65話 ギスギスした歓迎会
「新婚旅行に行ったヨシュア様が、愛人を連れて来たの〜!
最低のゲス野郎なの〜!」
『豊穣の翠』に加入した事で俺のスキル対象になったアマンダは、急激にステータスが上がったらしい。以前よりも強くなっていると驚いていた。
当然同じパーティーハウスで暮らす事になるので、アマンダを連れて帰ったらこの騒ぎだ…
その後、ラフィからエレナとシンシアに事の経緯を説明して、何とか落ち着いたのだけれど…
「本当に改心したのか疑わしいよね。
力が戻ったら、またヨシュア様に酷いことするんじゃ無いの?」
「絶対ヨシュア様をいぢめると思うの〜」
シンシアもエレナも、アマンダに疑いの目を向けている。
「アタシがヨシュアにやった事は、決して許されないと思ってる。
みんなから信頼されてないのも分かってる。
でも、アタシみたいなクズにやり直すチャンスをくれた、ヨシュアとラフィに恩返しがしたいの!」
そう言ってアマンダは2人に深く頭を下げた。
あのプライドだけは異様に高かったアマンダが…
「ま、まぁそこまで言うなら、まぁ様子見くらい構わないけど」
「少しでもヨシュア様をいぢめたら、『名刀丸』の錆にするの」
何とか2人とも納得してくれたようで一安心だ。
「おし、じゃあ今夜はアマンダの歓迎パーティーをやりますか!
ワイバーン肉がまだ残ってるしな!」
「わーい!焼き肉パーティーなの〜!」
「私はハツを所望しますわ!」
「カッルッビ!カッルッビ!」
「そ、そんな、アタシなんか歓迎してもらう資格なんてないよ…」
なんかアマンダの変わりようが凄えな。
調子が狂うんだが…
「コレが『豊穣の翠』なんだから、水を差すようなこと言うな」
「う、うん…みんな…ありがとう」
さて、では早速調理に取り掛かるか。
「あなた、お手伝いしますわ」
エプロン姿のラフィも台所に来た。
やべえな、この破壊力。
「ラフィの裸エプロンなんて最高だろうなぁ…」
「きゃっ、へ、変態ですわ!」
しまった!心の声が漏れ出てしまった。
「ンンッ、いや、違うぞ!
さて、今日は趣向を凝らした逸品を作ろうと思う」
「焼き肉では無いんですか?」
「うん。取り敢えずラフィはサラダを作ってくれないか?
俺はちょっとモツの下拵えをする」
俺は早速異空間収納から、心臓、胃袋、腸などの内臓系を取り出し、ぶつ切りにして行く。
それらを塩胡椒し、一旦赤ワインで軽く茹でる。
軽くゆがく程度にして、直ぐにモツを皿に上げておく。
茹でる用の赤ワインは捨て、今度は寸胴にオリーブオイルを引いて、一口大に切ったじゃが芋、人参、スライスした玉ねぎを入れて軽く炒める。
次いでモツを投入。
モツに軽く焼き色がついた所で、牛の骨や香菜類を煮込んで作ったブロードという出汁と赤ワインを半々くらいの分量で入れる。
そこに、16種類のスパイスを粉末にして投入。
後はフタをしてコトコト煮込む訳だ。
時折アクを救いつつ、もう一品に取り掛かる。
ワイバーンの腿肉の塊に3本の金串を差し込み、七輪を片手に庭先に向かった。
暇そうにしていたエレナに火起こしをさせ、腿肉をじっくりと炙っていく。
この腿肉は鮮度を保ったまま異空間収納したので、生でも食べられるモノだ。
焼きあがったらそそくさと台所に戻り、モモ肉をスライス。
生タマネギとニンニクのスライスを添えて、東国で流行っているポン酢という調味料をふりかける。
ワイバーンのタタキの完成だ。
ラフィはサラダしか作らせて貰えてないと拗ねていたが、特製モツ煮込みを味見させたらあっという間にご機嫌になった。
チョロいな。
さて、食卓には特製モツ煮込み、ワイバーンのタタキ、サラダ、黒パンが並んだ。
ちょっとしたご馳走にエレナは涎を垂らしておる。
みんなのグラスにビールを注いだ所で俺が音頭を取った。
「では、『豊穣の翠』にアマンダが加入した事を祝して、カンパ〜イ!」
カンパイもそこそこに、早速エレナがモツ煮にガッついた。
「超ンマンマなの〜!」
序盤から凄い勢いだな。
まぁ、気に入って貰えて何よりだな。
「ヨシュアの手料理って久しぶり」
アマンダが昔を懐かしむように呟いた。
「あぁ、『宵闇の戦乙女』に入った時は良く作ったよな。
お前の料理は激マズだったなぁ」
「うるさいわね!仕方ないじゃん、アタシ料理した事無かったんだし」
「ようやく調子が戻ったみたいだな。
お前は憎まれ口を叩いてるくらいが丁度いいよ」
「フン…」
からかわれて不貞腐れたのかな?
アマンダは、黙ってモツ煮込みを口に運びだした。
「お、美味しい…ヨシュアの料理…」
きゅ、急に泣き出したぞ…情緒不安定なヤツだな。
ともあれ、美味しいと思ってくれたのなら作った甲斐もあったってもんさ。
食後、女性陣は食べ過ぎて動けない様子だったので、俺は1人寂しく洗い物に勤しんでいる。
「アタシも手伝うわ」
ポッコリお腹を膨らませたアマンダが、台所にやって来た。
「今日の主役なんだから、みんなとゆっくりしてて良いんだぞ」
「そういう訳には行かないわよ。
何でもアンタに押し付ける事は、もう二度としたくないし」
何だか調子狂うなぁ。ホントにコイツはアマンダか?
「そういやぁ、他のヤツらは冒険者辞めたのか?」
「知らないわ。
アタシが再起不能だって診断された後、勝手にサーシャがパーティー解散の手続き済ませたみたい。
ソニアが事後報告だけしに来た感じ。
でも、ソニアには気をつけた方が良いわ」
アマンダの表情が急に硬くなった。
何であの2人に気をつけなきゃならないんだ?
「アンタが抜けてからも、アタシは災害指定特区に行くためにSSランクを目指してた。
落ちぶれても根っこの所にはそれがあったわ」
そうなんだな…
アマンダは出会った頃、災害級のモンスターが跋扈する災害指定特区への立ち入りが許される、SSランクパーティーになる事を目指していた。
災害級モンスターからの被害を少しでも減らす為に、ガムシャラに突っ走っていた。
ずっと変わらず高い志をアマンダが持ち続けている事がとても嬉しい。
「でも、あの2人は違う。
『宵闇の戦乙女』がSランクになってからは、地位や名誉、金への欲が凄まじかった。
アタシはアンタに振り向いて貰えないイライラから色んな男とやってたけど、アイツらは勇者パーティーである事に幅を利かせて、節操なしに色んな男を隷従させて悦に浸ってたの」
「何だ、お前俺に抱かれたかったのか?
でも、俺はラフィ一筋だから無理だぞ」
「変な所に食いつかないで!
もうとっくに諦めてるわよ!
それじゃ無かったら追放なんてしてないわ」
「まぁ、アイツらの浅ましさはよく分かったけど、それで何で俺が気をつけなきゃならん?
アイツらも俺に抱かれたいのか?
でも、俺はラフィ以外の女に一ミリも興味ないから…」
「もう惚気は良いから!
アイツらがあんな可愛いラフィに叶うわけないじゃない!」
「そんなに褒められると照れますわ♩」
急に背後から声が聞こえて、俺たちはめっちゃビクっとした。
振り返ると、満面の笑顔のラフィが立っている。
え、いつからそこに居るの?
「ヨシュアさんにそんなに想って頂けて幸せですわ♫」
めっちゃ上機嫌で抱きつかれた。
オ、オッパイが…うん、極楽、極楽。
「どーでも良いけどイチャつくなら自分達の部屋でして欲しいわ。
てか、話逸れ過ぎてるし」
「あ、悪い。で、ヤツらに気をつける理由は?」
「『宵闇の戦乙女』がダメになったのはアンタのせいだって、逆恨みしていた節があるんだよね」
何?俺がヤツらを恨みこそすれ、何で逆ギレみたいに逆恨みされなきゃならんのだ。
「サーシャは聖女って事で、聖ミハイロ教会から金銭面でかなりバックアップを受けてたんだけど、3回連続でクエスト失敗したあたりから、金が無いって喚き散らしてた。
で、これもアンタのせいだって。
ソニアも似たような感じで、引退後に魔導協会の名誉役員に内定していたのが取り消しになったって。
ソニアと最後に会った時も、ヨシュアがどうとかブツブツ言ってたし、アタシがアンタを庇ったら殺そうとして来た。
あの狂人染みたソニアの様子から、アンタへの復讐心は相当強いと思う。
もっと早く伝えたかったんだけど、何か色々起き過ぎて伝えそびれてた。ゴメン」
「いや、謝る事無いだろ。
教えてくれてありがとな。気をつけておくよ」
「まぁ、アイツらの力で、今のアンタをどうこう出来るとは思わないけどね。
それじゃ、洗い物も終わったし、先に休ませてもらうわ」
アマンダはそう言うと、台所を後にした。
いくらステータスが爆上がりしたとは言え、不意を突かれて不覚を取る事だって考えられる。
アマンダからの忠告はとてもありがたい。
念のため、ラフィが精霊術の防護結界をパーティーハウスに施し、俺も条件指定の特殊結界を建物全体に重ねがけした。
さて、新婚休暇も今日で終わりだ。
明日から2日間、連携の訓練を頑張らないとな。
◆◇◆◇◆
翌朝、大広間の食卓テーブルに行くと、げんなりした様子のアマンダがいた。
「あ、ヨシュア、ラフィ、おはよ。
ふああ〜、昨晩はやたらとムラムラして寝不足だわぁ…」
イッケネ!『フェロモンイーター』の効果が駄々漏れなのを忘れてた!




