71話 スタンピード ② (少し不謹慎なイラスト付)
「マズい!ドラゴンが予想以上に早え!」
俺は更に体内魔力を練り上げ、脚部を超強化して更に加速する。
(ヤバい!ドラゴンが飛行高度を下げている、もっと早く進まないと!
俺の脚いぃぃぃ、ぶっちぎれる程おぉぉ、大地を蹴れぇぇぇぇ!!!)
「キャアアアア!!助けぇぇえ…」
間一髪、俺は悲鳴を上げる女性冒険者を抱き抱えて、一足跳びでその場を退避。
刹那、女性が居た場所を抉り取るように、ドラゴンの巨大な頭部が振り下ろされた。
ふぅ、超強化を脚に集中させて正解だったな。
ただ、一瞬の超強化で脚がボロボロだ。
俺は異空間収納からエクスポーションを取り出し、両脚に振りかけた。
「もう大丈夫!斥候役ありがとう。
俺がドラゴンを引き付けるから、君は早く逃げて!」
「あ、、、た、助かって?
ど、どうもありがとうございます!このご恩は一生忘れません!」
「ははは。大袈裟だよ。
さぁ、早くみんなの所に戻って」
女性冒険者は頬を染め、目を潤ませながら何度もペコペコ頭を下げて走って行った。
余程怖かったんだろう。
GGYAAOOOOOO!!!
食事を邪魔されて怒ったっぽいドラゴンが、こちらに向かって飛翔して来た。
その向こうからは第1波を超える規模の魔物の群れが…
ドラゴンの相手をしながら広域殲滅魔法を使うのは厳しいな…
高速で飛んで来たドラゴンが、口を天空に向けてタメを作った。
「マズい、ブレスか。『魔力撃:聖槍』!!!」
即座に魔法剣に聖属性に変換した魔力を纏わせて、ドラゴンのアゴに向けて巨大な光の槍を放った。
相当なダメージを与えたようで、墜落したドラゴンが地面をのたうち回っている。
ゴゴゴゴゴゴゴ!!!
無数の炎の矢が、後続の魔物の群れに降り注いでいる。
恐らくシンシアの『ドラスティック・レイン』だろう。1km以上離れているのにこの威力か…弓神恐るべし!
さて、コレでドラゴンに集中出来るな。
「下賤な冒険者よ!下がるが良い!」
俺がドラゴンと交戦しようと構えた時、後方から野太い声が聞こえた。
振り返ると、数十メートル後方に陣形を組んで進撃して来る騎士団が居た。
先頭にいる豪奢な全身鎧を装備したオッサンが団長か。
「コレより先は我ら王宮騎士団が預かる!
見窄らしい冒険者よ、貴様はジャマだ!仲間の元へ帰るが良い!」
「ハァ、遅れてやって来て手柄を横取りか?
全く、王宮騎士団の格が知れるな」
「黙れ下衆が!さっさと去らねば国家反逆罪で捕縛する!」
「まぁ良いけどさ、アレは上位竜のイビルドラゴンだぞ?
お前ら死ぬと思うけど、頑張れよ」
高圧的なヤツらの態度にイラついたが、罪人にされるのは勘弁なので、俺はさっさとラフィ達の元へと引き返した。
後ろからダメージから回復したっぽいイビルドラゴンの咆哮が聞こえる。
「あなた、どうしたのですか?
まだドラゴンが暴れてますわ」
慌てて駆け寄って来たラフィが、怪訝な表情を浮かべている。
「あぁ、後は王宮騎士団が預かるってさ。
シンシア!攻撃やめていいよ。引き返すぞ!」
事態を呑み込めないのだろう。
他の冒険者達も続々と俺たちの近くに集まって来た。
「あの王宮騎士団のオッサンが、下賎な冒険者は去れってさ。
去らないと国家反逆罪で捕縛するって言われたよ」
俺が皆んなに説明すると、当然の如く全員激オコ状態に。
放送禁止な言葉を織り交ぜたワードが飛び交った。
「待てえぃ!!!この俺が国王に文句を言っちゃる。
魔導端末で話すから静かにしろ!!!」
満身創痍の父さんがそう言って魔導端末を取り出すと、スピーカーモードで国王らしき人と通話を始めた。
「おう、ゼルス!テメエ、ウチの息子の手柄を騎士団に横取りさせるたぁどういう了見だ!」
国王陛下を呼び捨てにしてらっしゃる…父さんは不敬罪で縛り首だろうな。
『な、何を言っておるのか分からぬぞ?
騎士団には冒険者達と共闘せよと命じたハズじゃ』
「何ぃ?ヨシュアは騎士団のヤツに、手出ししたら叛逆罪だと言われたんだぜ!
大体あんな軟弱な騎士団に…あ、ドラゴンに吹っ飛ばされた。
ホントに帰っていいなら俺らは帰るぜ」
『ま、待ってくれ、余とレイモンド殿の仲ではないか。
その騎士団長は降格に処する故、そのまま冒険者諸氏は討伐に当たってくれぬか?』
「ゼルスの頼みだし?まぁ、聞いてやらんでも無いが…ギルドに依頼を出した報酬の10倍は全員に出してもらわねえとなぁ?」
こ、この人、国王陛下から金せびってるよ…
嫁さんにボコられて血塗れの父さんを、後押しする声援がチラホラ聞こえるぞ…
『いや、10倍は王宮の財政的に…
せ、せめて5倍であれば、余のポケットマネーと財源から何とか集められるのじゃが…』
「はぁ、せっかく息子のパーティーには『聖戟の勇者』アマンダちゃんが居るのになぁ…
アマンダちゃんの『ホーリースラッシュ』なら綺麗にイビルドラゴンの首を落とせるし、素材も綺麗な状態で回収できるんだがな〜」
あ、アマンダをチラつかせて金をセビってやがる…
確かに基礎トレーニングに邁進して、完璧に聖闘気を使いこなせる今のアマンダなら、あの超硬質な鱗に覆われた首も一刀両断出来るだろう。
いや、それよりも重要な事が有る。
「なぁ父さん。イビルドラゴンの肉って美味いの?」
「あ?あぁ、アレか。
俺も昔に一回食ったきりだが…
確か毒が凄えけど、それがピリッと刺激的で病みつきになる旨さだったぜ」
「良し、じゃあ肉はウチが貰って残りを陛下に献上する!」
『な、何と…猛毒に侵されたあの肉を食すとは…さすがレイモンド殿の子息じゃ。
良かろう!では報酬は10倍にしよう』
何かゼルス陛下に驚かれたけれども、報酬10倍という事は討伐組は1人2千万ゲスも貰えるのか。
討伐組の士気がめっちゃ上がってるな。
「ではアマンダさん、イビルドラゴンをお願い致しますわ!
あなたはアマンダさんのフォローと、ドラゴンに襲われている騎士達の救出を!
後衛隊は第2波の群れに総攻撃で、残りの前衛隊は第2波を食い止めている騎士団のフォローをお願い致しますわ!」
お、ラフィが200人から成る冒険者を纏めたぞ!
Sランで名を上げてるラフィに反論する奴はいないようだ。
「あ、あの…私、日刊冒険者のコトブキと申します。
アマンダさんがドラゴンを討ち取る所を写真に撮っても良いでしょうか?」
何だよ、速攻で行かないとマジで騎士団全滅するぞ。
既に三分の一は死んでるのに…
「忙しいから勝手にしろ!でも、危ないから近づくなよ」
俺の言葉にコトブキは頷くと、何やらラジコン飛行機みたいな物を操り出した。恐らくドローンだろう。
アレに搭載したキャメラで撮るのか。戦いの余波で壊れなきゃ良いけどな。
モタモタしてられないので、俺はアマンダとともにイビルドラゴンの下へと向かった。
「ヨシュアが言ってた逆鱗に刃を入れるイメージで良いのよね?」
「分かってんじゃん。あんなドラゴンはアマンダだけで余裕だろう。
俺はあの騎士どもを救い出すからヤツは任せた!」
「オッケ!まかしといて!」
お互いの拳を合わせて、俺とアマンダは二手に分かれた。
「モアライト!」
聖闘気を纏っている状態で光魔法を使った事により、アマンダの身体はいつも以上に眩い光を放っている。
ドラゴンは光る物を追う習性があるので、ヤツの注意を惹きつける事が出来る。
救出が終わるまでは、アマンダが引き付けてくれるようだな。
幸い、ドラゴンの討伐隊50人の内、30人はまだ息があるようだ。
早速ドラゴンに近い物から救出を始めた。
偶に俺に向けて振り下ろされる爪による攻撃を、ヒラリと躱しながら救出を続けていると、さっきの団長らしきオッサンを発見。
「キ、キサマ!これは明らかな叛逆罪だぞ!」
「ああ、ゼルス陛下がアンタは降格だってさ。
んな事より、お前の身勝手な判断のせいで多くの騎士達が命を落としたんだ!
少しは自省の念を持てや!」
俺の叱咤が響いたのか、団長らしきオッサンは漸く大人しくなり、倒れ臥す部下の骸を見て悔しそうに歯軋りをした。
コイツの断罪は偉い人達がやってくれるだろう。
粗方救出したので、アマンダに合図を送ろうとしたが、1人のフラフラの騎士がドラゴンへと向かって行く。
「おい、アンタ!後は勇者に任せて早く下がれ!」
俺はボロボロの騎士を後ろから抱えて、後方へ退避させようとした。
「ええい、離せ!冒険者如きに助けられるなど、我が騎士爵家末代までの恥!
最後までドラゴンに抗い、名誉の死を遂げるのだ!」
「バカな事言ってんじゃねえ!死んだら名誉もクソもねえだろうが!」
俺の言葉も聞かず、ドラゴンに突進しようとする騎士を、後ろから羽交い締めにしようとすると…
ムニッ
なんか柔らかくも弾力に満ちた感触が…
コイツ、女か!
「あんっ、ちょっ、キサマ!わたしを嬲るか!」
ヤバっヘルムを被ってっし、後ろ姿じゃ分からんかった!
つうか、何でオッパイが丸出しなんだ?
「くっ、殺せ!
卑しい冒険者に嬲られたなど、先代に顔向け出来ん!
殺さぬなら自害する!」
「おい!暴れるな!
ちょ、オッパイが…クソ!」
俺は咄嗟に当身をして、女騎士を気絶させた。
つーか、何で器用にプレートアーマーの胸部だけ砕かれてんだよ。
犯され体質なんだろうか?
無事、全員を後方に退避させた所で、アマンダにハンドサインを出した。
瞬間、アマンダの聖剣が眩い光を放ち…
「あ・な・た…
その半裸の女性の胸をいつまでお触りに?」
背後からドラゴンとは比べ物にならない殺気が…
あ、ヤベ。一瞬で脳を揺らされた…死んだコレ。
さっき、ラフィが母さんに教わっていた人体破壊術をこんなに早く使われるとは…
◆◇◆ イラストは、ラフィの脱ぎたてパンツをクンクンする直前のヨシュアのイメージ画です ◆◇◆
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