70話 スタンピード ①
「マジかよ…凄え大量に湧いてるな」
俺は今、パーティーメンバーと共に王都東門からやや離れた草原地帯に来ている。
地平線の向こうから数え切れない数のモンスターが、王都に向かって押し寄せているのだ。
『スタンピード発生』
今から2時間前、ちょうどラフィと子作りに励んでいる時に、緊急アラートが街のあちこちで鳴り響いた。
俺は早さに自信があるので、秒でフィニッシュ。
グッタリしているラフィには留守番をしてもらって、速攻でギルドに向かった。
ギルドには大勢の冒険者が集まっており、ギルドマスターから今回の緊急クエストが言い渡された。
Bランク以上のパーティーは、モンスターが押し寄せて来る東門前で迎撃に当たり、Cランク以下は衛兵と協力して王都民の避難誘導に当たる事になったのだ。
王都には避難用地下シェルターが数カ所に有るので、人的被害は抑えられるだろう。
後は俺たちの街を破壊されないように、クソったれモンスターどもを殲滅するべく、グッタリするラファにポーションを飲ませて、『豊穣の翠』総出で東の草原へとやって来たというワケ。
それにしても、Sランクパーティーになって早々にスタンピードが起こるなんてなぁ…。
「ガーッハッハッハ!倅よ、安心しろ!
この程度はパパの手にかかれば瞬殺だ!」
父さんと母さんも来たのか…2人とも冒険者は引退したハズだが?
父さんがシュパッと駆け出し、前線よりも100メートルほど前で立ち止まると、腰を落として魔力を練り上げる。
父さんも歳をとったな…ヨチヨチ歩き並みに動きがトロい。
「おお!あの人『暴走超特急』の"シュガー"・レイじゃねえか?」
「マジだ!レジェンドの技が見れるなんて…そうだ、動画で撮っておこうぜ!」
「レイ!アンタいつになったら奥さんと別れんのよ!
責任取らないと許さないから〜!」
おお、冒険者たちがざわつき始めたな。
流石は元SSSランクという事か…いや、何か非常にマズいことをカミングアウトした女の子がいたぞ。
ヤバい!母さんから凄まじい殺気が…
コレが父さんの生涯最後の戦いになるのか。
「やっぱりよぉ!祭りの始まりはド派手な花火を打ち上げねえとなぁぁぁ!!!
うおぉぉぉお!『グリーン車キボンヌ』!!!」
父さんの必殺技『グリーン車キボンヌ』が放たれた。
コレは現役時代、遠征に行く際に魔導特急のグリーン車を取って欲しいと、ギルドの偉いさんにゴネた時に編み出された技だ。
この技によって、父さんに『暴走超特急』の二つ名が付いたという。
まぁ、単に大量の無属性の魔力を拳から突き放つ脳筋技なのだが。
父さんの拳から放たれた必殺技は、迫って来る魔物群の一部を吹き飛ばした訳だが…
「父さん、耄碌したなぁ…
全然ド派手じゃないじゃん。打ち上げ花火じゃなくて線香花火だよアレ」
「何だとテメエ!
お前はもっとド派手な花火が上げられるっつうのか?」
父さんも安っぽく吼えるようになったもんだ。
「ラフィ、アレをやろうか。
まだモンスター供とかなり距離があるから、ここまで余波は来ないだろうし」
「はい!あなた!
お父様、もう少し後ろにお下がりになって」
俺は大量の魔力を土属性変換して、ラフィの精霊達が好む波長へと調整して行く。
この調整は何度もラフィを犯して、ラフィの魔力波長を感じている俺にしか不可能な調整だ。
そこにラフィの火の精霊イフリートの獄炎が融合する。
「「融合神霊術『ギガメテオインパクト』!!」」
上空に獄炎に覆われた巨大隕石が出現して、モンスターの大群のど真ん中に落ちて行く。
瞬間、目が眩む閃光と凄まじい爆発音が鳴り響いた。
一拍おいて、周囲が突風による砂煙に覆われ、収まった時にはモンスター群の9割以上が消滅していた。
「な、なぁ!あれは神級魔法か!」
「ヤベエェェ!!!殆ど倒しちまったぞ!?」
「こ、コレが『巨乳愛好家』ヨシュアと『殲滅の女神』ラフレシア…」
む…冒険者連中の騒めきの中に気になる言葉が有ったな。
いつの間に俺の二つ名が『巨乳愛好家』に?
まぁ良いか。
「おぉし、道は開いた!
アマンダ!ハルト!特攻隊を率いて残りをぶっ叩いてくれ!!!」
「了解!任せといて!」
「ワッシャッシャ!!!任せろ兄弟!!!」
生き残りのモンスターが数百メートルまで近づいた所で、アマンダとハルトが他パーティーの前衛を率いて駆け出した。
正に一方的な虐殺だった。
アマンダの聖属性最高技『ホーリーバースト』の一閃で数百の魔物が消し飛び、ハルトが振るう特大戦斧が大量の魔物を叩き潰して行く。
特攻隊長をアマンダに取られてムクれたエレナも、深淵流七ノ太刀:乱レ千雨による無数の斬撃で死体の山を築いた。
第1波の殲滅は30分もかからずに終了した。
「どうだい父さん、若造のパワーってのも父さん達に引けを取らないだろ?」
そう言って俺が父さん達の方へ振り返ると…顔が倍の大きさになる程ボコボコにされた父さんが倒れ臥していた。
ああ、さっきの女性冒険者の言う責任を取らされたワケか…
「シンシア、ちょっと第2波の前に魔力を回復したいからさ、ラフィとあっちの茂みでナニをして来る」
「ハァ…まぁあんな魔法使ったから仕方ないけどさ、ヨシュア様のスキルってホントにアレしないと効果発動しない訳?」
「う〜ん、股間をクンクンしても発動はするけど、回復量が少ないんだよね」
「あなた、早く行きましょう!ね?
今度は後ろ手に縛られながら、荒荒しくあなたに奪われたいですわ」
結婚して以来、日に日に性欲が増しているラフィに急かされ、草むらの方へ。
防音と防護の二重結界を貼り、認識阻害魔法をかけた。
コレで絶対に見られる事も、声を聞かれる事もない。
さて、エロい奥様をたっぷり可愛がってやるか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「お待たせ。まだ第2波は来てない?」
「アラ、随分早かったね。
もしかして気になったから途中で止めて来たの?」
「………」
シンシアは早いと言うが、多分冗談か何かの類かな?
俺の最長記録を更新したのだが…
「ヨ、ヨシュア…相変わらず早え…な…
た、頼むから、ママを止め…て…」
父さんが血塗れになって地を這っている。
母さんにボコボコにされたんだな…母さんは父さんを見下ろしながら凄まじいまでの魔力を練り上げているな…
多分、父さんに『ギガメテオインパクト』を上回る神級魔法を打ち込むつもりだろう。
「お母様。後学の為、どのようにお父様を破壊されたのか伺ってもよろしいでしょうか?」
「あらぁ〜、ラフィちゃん。そんなに心配しなくても、ヨシュアちゃんはラフィちゃんにメロメロだから大丈夫よ?
このド畜生と違って浮気はしないわ」
「いえ、ヨシュアさんは無自覚に女性を虜にしてしまいますわ。
押しに弱い所もお有りですし、油断は禁物ですわ」
ラフィ…お前もいずれはこんなになってしまうのか…?
マズい、母さんがラフィに人体の効率的な破壊の仕方を教え始めた。
誰かこの2人を止めて〜!
『ド、ドラゴンが…群れの中にドラゴンがいるわ〜!!!』
斥候に出ていた冒険者だろう。拡声魔法でドラゴンの存在を教えてくれた。
確かにコレ程の大規模なスタンピードで有れば、上位の竜種が率いていてもおかしくは無い。
程なくして、遠方から必死に戻って来る斥候の女性と、女性を追う大型のドラゴンが見えた。
上位ドラゴンは、魔力の高い人間を好んで食する。
(まさかドラゴンが現れるとは…コレは想像以上に厄介な事態かも知れない。
いや、それよりも、あの女性冒険者を早く助けなければ!)
俺は斥候役の女性冒険者を助けるべく、ドラゴンに向かって駆け出したのだった。




