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62話 お前は勇者だろ!!!

 


「は!?解散!?アマンダが再起不能!?」



 ギルドの受付嬢から信じられない事を聞いた俺は、思わず声高に叫んでしまった。


 新婚デートを堪能した翌日、アマンダから失敬したTバックを返すため、ラフィと共に『宵闇の戦乙女』のパーティーハウスに向かったのだが、パーティーハウスは半壊していた。

 まるで、ドラゴンの襲撃でも受けたような有様だった。

 只事では無いと思い、急いでギルドに向かって『宵闇の戦乙女』の事を受付嬢に確認した所、予想外の返答に思わず声を上げてしまった次第である。


 更に詳しく語られた内容は、どれも耳を疑うような内容だった。

 俺が抜けた後の『宵闇の戦乙女』は、相次いでクエストに失敗していたらしい。

 Aランクへの降格を恐れた彼女らは、汚名を挽回しようと1カ月程前に、例のイレギュラーダンジョンの調査を受けたようだ。

 その時にアマンダは腰、右腕、左脚の複雑骨折と、脊髄損傷という大怪我を負ったらしい。

 何とか命からがら引き返したものの、聖女サーシャの治癒魔法が上手く発動せず。

 不完全な治癒魔法をかけた事で、完全治癒が絶望的になったとの事。


 俺はあまりのショックで、上手く感情が整理できないまま、受付嬢が教えてくれたアマンダが入院している治癒院へと向かった。

 病室で目の当たりにしたアマンダは余りに痛々しく…

 俺は変わり果てた姿のアマンダに、どう言葉をかければ良いか分からない。



「ヨシュア…」



 俺に気付いたアマンダが弱々しく俺の名を口にした。



「あ、あの…え〜と、だな…ゴ、ゴメ…」


「ゴメンなさい!!!」



 俺がお詫びの言葉が、まさかのアマンダからの謝罪でかき消されてしまった。

 そして、アマンダはボロボロと大粒の涙を零した。



「えぐっ、えぐっ…アタシ、ヨシュアに本当に酷いことを…ぅぅぅ…本当にゴメンなさい…」



 まさかコイツがこんな弱々しくなるなんて…いつも傲慢な態度で俺を罵倒していたアマンダが…

 取り敢えず俺たちはアマンダの気持ちが落ち着くのを待った。



「気付いたんだ…

 アタシらがSランクにまで上がれたのは、全部ヨシュアのおかげだったって…

 連携も取れないアタシらが、苦もなくSランクモンスターを討伐出来ていたのも、アンタがサポートしてくれたおかげだって…

 今更遅いんだけどね。

 あんなに酷いことをして、追放までしたんだから許される訳無いよね。

 でも、ずっとヨシュアに謝りたくて」



 アマンダの言葉を聞いた今、俺はどうすれば良い?

 正直コイツには酷くムカついていた。クソビッチだという気持ちは今も変わらない。

 でも、こんな風になれば良いなんて思った事は、断じて一度も無かった。

 もう剣が握れないどころか、コイツがあんなに大好きだったセックスも二度と出来ないなんてあんまりじゃないか。

 未だに俺は弱り切ったアマンダに、何て言って良いか分からない。



「これでもう、思い残す事は無いや…

 ヨシュア、最後のお願い…

 …アタシを……アタシを殺してくれないかな?

 こんな体になっちゃって、アンタに話した夢も目標も…アタシにはもう何も無いの…

 お願い…こんな体じゃあ、自殺も出来ないの…」



 アマンダは信じられない事を言うと、また涙を流した。

 何て顔で俺を見て来るんだ。コイツは…マジで、何考えてるんだよ!



「ふざけんなよ!

 何だよ!好き勝手に言って、全てを諦めたみてえなツラしやがって!!

 お前は勇者だろ!!!

 世界中の人達を災害級魔物の脅威から守りたいんじゃなかったのかよ!!!

 んな所で呑気に寝たきりになったまま、死んで楽になろうなんて許される訳ねえだろ!!!

 聖剣でみんなを守るために戦えよ、このクソビッチが!!!

 何悲劇のヒロイン気取ってんだよ!!!

 俺が同志だと思ってたヤツは、そんな情けねえヤツだったのかよ!!!

 お前らと一緒にやってた俺の5年間を無駄にすんじゃねえよ!!!」



 感情の昂りのまま怒鳴り散らした俺の両頬には、幾つもの涙が伝っていた。



「…ヨシュア…」


「ラフィ、申し訳ないけど、コイツに『精霊王の癒し』をかけてあげてくれないか?」


「もちろんですわ」



 俺の問い掛けに、ラフィが優しい笑顔で頷いくれた。

 そのままアマンダが横たわるベッドに行き、長い詠唱に入る。

 いくらクラスアップしたとは言え、伝説級の治癒精霊術である『精霊王の癒し』は簡単には使えない。

 膨大な魔力と高い集中力が必要だ。

 ラフィは額に汗を浮かべながら、精霊王の御力を顕現するために、慎重に魔力を練り上げる。



 程なくして柔らかく温かな光が、アマンダの全身を包み込んだ…



 ◆◇◆◇◆



「うそっ、手が…足が…ぁぁぁぁ…動く!アタシの手が!

 足が!ぁぁぁぁあ!」



 ラフィの精霊術が成功して、アマンダは歓喜の涙を流している。



「ラフレシアさん、本当にありがとう!!!

 本当に…本当にありがとうございます!!!」


「まぁ、それなりの見返りを請求しますが…」


「あ、アタシ今お金が…

 で、でも、カラダ売ってでもお金作るから!」


「ハァ、アナタは私の主人が言った事を聞いてなかったんですか?

 主人は『聖剣でみんなを守るために戦えよ、このクソビッチが』と言ったのですわ」



 いきなり金を作る為に体を売ると言ったアマンダもアマンダだが…ラフィさん、そこまで俺の言葉を忠実に再現する事ないだろう。



「で、でも…アタシ、もう力が落ちてしまって、昔みたいに戦えないんだ…もう仲間もいなくなっちゃったし…本当にゴメンなさい…」


「人の話を最後まで聞きなさい。

 ですから、アナタを私のパーティーでこき使って差し上げますわ」


「え…で、でも…アタシみたいな最低な女は…ヨシュアと一緒に居る資格なんて無いよ…」



 アマンダがまたメソメソ泣き出しやがった。



「あぁ、メンドくせえヤツだな!

 ウチのリーダーのラフィ様が入れって言って下さったんだから、有り難くウチに入れよ!

 くよくよしてねえで、ラフィ様の下で馬車馬のように働け!

 聖剣で、災害級からみんなを守れ!お前は勇者だろうが!!」



 俺の言葉を聞いたアマンダは泣き崩れて、何度も「ありがとう」を繰り返した。



 さっさと退院の手続きを済ませた俺たちは、アマンダ加入の手続きをする為にギルドに向けて歩いている。

 アマンダは憑き物の取れたような、余計な物を吹っ切ったような顔付きになっている。

 コイツのこんな顔を見るのは3年ぶりくらいだな。

 俺が『宵闇の戦乙女』に入って2年目くらいまでは、今のように真っ直ぐな目で一緒に戦うコイツがいた。



「そういえば、ヨシュアは何の用事でアタシの所に来たの?」



 あ…



「ゴメン!追放された時に腹いせで、お前のパンツをパクったんだ!

 ホントゴメン!」



 俺はポケットからアマンダのTバックを取り出して、めっちゃ頭を下げた。



「…………サイテー」



 アマンダのジト目とストレートな言葉が、俺の心を見事に抉るのでした。



 どんな理由が有ったとしても、やっぱりパンティをパクるのはいけないよね。

 ハイ、深く反省致します…。



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