68話 記者会見
「ラフレシアさん!勇者をパーティーに加えた理由を…」
「アマンダさん、追放したヨシュアさんのパーティーに入った事をバッシングされてますが…」
「ヨシュアさん、アマンダさんは愛人だと言う噂がありますが…」
今日はアマンダを迎えた始めてのクエストという事で、Sランクダンジョン40階層ボス討伐のクエストを受けて来た。
クエスト自体はサクッと終わり、何と最下層ボスも討伐するという上々の成果を残したのだが、ギルドの前で取材陣に囲まれてしまった。
何なの?この記者達のどうでもいい質問。
「そんな一遍にごちゃごちゃ聞かれても分からんわ!
他の冒険者達の迷惑だからさっさと失せろ!」
俺たちは記者連中を押しのけて、何とかギルドの中に入った。
ギルド内に報道陣が入るには、特別な手続きを踏まなくてはならないので、取り敢えず入ってしまえば一安心だ。
「はぁ…それにしても、しばらく外に出られそうに無いな。
晩飯は酒場で済ませるか」
「その方がよろしいですわ」
「何か、アタシが入ったせいで迷惑かけてるよね。
本当にごめんなさい」
うぅむ、やはりアマンダらしくない。
こんなに人に頭を下げるヤツじゃなかったのに。
「まぁ、気にしても仕方ないでしょ?アマンダは別に悪く無いんだし、あんな連中無視しておけば良いのよ」
「アマちゃん、元気出すの!」
シンシアとエレナもアマンダを気遣ってくれている。
それでも、アマンダは申し訳無さそうに項垂れたままだ。
コレはいかんな。
「じゃあ、いっそ正式な記者会見をするか。
その方が、いつまでも付きまとわれなくて済む」
という事で3日後…ギルド長のドミンゲスも協力してくれて、ギルド内の会議室で記者会見と相成った。
記者やカメラマン合わせて100人くらい集まってる…
代表して俺が事の経緯を説明する事にしたんだが…凄え緊張するな…
『え〜、取り敢えず順を追って説明する。
先ず、アマンダ達が一方的に俺を追放したと報道されているみたいだが、それは完全なる誤解だ。
俺が抜けた時の事だが、事前にちゃんと『宵闇の戦乙女』のメンバー全員で話し合って、考え方の違いが埋まらなかったので、俺は合意の上でパーティーを脱退した。
離脱手続きも俺自身が行なったし、それについてはギルドの受付の女性も確認している。
次に、アマンダが『豊穣の翠』に加入した経緯だが、『豊穣の翠』には前衛が足りなかった。
俺はサポートを得意とする中衛だし、リーダーとシンシアは後衛だ。
そこに、アマンダがパーティーを解散したという情報が入ったので、俺とリーダーがアマンダに直接オファーしに行ったんだ。
前のパーティーでは多少意見の食い違いは有ったけど、俺も彼女も変わらずお互いを仲間だと思っている。
目指す場所も同じという事も有って、アマンダは快く俺たちの申し出を受けてくれた次第だ。
で、アマンダが愛人とかいう報道だが、こんなものは完全なデマだ。
俺は妻以外の女性と肉体関係を持った事は一度もない。
アマンダを冒険者として尊敬しているが、恋愛関係は一切ない。
で、何か質問は?』
俺が魔導マイク片手に経緯を説明すると、記者達はザワザワしていたが、やがてパラパラと質問の手が上がった。
進行役のギルド職員が指名した男性記者に、魔導マイクが手渡される。
『デイリー冒険者のザコエです。
ヨシュアさんは奥様と親密になるまで童貞だったという事でしょうか?』
何かと思えば下らん質問だ。
『童貞でしたが何か?』
『いや、経験が少ないと奥様も不満が溜まるのでは無いかと…』
『へぇ、じゃあアンタは奥さんを満足させてるの?
奥さんが満足しているフリをしているかも知れないよね?
アンタがただ自己満足に浸っているだけで、奥さんが内心どう感じているか分からないよね?』
『あ、いや…それは…』
『大体夫婦の絆って性交渉だけなの?
俺は先日、妻と展望台で夕暮れに染まる街並みを見て、凄く幸せな気分になった。
妻と手を取り合って眺めた夕焼けは、今まで見たどんな光景より感動的だったよ。
1人で見ていても絶対にあんな感動は無かったと思う。
そう言った日々の何気ない事を一緒に経験して、絆は深まるんじゃないの?』
『あ、いや…そういうつもりでは』
男性記者は変な汗をかいて言葉に詰まり出した。
『下らん質問をして、想定外の事が返って来たらモジモジしてか?
そんなんでよく記者なんて言えるな?
夫婦の話のついでと言ってはなんだが、冒険者同士の絆も根底は同じだ。
仲間と共に困難に挑戦して、お互いに足りない所をカバーし合って、その困難を乗り越える事でパーティーメンバーの絆は深まっていく。
俺は今でもアマンダ達と初めて挑んだクエストの事はハッキリと覚えてる。
達成した時の喜びも、初めて皆んなで手にした報酬も。
例え一時意見が衝突して、別の道に行ったとしても、根っこにはあの時の絆が残ってるんだ。
再びアマンダと当時の目標に向かって歩める喜びを、下らんゴシップで邪魔されたく無いな』
ふん、下らん記者供も随分大人しくなったな。
それでもまだ半数くらいは手を挙げている。
ギルド職員がマイクを渡したのは、卑屈な笑みを浮かべる胡散臭い男の記者だ。
『アマンダさんに質問なんですが、元メンバーのソニアさんとサーシャさんが現在指名手配中ですよね?
アナタも何らかの犯罪行為に加担していたんじゃ無いですか?』
またクソみたいな質問が出たな。
ソニア達の事は昨日ドミンゲスから聞いて居たのだが、元々はイレギュラーダンジョンの依頼をギルドを通さずに、マンタ・プリトス伯爵から裏ルートで受けた事が問題になったらしい。
所謂、裏営業問題である。
『それについては、ソニアが勝手に裏ルートで申請した物で、アタシは一切関与してないわ。
そもそも、イレギュラーダンジョンの探索はアタシは反対してたしね。
ただ、『宵闇の戦乙女』の元リーダーとして、管理責任はあるわけだから、アタシは1ヶ月の謹慎をしていたの。
ソニアとサーシャも反省して、冒険者ライセンス剥奪という厳しい処分を甘んじて受け入れているわ』
アマンダが再起不能だった事は極秘扱いとなっている為、今アマンダが返答した事はギルド側が描いた絵図である。
『裏営業問題以外にも、サーシャさんとソニアさんは反社会的組織から金銭を受け取っていたと言う報道も有りますが、アナタもそれに絡んで居るのでは?』
『本当にタチの悪いブン屋だなぁ。
アマンダが、反社から金を貰っていたって言う確たる証拠は有るのかい?』
俺は余りに程度の低い質問にウンザリして、アマンダの代わりに答えた。
コイツらは記事を面白おかしく書き立てれば良い連中なので、俺が矢面に立って批判されれば済む話だ。
ワザと喧嘩腰に問答して、矛先をアマンダから俺に向けよう。
『いや、それは…確証って言うか、同じパーティなら当然そう言う事になってるんじゃ無いかと…』
『アンタ、まともな教育受けてんの?
証拠も無いのにアンタの推論を誌面で発表するとか、名誉毀損も良い所だ。
大体、サーシャ達が反社とつるんでいたって記事の裏をアンタは取った訳?』
『い、いや…ですが、事実報道されている訳ですし…』
『へぇ、ゴシップ誌に誤報は100パー無いんだ?
何なら法廷で戦おうか?ロクに裏取りもしていない記事を持ち出して、これだけの報道陣の前で俺たちの品位を貶めるような事を言ってるんだ。
アンタにも、法廷で争う覚悟は有るんだろ?
他にも、俺とアマンダが不倫しているとか報道してたのは何処だっけ?『週刊冒険者スキャンダル』だっけ?
そこの記者は来てるのか?』
俺の言葉を聞き、ゴシップ系の記者連中は完全に沈黙した。
ザマァである。
『さて、スキャンダルを食い物にしてる記者達は確実な証拠を提示してから質問してくれ。
で、他に質問は?』
記者達に次の質問を促すと、手を上げたのは10人程になった。
次に進行役に指名された女の記者にマイクが渡された。
『月刊冒険者のチコと申します。
先程おっしゃっていたヨシュアさんとアマンダさんの目標とは何でしょうか?』
おお、まともな質問が来た。
『先ず、俺とアマンダ、ラフィ、シンシア、エレナ全員に共通しているのは、人々の暮らしを魔物の脅威から守りたいと言う志だ。
そして、アマンダと出会った時から共通している目標は、SSランクに昇格して、災害指定特区に行く事なんだ。
ご存知のように、災害指定特区から溢れた魔物に壊滅させられた村や町は少なくない。
俺達はその凶悪な魔物から人々の暮らしを守りたいとずっと思って来た。
もちろん、ラフィ達も目標は同じだ』
このやり取りを皮切りに比較的まともな質問が増えて、無事記者会見は終了したのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ヨシュア、色々と迷惑かけて本当にゴメン」
パーティーハウスに戻ってすぐ、アマンダが深々と頭を下げて来た。
「バーカ。全然迷惑じゃねえよ。これからもSSに向けて頑張ろうな」
「うん、そだね!
アタシ死ぬ気で頑張るから」
アマンダに笑顔が戻った。この数日は相当気に病んでたからな。
「フフフフ…それにしてもラフィさんは満足させて貰って無いんだねぇ…」
「ヨシュア様はDTだったから仕方ないの〜」
クソ!シンシアとエレナがあの事をネタにしやがる!
「あら残念ですわね。私は毎晩旦那様に満足させて頂いてますわ!
今晩もたっぷり愛して頂きますわ!」
何だかラフィが堂々とエロネタに応じるようになったな……これからどんどんオープンになって行くんだろう。
何だか怖いぞ。




