ!ちょっ、お兄ちゃん!
可愛い妹に何て攻撃するの!?」
ティファが咄嗟にステップバックをして木剣を躱す。
クソ、めちゃくちゃ動きが速い!
だが、俺はまだ魔力で身体能力強化をしていない。
対して、ティファニーは既に魔力による強化を使ってのスピードだ。
いつまでも妹に舐められる訳には行かないので、俺も身体能力を強化して、ティファの懐深くに踏み込んだ。
「は、速!えい!」
俺のスピードに一瞬驚いたようだが、直ぐに踏み込んだ俺に左のショートアッパーを繰り出すティファ。
だが、甘い!
バランスを崩した状態ではパワーが乗らない。
即座にティファの左拳を木剣で弾き、ガードが開いた事でガラ空きのボディに突きを放った。
「きゃああああ!!」
今度はティファが後ろに吹き飛んだ。
やや手応えが感じられなかったので、自ら後ろに飛んでダメージを逃したのだろう。
仰向けに倒れたティファへと距離を詰める…
オ、オイ!スカートが捲れてるぞ!
「は、早く隠しなさい!破廉恥だぞ!」
「いやぁぁあん、見ないでぇぇ」
可愛らしい言葉と裏腹に、スカートを直そうとしないティファ。
「お、おい、めっちゃスケスケだぞ!」
「ヤベェ!ペリ女美少女のパンモロヤベェ!」
「へ、ヘアが透けてる…だと!」
クソ!外野のヤローどもが見やがった!
「テメエら!俺の妹のパンツ見てんじゃねえ!
目ん玉くり抜くぞゴラァ!!!」
俺の一喝に顔を青くした男どもは、一目散に逃げ出した。
ふぅ…コレで一安心か。
「パンツくらい良いじゃん。
減るもんじゃ無いんだしっ!」
いつの間にか起き上がったティファが、右ストレートを放った。
スリッピングアウェイで直撃を回避したが、頬が焦げ付いている。
追撃を回避する為に、後方にジャンプして距離を取った。
「火属性に変換したのか。
コントロール出来ているみたいだな」
「今のを避けるなんて、さすがワイルダー家史上最強で最カッコイイお兄ちゃんだね!」
うむ、ワイルダー家の家系図は見た事が無いので、これまでどれだけのお兄ちゃんを輩出したかは分からない。
でも、可愛い妹に過去最強・最カッコイイの称号を貰えたのはとても嬉しい。
「でも、次で終わらせるね」
ティファが、腰を落として右拳に魔力を集中させている…
コレはマズイな…広範囲攻撃なら訓練場が吹っ飛ぶぞ。
俺は急いで木剣に闇属性変換した魔力を纏わせ、自分の周囲には氷属性変換した魔力を展開する。
ダブルキャストは魔力消費が激しいが、そんな事は言ってられない。
木剣は魔力親和度が魔法剣の比じゃない程低い…が、やるしかない。
「行っくよおお!『お兄ちゃんの腕枕キボンヌ』!」
ティファが右拳を突き出すと、高密度に圧縮されて範囲がしっかりと俺に絞られた火属性魔力が打ち出された。
やはり凄まじい量の魔力が込められている!
「ク!『魔力撃:闇渦』!」
木剣に纏わせた闇の魔力を高速で渦状に巡回させて、ティファの『お兄ちゃんの腕枕キボンヌ』にぶつける。
闇魔力の渦がティファの火魔力を吸い込んで行く。
が、木剣では魔力同士の衝突に耐え切れず、粉々に砕け散った。
「ぐああぁぁ!!うあぢいぃぃぃ!!!」
俺は全身を業火に覆われ、その生涯に終わりを告げ…
パチン!
ティファが指を鳴らすと、全身の炎が霧散した。
なるほど…制御も火力も完璧のようだ。
「ティファは凄いな。まさか、氷の結界すら簡単にブチ破るとは…
お兄ちゃんの完敗だ」
「お兄ちゃんも、無詠唱でダブルキャストするなんて凄いよ!
それに、木剣じゃ無かったら、ティファの『お兄ちゃんの腕枕キボンヌ』も止められてたと思う」
うむ、技のネーミングセンスは父さん譲りなんだろうが、実力は父さんを遥かに上回っている。
制御も完璧と来れば、もう反対はしない。
「冒険者になる事もパーティー入りも認めるよ」
「やったぁ!お兄ちゃん大好き〜!!」
ティファが満面の笑顔で抱きついて来た。
うん、ウチの妹はマジで天使である。
「ただ、そんな短いスカートとそんな透けたパンツは履くなよ。
フシダラな恰好はお兄ちゃんは認めない」
「な、何さ!
全裸でカッコ付けてるお兄ちゃんなんかに、フシダラなんて言われたく無いんだからね!」
あ…服は全焼してましたか…




