7話 ワイバーン肉でパーティー
俺は今、パーティーハウスの台所で肉の下拵えをしている。
ラフィが手伝いを買って出てくれたのは嬉しいが、ワイバーン肉の事をまるで分かっていない。
「ヨシュア様、こ、これは舌では有りませんか?
食べられるのでしょうか?」
「はぁ…これだから素人は…
良いかい?タンが無ければ始まらないんだよ?両サイドの部分はこう、な?これくらい薄く切るんよ。
で、ここは肉厚に切る。ホラ、やってみ?」
俺は手本を見せて指示を出すと、ラフィはぎこちないながらも指示どおりに肉を切り分ける。
うむ、まぁ及第点だな。
「ヨ、ヨシュア様…それは心臓では有りませんか?
何故…その、ミルクに?」
「あぁ、牛乳にしばらく漬けておくと臭みが抜けるんよ。
俺たち玄人には常識だぜ?」
「し、心臓を…食べるのですね…」
何やらラフィの元気が無くなっている気もするが、構って居られない。
異空間収納魔法は通常時間の干渉をうけないのだが、ワイバーン肉の内今日食べる分だけは、時間の流れを早めて熟成してあるのだ。
食べ頃の肉を切り分けるのにモタモタして居られない。
ラフィには野菜を切ってもらい、俺はちゃっちゃと下拵えをして行く。
肉厚に切ったタンは塩胡椒で味付けをして、香草を乗せてオーブンに入れた。
同じタンでも部位によっての違いを楽しんでもらう趣向だ。
さて、全ての準備が整った。
全員成人なので、昔入手して異空間収納に入れておいた飛び切りのシャンパンと赤ワインを取り出し、赤ワインは澱が入らないようにデキャンタに移す。
乾杯はやはりシャンパンだろう。
全員のシャンパンフルートに注いだところで、さて俺から一言言わんとな。
「みんな、肉の世界へようこそ。
4人での初クエスト成功を記念して、今夜は焼肉パーティーだ!
みんなジャンジャン食って飲んでくれ!
乾杯!!」
「「「乾杯!!!」」」
七輪の炭火が充分起きた所で、先ずは薄切りのタンから焼いて行く。
コレはシンプルに塩のみだ。
エレナは最初「ベロは食べたくないの」と言っていたが、タンの焼ける匂いに引かれて一口食べると、目を見開いて「ウマウマなの!!」とガッツきだした。
ラフィとシンシアもかなり気に入ったようで、あっという間にタン塩は無くなってしまった。
そこで、一旦焼きを止めて、じっくりグリルした肉厚のタンを提供する。
「同じタンとは思えませんわ!!」
「うわぁ、口の中で柔らかく解けていく!」
「ウマウマなの〜!!!」
あぁ、美少女達の幸せそうな顔は見ているだけで癒されるなぁ…
続いて赤身をしっかりと味わえる腿肉を特製のタレで食べて貰ったのだが、エレナのウマウマレーダーは止まる事を知らず、焼いたそばから食していく。
この小さな体のどこに吸い込まれて行くのか不思議だった。
続いて牛乳に漬けて臭みを抜いたハツを焼く。
コレには一番難色を示していたハズのラフィが最も食いついていた。
タレ作りが間に合わず今日は出せなかったホルモンなんかも、もしかするとラフィの好物になるかも知れない。
特製ダレに漬け込んだ骨付きカルビにどハマりしたのはシンシアで、残った骨までチュパチュパしていた。
さて、ワイバーン焼肉は大好評で、俺も焼き手に徹した甲斐があったのだけれど、食と共に酒も進んで行くもので…
「ふひぃ〜、オイ、ヨテュア。こっち来らたいよ〜。
ホラ、チュウ〜」
「うぅぅぅ…敬愛するヨシュア様に、大喰らいの下品な女だと思われてますわ…ぅぅぅ…」
「うぇぇぇぇ…ヨシュアぁぁ、ギボヂワルイの〜」
キス魔と化したシンシア、自分を卑下しまくって泣き出すラフィ、飲み過ぎて嘔吐しそうなエレナ…
うむ、中々にカオスではあるな。
キスを笑顔でかわしつつ、ラフィを慰め、ゲロする前にエレナをトイレに連れて行く。
うん、この子らには酒は厳禁だな。
悪戦苦闘しながら皆んなを寝かしつけた後、俺は1人大広間で残った肉をつまみながらワインを飲みながら物思いに耽る。
クエストよりも酔っ払い3人の介抱の方が疲れたけど、こうやってみんなでワイワイ騒ぐのも楽しいな。
『宵闇の戦乙女』にいた時は忙しすぎて晩飯抜きで雑事をこなす事もザラだった。皆んなと一緒に食卓を囲んだのはパーティーを組んで最初の半年だけだ。
ラフィ達とは今の関係を続けて行きたいな…
なんだか眠たくなってきた…
◇◇◇◇◇
翌朝、起きてきた3人にめちゃくちゃ謝られた。どうやら昨日の事は何となく覚えていたらしい。
そんなに気にする程の事では無いんだが。
さて、今日も一日冒険者稼業を頑張りますか!




