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69話 まさかの昇格

 


「ホーリースラッシュ!」



 アマンダの聖剣による強烈な一撃が、ミスリルゴーレムの魔核を切り裂いた。

 一から鍛え直すと言って朝の訓練に人一倍精を出していたのだが、確実に身に付いている事が見て取れる。



「エレナも負けてられないの!

『深淵流八ノ太刀:閃突』なの!」



 対抗心剥き出しのエレナの謎刺突が、同じくミスリルゴーレムの魔核をブチ抜いた。

 謎刺突と言ったのには理由が有り、エレナの『名刀丸』の刀身が伸びたように見えたのだ。

 どういう原理で伸びたのかは全く分からない。


 まぁ、今の技は完全に謎だったが、剣神になってからも奢らずに、俺やアマンダと剣の稽古に励んでいるエレナ。

 彼女もまた、急激に上がっているステータス値に振り回される事なく、力を自在に使いこなせているようだ。



「エレナちゃん師匠、今の技超ヤバくない?

 ねぇ、どうやってやるの?」


「エヘンなの!閃突はこう、ズンっ、ズズッ!なの!」


「あ、そっか。ズンっ、ズズッ!ね。

 あ、ホントだ!流石エレナちゃん師匠!やっぱ教え方最高に上手いわ〜」



 うん。今の説明で分かるんだから、天才同士って凄いよね。

 ちゃんとアマンダの聖剣が伸びたように見えるし。


 そうそう。

 今日俺たちは、Sランクモンスターのミスリルゴーレムの襲撃を受けたミスリル鉱山の奪還クエストを受けている。

 衛兵の方々の必死の奮闘のお陰で死者が出ていない事がせめてもの幸いだが、早く奪還しなくては鉱山付近の住民達の生活が困窮してしまう。


 俺たちはスピード重視で、既に30体以上のミスリルゴーレムを倒したのだが、どうも違和感を感じる。



「ねぇ、ラフィ、ヨシュア。何だか通常個体よりも強い気がしない?」



 アマンダも異変に気付いたようで、眉を顰めながら問いかけて来た。



「アマンダのおっしゃる通りですわ。変異体がいるのかも知れませんね」


「だな…厄介な事になる前に、先に変異体が居ないか探ってみよう」



 変異体とは、高濃度の魔素や瘴気を取り込んだ事で進化した個体の事だ。

 変異体は周囲にいる個体をも強化する事がある。

 また、ミスリルゴーレムの変異体は女性の敵とも言われるイヤな攻撃をして来るので、俺が早目に叩くのが一番だろう。


 俺とラフィは即座に索敵を行った。



「見つけた!じゃあ、俺がサクっとやって来る」


「あなた、私もご一緒致しますわ!」


「いや、大事なラフィを、ヤツの攻撃に晒す訳に行かない。

 俺だけで行ってくる」


「あなた…早く戻って来て下さいまし。

 私、離れ離れは寂しいですわ」


「ハァ…こんな所で惚気ないでよね。

 ヨシュアは人外だから大丈夫よ。アタシ達は通常個体を潰さないと」



 俺とラフィの夫婦のやり取りを、ため息混じりのアマンダが止めに入った。

 まぁ、仕方ない。

 俺は反応を感じた高山奥地へと猛ダッシュした。



「お、アイツか…やべえな」



 体が液体金属のようになっているミスリルゴーレムがいる。

 アイツが変異体で間違いない。

 予想より広く攻撃範囲を張っているようだ。


 突然白銀の液体が地面から吹き出して、触手のように俺へと迫って来た。

 コレがヤツの厄介な所だ。

 変異体は地面に液状化した自分の体の一部を溶け込ませ、そこに足を踏み入れた者に液体金属触手で攻撃して来る。


 触手をギリギリで躱すが、次々と地面から触手が伸びて来た。



「クソ!何発か掠っちまった!」



 掠めた部分から徐々に服が溶けて行く。

 コレこそが女性の敵たる所以である。

 この触手は丁寧に女性の衣服のみを溶かし、全裸にした女性を何故かM字開脚になるよう拘束する。

 そして、触手を口や鼻等体中のあらゆる穴に侵入させ、じわじわと殺して行くのだ。


 愛するラフィに、こんなヤツと対峙させなくて本当に良かった。



「『魔力撃:氷焔』!」



 俺は氷属性の魔力と火属性の魔力を魔法剣に込め、変異体の方へと連続して5回振るった。

 氷の斬撃波と炎の斬撃波が、交互に変異体へとヒットする。氷と炎の攻撃を交互に喰らった変異体は、所謂金属疲労のような状態になっている。


 俺は一足飛びで距離を詰め、袈裟斬りに剣を振るうと、脆くなった変異体の胸部にさっくりと刃が入った。

 そのまま魔核を穿つと、ミスリルゴーレムの形を模っていた液状化ミスリルが形を成さなくなり、地面へと広がって行く。


 うむ、見事に討伐完了である。

 念のため索敵魔法で一帯を探ったが、通常個体はラフィ達が討伐し終えたようで、魔物の魔力反応は無くなっていた。

 変異体の魔石を回収した俺は、急いで最愛の妻の元へダッシュしたのだった。



「ちょっ、な、な、何てカッコしてんのよ!!」

「イヤーん!ヨシュア様が露出狂になったの〜」

「ちょっ、ヨシュア様!早く何かで隠してよ!」

「あなた…こ、ここでするのですか?

 そ、その…私は岩陰でお願いしたいのですわ」



 皆んなの元へ戻った俺は、アマンダ、エレナ、シンシアの言葉を聞き、ミスリルゴーレムに下半身をスッポンポンにされていた事に気付いたのである。


 うん…ラフィは夫婦の営みに積極的なようだな。よし、服を着る前に、ラフィと岩場の方へ行きますか!



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「何か、前より『フェロモンイーター』で流れ込んで来る魔力が少なくなった気がしない?」



 王都への帰りの馬車の中で、シンシアが皆んなに問いかけて来た。

 先程の俺とラフィの野外プレイの時にそう感じたのだろう。

 俺にも実はその実感は有った。一見スキル効果が落ちたように感じるが、実はそうでは無い。



「恐らく、皆んなの魔力ステータスの限界値が近づいているからだと思う。

 だが、安心してくれ。魔力増加が無くなった代わりに、魔力を消費している場合、魔力量が完全回復するようになっている」



 俺は魔力撃を使うので、プレイ中に魔力が回復する様に気付けたのだが、体内魔力を効率的に使えるシンシアは回復に気が付かなかったらしい。



「え?あら、本当ですわ!私の魔力は半分程になっておりましたのに、全回復しているのですわ!」



 俺の言葉を聞いて真っ先に驚いたのは、まさかのラフィだった…

 うん、それだけ俺との行為に夢中だったという事だね。うん、いつかのポンコツ記者の、妻を満足させてない説は間違いだと立証出来た訳だな。



「何でドヤ顔してんのよ。気持ち悪い。

 つか、その効果意味なくね?クエスト中に魔力が少なくなる度に、アンタとラフィがセックスする為に抜けなきゃならんじゃんね」



 アマンダにビッチ口調でダメ出しされてしまった…

 だが、彼女は大きな勘違いをしてなさる。



「ククク…アマンダよ、それは違うぞ。

 俺の『フェロモンイーター』は、そういった愛の行為以外でも発動する。

 例えば、異空間収納に超絶可愛いラフィの脱ぎ立て下着を入れておいて、皆んなの魔力が少なくなる度にクンクンすれば、セックス程とは行かないまでもある程度は回復可能なハズだ」


「うわっ、クエスト中に嫁のパンツの匂いを嗅ぐとか、マジヤベェ奴じゃん」


「ヨシュア様がヘムタイになって行くの〜!」


「マジで引くわぁ…二つ名が『パンツ嗅ぎ男』とかになっても、ヨシュア様は平気なの?」



 俺の天才的なアイディアが、盛大にダメ出しされてしまった……た、確かに、クエストの最中に嫁のパンツをクンクンするってヤバいよな……ヤバみんだよな…。



「じゃ、じゃあ、ラフィの脇汗が染み込んだシャツをクンクンするのはどうだろうか?」


「な、何か、更にヤバい方に行ってる気がするんだけど…」


「ヨシュア様の痴れ者度が上がった気がするの!」


「うん、脇汗は無いよね〜」


「私もそこまで行くと、流石に擁護出来ないのですわ」



 俺のニューアイディアは、更なる女性陣の不興を買ったようだ。

 ま、まさか、ラフィにまで非難の目を向けられるとは……コレはどうにか挽回をしなければ!

 俺は慌てて懐からタバコを取り出し、ジッポーで渋く火を付けた。



「ふーっ、只のジョークだよ。真に受けないでくれよな…」



 良し、漢っぽく決まったゾ!これで誤魔化せたハズ。



「ねぇ、カッコつけてタバコふかしたくらいで、誤魔化せると思ってんの?」



 アマンダの鋭い突っ込みがクリティカルヒット。

 俺の精神的HPがゴッソリ削られた……。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「は?何でSランに昇格になんだよ!?」



 ギルドに戻り、クエストの達成報告を終えた我々に、ギルド長のドミンゲスから『豊穣の翠』の昇格が言い渡された。

 前回あれ程規律は大事だと言ったのに、何故こんな事に…。



「ヨシュアよ、良く考えても見ろ。『豊穣の翠』の5人中2人がSランク、更にはSランダンジョンの完全踏破。

 しかも、レッサーヒドラ討伐のフィニッシャーはシンシアなんだろ?

 これで実績不足なんて有り得ねえ。無論、ギルド本部の会議でも満場一致で特例でのSランク昇格は通ってんだ。

 本日付で、『豊穣の翠』はSランクパーティーとする。

 因みに、『ヒャッハーズ』は昨日付でSランクに昇格してある。

 2つのパーティーバランスを考えても、お前らの昇格は妥当だろう。これは決定事項だ」



 うぉぉぉ、ドミンゲスが完全に言い切りやがった…決定事項とか、もうゴネても覆らないヤツだろうが。



「やったね、ラフィ!SSランクまであと一歩だよ!」


「そうですわね!ああ、ここまで紆余曲折ありましたが、今までの苦労が報われたのですわ!」


「わーい!エレナもお姉さま達と一緒にSランクなの!Sランクになったら、お菓子を一杯食べられるの!」



 オリジナルメンバーのシンシア、ラフィ、エレナは喜びを噛み締めている。

 これ以上俺がゴネて、彼女らの気持ちに水を差す訳には行かないな。

 正直、俺以外の4人はSSSランク並みに強いし、単純な戦闘力だけなら災害級の魔物の討伐も可能だろう。



「おし、じゃあ『ヒャッハーズ』も呼んで、お高めのレストランで昇格祝いの宴会と行きますか!」



 俺の提案に、皆んなが喜んでくれた。

 その後、『ヒャッハーズ』も交えて、俺の奢りで大宴会となったのだった。



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